自宅を終の棲家にするメリット・デメリット|部屋別リフォームのポイントを専門家が指南
最期まで慣れ親しんだわが家で暮らすことこそ、多くの人の希望だ。しかし、そこにはデメリットもある。持ち家に住み続けたい場合、何をするべきか、リフォームや立て替えのポイントについて、専門家に教えてもらった。
持ち家暮らしの「メリット」「デメリット」
内閣府による2012年度の『高齢者の健康に関する意識調査』によると、最期を迎えたい場所として、「自宅」と答えた人が約55%と最多だった。高齢者施設で施設長を経験した介護福祉士で一級建築士の田中聡さんは、自宅を終の棲家にするメリットをこう話す。
■メリット
「住み慣れた自宅での暮らしは、施設に比べて自由度が高く、自分らしい生活を送れます。気心の知れた知人が周りにいる安心感も大きい。高齢者にとって環境の変化は精神的なダメージをもたらしやすいので、環境を変えることに抵抗がある人にはおすすめです」(田中さん・以下同)
■デメリット
一方、デメリットもある。それは、家族に介護で負担をかけてしまい、場合によっては、家族関係に変化を生じさせてしまうことだ。
「防犯面や利便性に問題が生じることも。たとえば、『駅前のマンションの方が医療機関や買い物に行くのに便利』『いま住んでいる場所は災害危険区域だから』などの場合は、住み替えを視野に入れてもいいかもしれません」
リフォームするタイミングは?
持ち家に住み続けると決めたなら、リフォームや建て替えが必要となる。
「タイミングとしては、耐震性、断熱性、バリアフリーの観点から、改修の必要が生じたとき。耐震性に問題があれば建て替えや耐震補強工事を、断熱性やバリアフリー化を進めたいならリフォームするといいでしょう」
中でも誰もが必要となるのが、バリアフリー化。高齢者が転倒すると骨折して寝たきりになるケースも多いため、「転倒防止」の視点で家を改造していくことになる。
「バリアフリー化の際、介護保険を使うと費用が1~3割負担で済みます。要介護認定を受けてからケアマネジャーに相談して進めることになりますが、地域包括支援センターや役所の高齢福祉課から住宅改修事業者を紹介してもらい、バリアフリー化すべき場所と工事費の見積もりを受ける(無料)といいでしょう」
リフォームの流れ
【1】戸建て住まいの人は、居住空間を1階にまとめる。
2階に寝室があると1階のトイレに行き来する際、階段で転倒するリスクなどがあるからだ。1階に客間や洋室があれば、トイレに近い方を寝室にする。
【2】転倒防止対策をする。
高齢者は、ドアの下枠にある2cm未満の段差でも転倒しやすい。段差をなくす補助具を設置するか、手すりをつけて対応を。
予算はどのくらいかかる?
「介護目的のリフォームは、介護保険の適用で総額30万~50万円程度で済むケースが多いです。35坪程度の戸建てで、1階の和室を寝室にしており、LDK、寝室、洗面所、浴室、トイレのすべてに手すりをつけた場合、工事費は1 割負担で1.5万~2万円。水回りの改修は介護保険の適用が少なく50万~100万円が目安です。フルリフォームを考えるなら“減築”という方法も。敷地の一部を売り、その利益でリフォームするのです」
耐震補強工事や断熱性を高める改修、バリアフリー化なども、自治体によっては補助金が出るので活用したい。
リフォームの前に介護保険でレンタルできる福祉用具の確認を
リフォームを検討しているならまずは、介護保険サービスが活用できるか、ケアマネジャーに相談を。必要性が認められれば各種福祉用具のレンタルが可能になり、リフォーム費用を抑えられる。
・手すり
・スロープ
・歩行器
・歩行補助つえ
・※車いす
・※車いす付属品(クッション、電動補助装置など)
・※特殊寝台(介護用ベッド)
・※特殊寝台付属品(マットレス、サイドレールなど)
・※床ずれ防止用具
・※体位変換器
・※認知症老人徘徊感知機器
・※移動用リフト(吊り具の部分を除く)
・※自動排泄処理装置
<注意>
福祉用具は個人で購入すると高額なものが多いので、まずはレンタルできるものとできないものを明らかにしよう。「※」印が付いた福祉用具は、要支援1・2と要介護1の場合、原則としてレンタルできないので、要介護認定の度合いが上がるたびに増やしていくのも手だ。