究極の長寿食は「地域食」|寿命研究第一人者が注目するのは「地中海食」と「沖縄食」
健康にいい、長寿食など巷にはたくさんの情報があるが、結局のところ、私たちは何を食べればいいのか。“寿命研究第一人者”南カリフォルニア大学教授、ヴァルター・D・ロンゴさんは「地域食」だと話します。ロンゴさんが注目する2つの「地域食」を見てみよう。
健康には低脂肪食がいいのか?
さまざまな疾患を招く生活習慣病である肥満を解消する手段として長い間、医学界は低脂肪食を推奨してきた。しかし、肥満でのリスクが高い7447人の参加者を、エクストラバージンオリーブオイルやミックスナッツを補充した地中海食の群と、食事の脂肪を減らすように指示した低脂肪食の群に分けて調査したところ、地中海食の群は低脂肪食の群よりも主要心血管疾患のリスクが約30%低下した。
長寿食としての効果が証明された地中海食は、南イタリアをはじめとする地中海沿岸地域で受け継がれてきた伝統食だ。穀物や野菜、豆やオリーブオイルを多く摂取し、肉よりも魚を好む。
→長寿研究第一人者が明かす「最強の長寿食」|老化のスピードを遅らせるのは「豆類」「全粒穀物」「ナッツ」
平均寿命が長い南イタリア・サルデーニャ島の食事
なかでも平均寿命が長い地域としてロンゴ研究が名指しした南イタリアのサルデーニャ島について、辨野腸内フローラ研究所理事長の辨野義己さんが説明する。
「サルデーニャ島はイタリアですが、本土とは少し雰囲気が違い、風光明媚で老人が多い。小太りな人が多数派で、あまりやせていません。それでもみんなワインを飲んで、トマトやオリーブオイルを中心とした食生活を楽しんでいます。ヤギのチーズも有名で、地元の人たちは良好な腸内環境を持っている人が多い。医療の手が入らず、自然に生まれた長寿と考えられています」
実はロンゴさんもイタリア南部の街・モローキオ出身だ。
「幼い頃はいんげん豆にオリーブオイルをかけたパスタをよく食べ、モロヘイヤが旬になると週に5回は食べていました。いつも『またか』と文句を言っていましたが、いま思えば理想的な長寿食です」(ロンゴさん)
沖縄の伝統食は長寿研究第一人者も注目
ロンゴ研究は地域が生んだ長寿食として、もうひとつの地域に言及している。それが、沖縄の伝統的な食事だ。国際未病ケア医学研究センター長・一石英一郎さんは
「沖縄は、健康で長寿の人々が数多く居住する地域を指す『世界5大ブルーゾーン』の1つ。植物中心の食材で大豆や島野菜を多く食べ、老化を進めるとされる動物性食品は、伝統的な食事のうち、1%にとどまります。ゴーヤーチャンプルーや豆腐よう、にんじんを炒めたにんじんシリシリ、海ぶどうなど、沖縄には栄養が豊富な郷土メニューがたくさんあります」
松生クリニック院長・松生恒夫さんが続ける。
「1970年代の沖縄県民の大半は幼少期から3食ともにウムニーと呼ばれて親しまれてきたさつまいもを煮たいも煮を主食にしていました。食物繊維が豊富で低脂肪、低カロリーの質素な食事が沖縄食のベースにあります。過去にはアメリカの『タイム』誌が沖縄の生活習慣のよい点として白米や霜降り肉を食べる量が少なく、腹八分ですませることを伝えました」
サルデーニャ島も沖縄も、地元住民のコミュニケーションが活発で、楽しく生きがいを持って暮らしていることも健康長寿のポイントとされる。ただし、かつて平均寿命が男女とも日本トップだった沖縄は、食生活の米国化が進み、いまや長寿県ではなくなった。
教えてくれた人
ヴァルター・D・ロンゴさん/南カリフォルニア大学長寿研究所・教授、辨野義己さん/辨野腸内フローラ研究所理事長、一石英一郎さん/国際未病ケア医学研究センター長、松生恒夫さん/松生クリニック院長
※女性セブン2022年8月11日号
https://josei7.com/
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