猫が母になつきません 第322話「きゃっかんしする」
夢と現実がごっちゃになってしまうのでしょう。母は真夜中によく私の部屋にきて妄想の話をします。多いのは自分のことがインターネットに載っているという話。なにせ、ハイパーですから…。この夜もタブレットを手にやってきて、自分の経歴が全部インターネットに載せられているから見ろと言ってききません。寝ぼけまなこでタブレットを受け取って見るとウィキペディアのトップページでした。「載ってないよ」と言っても耳を貸さず、名前をいれてみろとか、電源を繋いだ方がいいだとか、いろんなことを言いながら右往左往する母をスマホで撮影して翌日のお昼に母に見せました。最初は母ではなく妹と弟に見せようと思って撮ったのですが、母が「私もそろそろぼけてきたかもしれないわね」などと呑気な発言をするのでついつい見せてしまいました。見終わった母はひとこと「妄想がひどい」。あまりに真っ当な感想にこちらも拍子抜け。しかし、客観視できたからといって妄想がやむわけでもなく…暗闇でタブレットの光に照らし出される母の顔がとても恐いです(震)。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。