女性の老後、「ともだち近居」を成功させるために注意すべき心得8
令和になったいま、働き方、家族のかたち、老後のありようが多様化する中、年をとって女友達と暮らすことを選択する人が増えているという。「女友達との同居」を成功させるためには、事前の準備や試行錯誤が欠かせない。若者には真似できない大人ならではの工夫で、老後を楽しむことは必ずできるはず!
同居ではないが、「ともだち近居」という生活を送っていたと語る、元NHKアナウンサーの経験から、老後の暮らし方を考える。
同じマンション内でそれぞれに部屋を持ち、助け合って暮らす
元NHKアナウンサーで福祉ジャーナリストの村田幸子さん(82才)は、3年前まで「ともだち近居」を実践していた。最初から全員が友達というわけではなかったが、近居する女性同士でお互いを「見守る」という試みに賛同した7人が集まり、数年の話し合いを経て実現した。
「私以外はみんな関西在住だったので関西で物件を探し始めましたが、なかなか全員の希望が一致する物件が見つからず、一度この話はなかったことにしようと解散を決めました。数年の話し合いは無駄ではなかったし、楽しかったねと言っていた矢先、たまたま道端で新しいマンションを知らせるポケットティッシュを配布していて、それが兵庫県尼崎市のマンション。それから数か月で同じマンション内にそれぞれに部屋を持ち、お互い助け合って暮らそうと2008年から始めました」(村田さん・以下同)
近居のメンバーは、全員が独身の女性。開始当時、村田さんは60代半ばで、同年代の女性が集まった。コピーライターや民間企業の広報、カウンセラーなどさまざまなキャリアを持つ女性たちだ。
◆介護はプロに任せるというルールを作った
「そのとき決めていたのは、要介護になったとき、お互いの介護はせずにプロに任せること。必要なときには助け合うけれど、それぞれ人生を楽しんで生きましょうね、というのがルールでした」
カーテンや家具などを新居のために買いそろえるのはとてもワクワクする時間だったが、いざ引っ越しを決めると、村田さんはなんとも例えがたい感情に襲われたという。
「いろいろと考えて、ぴったりくる言葉が『寄る辺のなさ』でした。私は東京生まれの東京育ちで、親戚もみんな東京。恥ずかしながら、尼崎のマンションを買うまで、親の家にパラサイト(寄生)していました。尼崎のマンションを買った当初も東京で母と一緒に暮らしていました。若いときなら違うのでしょうが、私が尼崎に行ったのは60代半ばです。東京を完全に引き払って、尼崎で新たに根っこを張っていくのはどうやってもできないと思った。近居する友人たちにも相談をして、尼崎と東京のマンションを行き来する生活にしました」
◆金銭感覚が同じ友とつかず離れずの関係
その後、「ともだち近居」は10年ほど続いたが、村田さんは2019年に尼崎のマンションを引き払った。
「80代を目前に、行ったり来たりの暮らしは体力的にも経済的にも負担が多くなり、仲間の了解を得て尼崎のマンションを引き払いました。『ともだち近居』の仲間たちとの暮らしは、私の人生に“彩り”を与えてくれました。
7人が集まるのは、いろんな人を講師に呼んで話を聞くサロンイベントの活動と、誕生日会、忘年会ぐらい。ベタベタと馴れ合うのではなく、つかず離れずの関係が心地よかったです。人間関係を横並びにするためリーダーを決めなかったこともよかった。もう1つ、友達同士が一緒に暮らしていくには、金銭感覚が同じであることも重要だと『ともだち近居』を経験して感じました」
◆身内より職場の人間関係に近い
東京に拠点を戻した現在も、友人たちとの関係は良好だという。女友達と暮らすには、「適度な距離」を保つことが必須だと村田さんは言う。これには、自身もシェアハウスを経験した『ピーステックラボ』代表の村本理恵子さんも同意する。
「一緒に住む相手は、すごく仲がいい友達よりも、適度に距離がある人の方が意外とうまくいきます。お互い、相手の生活に踏み込みすぎないからです。また、お節介な人、仕切りたがる人も向いていない。どちらかというと、身内より職場の人間関係に近いかもしれません」
◆いきなり同居よりお試し期間を設ける
介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんは、お試し期間を設けるべきと説く。
「最低1か月は、同居を考えている相手の家に住んでみるべき。それでうまくいかなくても、簡単に元に戻れます。また、子供がいない独身同士、子供がいる独身同士など、境遇が似ている方がうまくいく。お互いに保証人に指名したり、倒れたときは家族を呼んで任せるといったことが、同じ条件で決められるからです」
ルールをしっかり定め、距離感を間違えないことが成功の秘訣。最期まで老後を楽しく暮らすために、女友達との同居を選択肢にするのも悪くなさそうだ。
老後の同居で注意すべき心得8
1.リーダーを決めない
2.そこそこ経済レベルが近い方がいい
3.介護は専門家に任せる
4.同居を始める前にお試し期間を設ける
5.子供がいる、子供がいない同士の組み合わせが理想
6.家具や家電だけでなく、互いのスキルをシェアする
7.適度に距離がある友達同士の方がうまくいく
8.仕切り屋さんはあまり向かない
教えてくれた人
村田幸子さん/福祉ジャーナリスト、村本理恵子さん/『ピーステックラボ』代表、太田差惠子さん/介護・暮らしジャーナリスト
※女性セブン2022年6月9日号
https://josei7.com/
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