健康な胃のための4つのメソッド「幸せホルモン・セロトニンを増やす生活」専門医が指南
猛暑の疲労やストレスから胃の不調を感じていないだろうか?ストレスや心配事があるとキリキリと胃が痛むが、これは胃と脳が影響し合っているからだと、消化器内科医清水公一さんは語る。脳内の幸せホルモン「セロトニン」を増やすことが胃の健康にもつながるという。その4つの方法を教えてもらった。
セロトニンを味方にして胃美人に!
昔から、ストレスや心配事があると胃が痛くなったり、下痢をすることがあるが、これは、脳と胃腸が自律神経などのネットワークを介して影響し合うために起こる症状だ。
「腸と脳が影響し合う『腸脳相関』はよく知られていますが、最近の研究では『胃脳相関』といって、胃と脳も互いに影響を及ぼし合っていることがわかってきました」(新板橋クリニック院長・清水公一さん・以下同)
胃と脳は自律神経によってつながり、胃に食べ物が入ると消化に働くよう脳から信号が送られる。これと同様に、胃もたれなどの不調があれば脳に信号が送られ、不安感が増すことがわかっている。逆を考えれば、脳がハッピーな状態ならば、胃にそれが伝わり、胃の不快感が解消されるというわけだ。
「このとき脳内で働くのが神経伝達物質のセロトニンです。セロトニンは幸せホルモンと呼ばれ、自律神経を調整して心のバランスを整えるよう作用しています。セロトニンを増やす生活を心掛ければ胃もハッピーになり、原因不明の不調なんて、吹き飛んでいくはずです」
一日の生活の中で、セロトニンを増やす方法は次の4つ。
1.朝日を浴びて、リズミカル運動をする
朝日を浴びると体内時計がリセットされ、一日の生活リズムが整うのと同時にセロトニンが分泌される。
「さらに、太陽の光を浴びながらリズミカル運動をすると、セロトニンが増えるという研究データが数多く発表されています。運動といっても、大きく手を振りながら散歩をするだけでも充分。ラジオ体操もおすすめです。セロトニンは夜になると睡眠物質のメラトニンに変わるため、睡眠の質もよくなります」
2.瞑想をしてリラックスし、胃腸を動かす
朝の瞑想も、一日をリラックスした状態でスタートし、胃腸を動かすのに効果的だ。
「あぐらをかいて座り、ゆっくりと深呼吸しながら行う瞑想は『静的瞑想』、ヨガや気功・太極拳などは『動的瞑想』といわれ、どちらにも心を落ち着かせ、セロトニンを活性化する効果があります」
難しく考えず、リラックスして座り、よいものを体に取り入れるイメージで鼻から息を吸い、体内の悪いものを外に出すイメージでゆっくり吐き出すだけでもOKだ。
「胃は副交感神経が優位なときに活発になるので、瞑想で優位にするのは◎。食後にもおすすめです」
3.胃を育てる食事のカギは、腸内環境&トリプトファン
最新の研究では、セロトニンの約9割は、必須アミノ酸のトリプトファンを原料に腸内で合成されることが明らかになっている。まずは腸内環境を整え、その材料となるトリプトファンが豊富なたんぱく質を摂るといい。
「【1】【2】を同時に摂れば、腸内環境を整える効果が高まります。手軽に食べるならバナナ×ヨーグルト、体を温めるみそ汁もおすすめです」
セロトニンを作り胃を育てる食事
【1】腸内環境を整える食材
・腸内細菌のエサとなり有用菌を増やすプレバイオティクス
→オリゴ糖(バナナ、はちみつ)、食物繊維(ごぼう、おくら、海藻類、きのこ類)など。
・乳酸菌やビフィズス菌などのプレバイオティクス
→ヨーグルト、乳酸菌飲料、納豆、豆腐などの発酵食品
【2】セロトニンの材料
・トリプトファン
→大豆製品(豆腐、納豆、みそ)、バナナ、乳製品など
・ビタミンB6
→鶏ささ身、にんにく、さんま、さば、まぐろなど
4.意識して笑顔を作る
笑顔を作ると脳からセロトニンや愛情ホルモンのオキシトシンが分泌される。
「笑顔を他人に向けると、その人も笑顔になり、それが再び自分に伝わり、セロトニンとオキシトシンがどんどん分泌されてきます。鏡に向かって自分の笑顔を見たり、マスクの下で口角を上げて笑顔を意識するだけでもOK。『笑顔の人に、胃の不調の人はいない』と言ってもいいと思っています」
胸やけや胃もたれしやすい揚げ物などの脂肪分の多い食事、刺激の強いもの、アルコール類は注意すべきだが、「笑顔で楽しく、ゆったりとした気持ちで食事をするなら、食べすぎなければ大丈夫。セロトニンが出ている状態なら、消化がどんどん進みますよ」
もちろん、30回以上噛むことも、忘れずに実行しよう。
教えてくれた人
新板橋クリニック院長・清水公一さん
消化器内科医。脳内物質と自律神経、腸・胃脳相関の視点から機能性消化管疾患(逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群)の治療に取り組んでいる。患者自らが脳内物質と自律神経をコントロールして症状を改善する専門治療を行っている。
取材・文/山下和恵 イラスト/うえだのぶ
※女性セブン2022年8月11日号
https://josei7.com/
●急増するコロナ胃痛「機能性ディスペプシアの増加率3倍に」症状や原因を専門医が解説