部分入れ歯時代の口腔ケア 80代で20本以上歯がある人が過去20年で4倍へ【医師監修】
部分入れ歯を利用している人が増えているが、口腔ケアや部分入れ歯のケアで気をつけることはあるのだろうか?
「部分入れ歯を使用している人もしていない人も、まず、お口のケアの基本は歯磨きです。高齢者になるほど歯茎が下がり、歯の根の部分が露出しやすくなります。
露出した歯根部分は、虫歯のリスクが高くなります。特に、部分入れ歯のバネをかけている歯は、金属のバネが歯根に接触し、プラーク(歯垢)がたまりやすくなるため、虫歯のリスクも高まります。
また、加齢とともに歯並びが悪くなったり、歯の隙間が大きくなって食べ物が詰まりやすくなったりします。叢生(そうせい・歯並びがガタガタしている状態)の部分や歯の隙間は、毛先が細く狭い隙間を磨ける『ワンタフトブラシ』を使って丁寧に磨くことをおすすめしています」
医師が教える「部分入れ歯」お手入れの注意点
「入れ歯のケアは、専用のブラシや洗浄剤、超音波洗浄器を使うといいでしょう。
入れ歯も歯と同じように、食べかすやプラークが付着します。入れ歯がヌメる感じがするときは、『デンチャー(入れ歯、義歯)プラーク』と呼ばれる、入れ歯に付着した細菌が原因です。
デンチャープラークは、水洗いしただけでは落とすことができません。
特に部分入れ歯は、食事をする際、入れ歯と歯の隙間に食べ物が挟まってしまい、食後のケアを怠るとご自身の歯のプラークも、デンチャープラークも増殖しやすい状態になっています。
つまり、歯も、部分入れ歯も、丁寧なケアが必要です。ですから、必ず入れ歯を外して歯を磨いてくださいと指導しています。
入れ歯のケアは、『洗浄剤を使っているから大丈夫』という方もいますが、実は、洗浄剤だけでは、入れ歯やバネについたヌメリ(プラーク)は落とせません。
専用のブラシを使って、入れ歯についたヌメリをこすり取ってから洗浄剤を使うといいでしょう」
部分入れ歯のケアに必要な3つのアイテムと使い方
「入れ歯のケアには、専用歯ブラシのほか、超音波洗浄器や洗浄剤の併用をおすすめします。
入れ歯のお手入れには、以下のアイテムがおすすめだという。相澤さんにそれぞれの使い方と注意ポイントを伺った。
【1】入れ歯専用の歯ブラシ
歯磨き用の一般的な歯ブラシでは、入れ歯に細かい傷がついてしまうので、入れ歯専用ブラシ(義歯ブラシ)を使うことが大切だという。
「入れ歯を洗浄剤につける前に、必ず専用の歯ブラシで食べかすや汚れを取っておくことが大切です」
【2】入れ歯洗浄剤
専用ブラシで汚れを落とした後に使用するのが「入れ歯洗浄剤」。部分入れ歯には専用の洗浄剤を選ぶことが大事だ。
カビの原因菌であるカンジタ菌の洗浄には、6時間は浸しておくとよいとされている。
「入れ歯は雑菌がたまりやすいので、毎日の洗浄をおすすめします。在宅介護では、ご家族も扱いやすいつけおきタイプの洗浄剤がおすすめです」
【3】超音波洗浄器
超音波洗浄器は、入れ歯のブラシでは取りきれない微細な汚れが簡単に取れる時短アイテム。
「まず、入れ歯全体をブラシで磨いてから超音波洗浄器を使用するといいでしょう。洗浄剤も合わせて使うと、短時間できれいに洗浄ができます」
「超音波洗浄器は短時間でより汚れを洗浄できるので、忙しい方でも簡単、時短で入れ歯を清潔に保てます。
超音波洗浄器は、毎日使用していただいても問題ありません。部分入れ歯の方なら、入れ歯を超音波洗浄している間に自分の歯も磨けるのでぜひ試してみてください。
超音波洗浄器を使う際は、超音波洗浄器用の入れ歯洗浄剤を使うか、水で超音波洗浄してから錠剤や粉末状の洗浄剤に一晩つけておくとよいでしょう」
入れ歯のお手入れと口腔ケアで誤嚥性肺炎予防も
「健康な方でもお口の中にはたくさんの菌が存在しています。中でも、歯に付着する細菌(デンタルプラーク)は、虫歯や歯周病を引き起こす原因になります。
このデンタルプラークを除去(プラークコントロール)することが、お口を健康に保つ秘訣です。
また、プラークが睡眠時や誤嚥時などに気管に侵入すると、誤嚥性肺炎の発症のきっかけになる場合もあります。誤嚥性肺炎を防ぐためにも、高齢者の方は、特にお口のケアや入れ歯のケアをしっかりと行って欲しいですね」
教えてくれた人
歯科医・相澤明江さん
日本抗加齢医学会 専門医、日本歯周病学会 認定医。昭和大学歯学部を卒業後、勤務医を経て2015年に「あいさわ歯科医院」(東京都中央区)を開業。https://aisawa-dental.com 子供から高齢者までの幅広い世代の口腔ケアや治療に尽力している。昭和大学高齢者歯科学教室・研究生在籍。顎関節症の症状を緩和するエステサロン「panacea」も併設。https://www.panacea-lp.com/
取材・文/本上夕貴
●【歯科医師解説】部分入れ歯のお手入れ方法と洗浄剤の選び方「金属の有無で異なるので注意が必要」