健康

80才で20本歯を残すために!一生つきあえる歯科医の選び方

 80才で歯を20本残して重篤な病気を防ぐために重要なのは、歯のケア法と一生つきあえる歯科医選びだった!

 いつまでも自分の歯で物を噛んで食べるために、長い人生をサポートしてくれる、信頼できる歯科医の選び方とは?

→関連記事:長生きするには「口腔内ケア」を!怖い病気を招く歯周病のこと

 日本の医療制度では、治療行為にのみ保険が適応されるため、虫歯ができて初めて病院に通う人が多い。だが、富沢歯科医院(東京・港区)の院長・富澤直基さんは、こうした治療法に疑問を持ち、予防歯科を推奨する1人。

「一度虫歯になった歯は、ほとんどの場合が再治療となり、歯はどんどん削られ、ついには抜歯せざるを得ない場合も。できる限り歯を残して、いつまでも自分の歯で物を噛んで食べることは、健康を保ち、ひいては豊かな人生を送ることにつながります。

 本来は、歯が生えたら幼少期から定期的に歯科医院に通って口腔内を健康に保ち続けるのが望ましいのです」(富澤さん・以下同)

治療を機に口腔内をくまなく診断してもらう

 歯はトラブルが1つ見つかると、自分では気づかない別のトラブルを内包していることが多い。それが重篤な病気につながることもあるため、治療を機に、口腔内をくまなく診断してもらう必要がある。

 富澤さんの医院では、患者と一生つきあうべく、初回からカウンセリングや検診に時間をかける。

「応急処置が必要な場合を除き、いきなり治療を開始するのではなく、口の中の状態を調べてから、虫歯や歯周病のリスクを説明し、そのうえで予防や治療のプログラムを考えます」

 同医院ではレントゲンを撮るだけでなく、口腔内をあらゆる角度から調べたり、唾液検査で虫歯リスクをチェックするなどして、噛み合わせも含めた総合的な診断を行う。

 歯並びに問題がある場合、歯周病や虫歯の治療をしても、噛み合わせそのものを直さなければ再発してしまうことがある。そのため、安易に削ったり詰め物を掘り返したりせず、歯並びや噛み合わせを整えながら治療することが多い。

 都度の治療ではなく、根本的な治療を行う。それも長くつきあえる歯科医院ならではの診療法といえる。

定期的なクリーニングで安定した口腔内をキープ

 同歯科医院のほか、最近では3か月から半年に1度の検診や歯をクリーニングしてくれるところが増えた。このときは歯石を取るだけでなく、歯磨きやフロス、歯間ブラシがきちんとできているかもチェックし、その人に必要なケアを指導してくれる医院が望ましい。

「歯科医師同様、歯科衛生士も自分の担当が決まっている歯科医院がいいでしょう。毎回担当してもらえば、自分のセルフケアの弱点をしっかり管理してもらうことができます」

 また、治療前や治療中、治療後の記録をきちんと残しているかどうかも、見極めの重要はポイントになる。

「責任を持って治療を行うためにも、初回だけでなく、定期的に写真や動画で記録を残しています。歯科医自身が治療中の写真や動画を見返して、改めて気づくこともある。その意味でも、記録を残すことは、とても重要なことです」

 患者にこれらの記録や動画を見せながら説明することで、問題箇所が一目瞭然となり、納得して治療に向き合ってもらえるほか、口腔ケアへの意識も高まるという。

マイクロスコープで小さな病巣も見逃さない

 歯は削ったり抜いたりの治療をするほど、口腔内のバランスが崩れるリスクが高まる。

「本来は予防をすることで、治療を行わなくてもよい状態にしておくのがベストですが、どうしても治療が必要な場合は、できるだけ歯への負担を減らした方法での治療(低侵襲治療)を考えます」

 正確な低侵襲治療を行う上で欠かせないのが、マイクロスコープだ。

「マイクロスコープは肉眼の3~20倍の倍率で見ることができるので、肉眼での治療とは比べものにならないほど精度の高い治療が行えます。スコープに内蔵されたカメラで治療中の撮影もできるので、説明にも役立ちます」

 このほか、歯科用CTスキャンといった最新機器での診断もあるが、保険適用外の自費治療となるため、治療費は高額になる。だからこそ、治療費の見積もりをあらかじめ示してくれる歯科医院は、信頼に足る。使用した方がよりよい治療ができるとしても、医師と患者が互いに納得した上で行うことが大切だ。

セカンドピニオンを受け入れる柔軟な医師を

 歯科医院の数は全国のコンビニエンスストアよりも多いといわれる現在、歯科医によっては得手不得手がある。残念ながら最新機器を持っていても、患者優先の治療を行っていない歯科医も存在する。

「歯科の治療は、虫歯治療、歯周病治療、インプラント、矯正などさまざま。例えば矯正が必要な場合など、自分が得意でない治療なら、別の専門医を紹介してくれる歯科医は信頼できます」
 さらに、セカンドオピニオンを受け入れてくれる歯科医が望ましいと富澤さん。

「信頼できない歯科医に当たった場合は、歯科医を変えてもいいのです。歯科衛生士や患者であるあなた自身がどんなに頑張ってケアしても、歯科医師の治療のレベルが低ければ予防しきれません。質の高い予防は、質の高い治療があってこそ」

 どちらが欠けても私たちの口の健康を生涯守ることはできないのだ。

よい歯科医のチェックポイント

●治療に関する説明が丁寧かつ詳細であること

マイクロスコープの画像を見て患者に説明する歯科医

 治療のみに時間を割き、カウンセリングや治療前後の説明がない歯科医院は避けたい。治療方針などの説明が丁寧なのはもちろん、疑問や心配事があった場合、尋ねられる雰囲気のある医師を選んで。

●拡大鏡を使った精度の高い治療ができる

マイクロスコープを操る歯科医

 マイクロスコープを使った治療では、肉眼では難しい歯根治療も、感染源を残すことなくできる。健康な歯を削らずに虫歯のみを除去したり、詰め物やかぶせ物の隙間や段差をなくし、長持ちする治療が可能に。

●写真や動画で問題点を視覚的に認識できる

歯科用CTが部屋に設置されている

 近年開発された歯科用CTは、断層写真や3Dの画像を撮ることができる。撮影時間は約10秒で、被ばく量も医科の約10分の1。「3次元の高画質画像を見ることで、レントゲンでは判別できない痛みや症状の原因もわかることがあります」

よい歯科医選びここをチェック!

□初回のカウンセリングにしっかり時間をかける

□いきなり治療せず、予防に力を入れている

□治療の前後、治療中の記録を写真などで残している

□治療の前と後に説明をしてくれる

□患者に負担の少ない治療を考えてくれる

□拡大鏡やマイクロスコープなどを使って拡大したで治療を行っている

□自分が得意でないことは専門医を紹介してくれる

【データ】

富澤歯科医院医院長

住所:東京都白金台2-11-8 永昌高輪台ビル4階
電話:03-5447-5711

撮影/浅野剛

※女性セブン2018年11月15日号

●長生きするには「口腔内ケア」を!怖い病気を招く歯周病のこと

●日本人は世界一口が臭い!?目から鱗の口腔ケア新常識

●誤嚥性肺炎の原因は口腔機能の衰え!? 命を繋ぐ「口腔ケア」<第1回>

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