自宅を終の棲家にするメリット・デメリット|部屋別リフォームのポイントを専門家が指南
実際に「自宅暮らし」を選んだ2人の女性をご紹介する。本当にマイホームがいいのか。考える材料にして欲しい。
【1】大切なのは話し相手を得ることかも…
都内の持ち家(戸建て)でひとり暮らしをする敏子さん(仮名・84才)。
夫とは40年前に離婚し、子供はいない。60才まで会社勤めをしていたので、年金は月約14万円を受給。貯金は退職金と合わせて2000万円ほどあるという。
「気楽な独り身なので、少し前までは旅行に行ったり、観劇や映画鑑賞にも行っていたの。でもコロナ禍で外出ができなくなって体力が落ちたのか、重いものが持てなくなって、ゴミ出しや買い物にも困るようになってしまって」
敏子さんはそう言って肩を落とした。
「私は老人扱いされるのが嫌いでね、自治体の援助も受けていなかったのだけれど、隣の家に住むお友達(51才)のすすめで去年、要介護認定の申請をしてみたの。体はまだ動くから認定を受けられるわけがないと思っていたのだけれど、結果は要支援2。ショックだったけれど、ヘルパーさん(53才・女性)が週に何回か来てくれることになって、実際は助かっています」
リビングの清掃、買い物、布団干し、歩行練習の同伴や入浴の介助は、ヘルパーさんが助けてくれるようになった。
「少し手を貸してもらえるだけで、こんなに毎日が楽になるんだと思いましたね。何より、ヘルパーさんは話を聞いてくれる。外出自粛期間中は誰とも話せなかったから、それがうれしかったです」
行政の助けを借りつつ、できるだけ長く自宅で過ごすつもりだという敏子さん。体が動くうちは人と話す機会を作る方が優先だと、このコロナ禍のひとり暮らしで実感したと笑う。
【2】新築マンションに住み替えたものの予定外の出費が…
75才のときに夫と死別した葉子さん(仮名・77才)は、都心のマンションにひとりで暮らす。近くには病院や公園、学校もあり、人気が高いエリアだ。
「それまでは築35年の戸建てに住んでいて、夫の定年退職を機に、夫婦ふたりの“終の棲家”としてこの新築マンションを買ったのですが…。立地がいいせいか、周辺の不動産価格が高騰し、固定資産税(年間15万円)も上がり続けています。加えて、管理費と修繕積立金が月4万円。負担が大きいんです」
持ち家なら死ぬまで家賃を払わずに住めると思っていたが、大きな誤算だったという。
「夫の退職金はマンション購入に使い果たし、貯金はいま300万円、年金受給額は8万円ほど。食費や生活費が値上がりするいま、本当に心もとない…」
現在は、一人息子に管理費と修繕積立金の月4万円を払ってもらっているという。
「私は体が元気なので介護までしてもらうほどではありませんが、お金を出してもらっているので、お嫁さんからは、“私、パートを増やしたんですよ”とか嫌みを言われます。家賃の安いアパートに引っ越そうかと思いましたが、住み慣れた環境を離れるのもつらくて…」
人生100年時代。高齢で持ち家を住み替える場合でも、その後数十年は生活が続く。その生活設計もしっかり見据える必要があるようだ。
教えてくれた人
田中聡さん/介護福祉士・一級建築士
取材・文/桜田容子、前川亜紀
※女性セブン2022年10月20日号
https://josei7.com/
●住宅リフォームのいい業者・悪い業者を見分ける方法「見積がやけに安いのは避けて」