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健康

京丹後市は100才超の人が全国平均の3倍以上!長寿の秘密「腸内環境」を医師が解説

 京都府京丹後市は、100才以上の高齢者が全国平均の3倍以上という長寿地域だという。なぜそんなに多くご長寿の方が多いのか、京都府立医科大学教授の内藤裕二さんが調査したところ「短鎖脂肪酸産生菌」にヒントがあることが分かった。内藤さんに詳しい話を伺った。

現代病のほとんどが「腸内環境」に関係している

「現代病のほとんどが、腸と関係している」

 と言うのは、京都府立医科大学教授の内藤裕二さん。

「肌荒れ、便秘、糖尿病などの生活習慣病、日本人の約1割が罹患しているといわれるアトピー性皮膚炎、そのほかにうつ病、認知症も腸内環境の関連性が指摘されています。腸と脳は密接な関係があり、腸管が腸内細菌と協調して、脳の神経系に影響を与えることが最近の研究でわかっています」(内藤さん・以下同)

 腸内細菌は約1000種類、100兆個以上が、腸内に生息している。

「さまざまな腸内細菌は腸内で集まり集団を作っています。腸内を顕微鏡で見ると、この腸内細菌の塊がお花畑のように見えることから、英語のflora(フローラ)をとって、腸内フローラと呼ばれるようになりました。この腸内フローラがよい状態にあることで、体の健康状態が保たれ、長寿につながっていくことが最新の研究でわかってきています」

専門家が注目する「短鎖脂肪酸産生菌」

 ビフィズス菌や乳酸菌など、腸内環境をよい状態に整える腸内細菌は多く存在するが、内藤さんが注目するのは短鎖脂肪酸産生菌(たんさしぼうさんさんせいきん)だ。

「短鎖脂肪酸は『酪酸』『酢酸』『プロピオン酸』などの総称です。これらを生み出す短鎖脂肪酸産生菌は、腸内フローラを健全に保つ上で重要な役割を果たしていることから、この短鎖脂肪酸産生菌が長寿に何らかの関係があると考えられています」

 内藤さんらの研究チームが、2017年から京都府京丹後市に住む高齢者の長寿の秘訣を探る疫学調査『京丹後長寿コホート研究』を行ったところ、100才以上の人たちの腸内には短鎖脂肪酸産生菌が多く見られたという。

京丹後市は100才を過ぎた高齢者の割合が全国平均の3倍以上という長寿の地域です。ここで5年以上にわたり疫学調査をしていますが、京丹後市の高齢者は筋力の低下が少なく、100才を過ぎても元気な人が多い。その根底には、腸内環境を整えるための生活習慣があると考えられます」

伝統食の中に長寿のヒミツがあった

 内藤さんが注目したのは京丹後市の伝統食。

「海が近い京丹後市は昔から魚や海藻を使った料理が多くあります。魚もしょうゆをたっぷり使うのではなく、干した魚をだしで煮て、塩分量を抑えていました」

 ほかにも食物繊維が豊富な大麦や玄米を食卓に取り入れているという。

「大麦、玄米、海藻類に多く含まれ、水に溶ける性質を持つ水溶性食物繊維は腸内の有用な細菌の栄養源となるので、腸内環境を整えるのに不可欠です。特に大麦は100gのうち水溶性食物繊維は6gと非常に豊富なので、白米と混ぜて食べるとたくさん補うことができます」

 腸内環境を整えるためにはヨーグルトをたくさん食べればいいと考えがちだが、種類や機能を考慮してこそ、その効果が発揮されるのだという。

「ヨーグルトは乳原料に乳酸菌や酵母を混ぜて発酵させたものですが、市販のヨーグルトは、それぞれ効果が違います。いまはお腹の調子を整える、内臓脂肪を減らすのを助ける、睡眠の質の向上、記憶力への作用などさまざまな機能性を持ったヨーグルトがあるので、自分に必要なものを見極めて選ぶといいでしょう」

「短鎖脂肪酸産生菌」を増やすには運動も大切!

 そのほか、運動不足が腸内フローラを乱す元凶となることもあるという。

「WHO(世界保健機関)の報告でも大腸がんのリスクは、『過体重・肥満』と『低い身体活動』であることが示されています。それに運動は、短鎖脂肪酸産生菌を増やす効果があることがわかっています」

 運動量の目安としては、汗をかく程度の運動を30分~1時間、週3回以上行うのが理想だという。

「先述の京丹後市の人たちは、ジムに通っているわけではないが、ふだんの生活からよく歩き、歩く速度も速い。おそらく、近所にスーパーやコンビニが少ないことから、買い物にも往復30分以上かけて歩いて出かけるなど、日常生活の中で自然と運動する習慣があります。それが腸内環境をよくしている要因とも考えられます」

腸内から若くなるための5か条

●白米に大麦をプラスする

●だしを活用し、塩分を減らす

●ヨーグルトは機能性で選ぶ

●めかぶやのりなど海藻類を食べる

●30分以上の運動を週3回以上取り入れる

教えてくれた人

内藤裕二さん/京都府立医科大学大学院医学研究科生体免疫栄養学講座教授。著書に『人生を変える賢い腸のつくり方』(ダイヤモンド社)がある。 

取材・文/廉屋友美乃

※女性セブン2022年7月28日号
https://josei7.com/

●料理家で栄養士が提案する納豆レシピ11選「腸内環境を整えるには発酵食品を毎日食べ続ける」

●20年の調査で判明!若く見える人と老けて見える人の差「生活習慣」に違い【医師解説】

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