要介護認定の訪問調査 張り切ってスタスタ歩けた父と、本当の様子をこっそり伝える母【実家は老々介護中 VOL.5】
アラフィフ美容ライターが、がん・認知症・統合失調症を患う80才の父と、在宅介護をする母がふたり暮らしの実家を手伝っています。人の手を借りたがらない父母ですが、父はもう歩くのも不自由、お風呂も拒んでいる様子。使える介護サービスを増やすべく、要介護度の再認定(区分変更)をすることになりました。介護サービスを適切に使って無理なく身ぎれいにできれば、気分も明るくなるかな、と思っています。
要介護度、上がってほしくないけど上がると助かる
「シャンプーなどお手伝いしますよと言ったら、『まだいいです』ってお母さまから断られちゃいました。受け入れていただくのはこれからですね」
訪問看護師さんが私の携帯に、こんな報告電話をくださいました。このとき父は要支援2でしたが、シャンプーだけでなく歩くのにも介助が必要。実情と合わせた方がいい、ということで、要介護度の見直しをする区分変更を申請していたときのことです。訪問調査では父の身体機能や認知機能などをチェックされるのですが、ブレなく適切に判定してほしい。地域包括支援センターのかたにコツがあるのか聞くと、
「娘さまも立ち会った方がいいですよ。ご本人が頑張って、普段できないこともできちゃうことはよくあるので。調査後、本人のいないところで家族からいつもの様子を伝えたい、と認定調査員には言ってありまして、お母さまにもお願いしてあります。その間、娘さまはお父さまの話し相手をして待っていてください」
なるほど。しかし私もスケジュールがキツイです。入っていた会議をリモートにしてもらい、私の発表は代理の人を立て、スマホにイヤホンを挿してラジオのように会議を聞きながら実家へ向かいました。
要支援2からどのぐらい上がるのか? 上がれば使える介護サービスが増えますが、複雑な気持ちです。そもそも父の衰えが進んでいるのに、要介護度が10年間変わらなかったのも不可解。以前、地域包括支援センターのかたから、「介護保険の対象者がすごく増えているので、厳しめの認定となるかもしれません」と言われたのを思い出しました。財政が厳しい、そして父と母が頑張って元気そうに見せていた、ということのようです。
さて訪問調査の日。認定調査員さんと地域包括支援センターのかたが実家に来てくれました。認定調査員さんがちょこちょこメモを取りながら、父に質問していきます。
「お名前、生年月日は? 今何才ですか? 今日は何月何日? 今の季節は? 紙・ボールペン・腕時計、この3つを覚えてください。少し経ったら3つがなんだったか聞きますよ」などなど。
父は名前と生年月日は言えて、紙・ボールペン・腕時計も答えられましたが、年齢は「68才?」と実際より10才くらい若く当てずっぽうに。日付はわからず、季節は「春?」「秋?」と雰囲気で当てようとしていました。こんな様子ですが、普段よりクリアです。いつもの感じを見せるのが目的なのに、頑張っちゃうんですね。
質問の後は体の機能をチェック。椅子にかけたまま足の曲げ伸ばしをしたり、歩いて見せたり。父も意地があるのでしょう、小刻みなすり足ながらも、なんと、人の手を借りずに歩けちゃいました!
調査は40分くらいで終わり、母がお見送りと称して出て行くと、ここからは私の出番です。母が話し込んでいるのを怪しまれないよう、気を逸らすために父と世間話を。
「もうさ、肌が乾燥して、すぐかゆくなるよね〜」と話を振ると、「ああ、頭がかゆいね」と父が言うので、頭皮を見せてもらいました。頻繁には洗えないのでしょう、フケが残っています。体幹がグラグラしている父を、母が体を支えて片手で洗ってあげてるのかも。
「ああ、頭、きれいで大丈夫だよ。かゆくないように、何か考えてみるね」
気を遣ってるとバレてるのでしょうか? 父はふんふん、とだけ言ってテレビを見始めました。
母が部屋に戻ってきたところで、私はドライシャンプーを買いにドラッグストアへ。水を使わず、ちょっと頭皮がスッキリするので、これなら私にもシャンプーを手伝わせてくれるかも。気分転換に使ってね、と実家に置いてきました。新しい要介護度が出るのに1か月くらいかかるのですが、とにかく父母がラクに過ごせますように!
文/タレイカ
都心で夫、子どもと暮らすアラフィフ美容ライター。がん、認知症、統合失調症を患う父(80才)を母が老々在宅介護中のため、実家にたびたび手伝いに帰っている。
イラスト/富圭愛