「僕はドリフの一番のファン」高木ブーが語るメンバーへの特別な思いと絆
「最近、加藤や仲本と前よりもっと仲がよくなった」と高木ブーさん。「やっぱり、会うといちばんホッとする相手」だとも。5月8日(日)には、フジテレビ系で「ドリフに大挑戦スペシャル」(19時~21時54分)の第二弾も放送される。ザ・ドリフターズのメンバーとして深い絆で結ばれているふたりについて、高木さんが思いを語る。(聞き手・石原壮一郎)
加藤や仲本とは60年の付き合いになる
このあいだも「ドリフに大挑戦スペシャル」第二弾の収録があったんだけど、加藤(茶)と仲本(工事)と、それと劇団ひとり君も加わって新作コントをやった。やっぱりコントはいいね。新しい人とやるのも刺激的だし、ちょっとした動きやリアクションで、加藤や仲本と「言葉にしなくても伝わる感覚」を感じられるのも楽しかったな。
今回の特番では、毎月僕たち3人とニコニコ生放送で共演していて武道館にもいっしょに出た、ももクロの百田夏菜子ちゃんも体を張ってコントに挑戦してくれてる。お笑い芸人の人たちやアイドルがドリフの名作コントに“大挑戦”したり、まだ言えないサプライズがあったり、自分でも放送を見るのが楽しみです。
考えてみたら加藤や仲本とは、そろそろ60年の付き合いになるんだよね。もともと仲はいいんだけど、このところ番組やイベントで会う機会が多いせいもあるのかな、前に比べてもっと仲がよくなった気がする。たいした用事がなくても電話をかけたり、「ブータン、変わりない?」って電話がかかってきたりね。
やっぱりふたりは、会うといちばんホッとする相手でもある。「8時だョ!全員集合」の毎週の修羅場をともに乗り越えてきたしね。このところはコロナの影響でお休みしてるけど、数年前まで「こぶ茶バンド」として演奏やコントをやってた。それぞれの道を歩んでいた頃も、かけがえのない仲間という気持ちは常にあったかな。
ヘンな言い方になっちゃうけど、志村(けん)のことも影響しているかもしれない。言うまでもなく、3人にとってあんなに悲しい出来事はなかった。しばらく時間がたつと、少なくとも僕の気持ちの中で「この3人で顔を合わせることができているありがたさ」を前よりも強く感じるようになったんだよね。たぶん、加藤や仲本もそうなんじゃないかなと思ってる。
あらためて僕からふたりを紹介すると、加藤はひと言で言ったら「天才」だね。長さん(いかりや長介)や志村からどんな球が飛んできても、見事に受け止めて絶妙のリアクションや表情で大きな笑いに変える。仲本はやる気が顔に出ないタイプではあるけど、ドリフ全体のことを考えて自分の役割をきっちり果たしていた。あのメガネだって、今はどうか知らないけど、当時は「真面目役」のキャラを強調するための伊達メガネだったもんね。
知っている人は知ってる話かもしれないけど、志村はメンバーになる前の一時期、加藤の家に居候していたことがある。志村は「8時だョ!全員集合」が始まる前にドリフのボーヤ(付き人)になって、そのあと自分でコンビを組んでテレビに出たりしてたんだけど、いろいろあってまたボーヤとして戻ってきた。その頃はドリフが一気に忙しくなってて、東村山から通ってたんじゃ無理だってことで、加藤が居候させてあげたんだよね。
仕事先は同じなんだから、そんなありがたい環境はない。おまけに、志村は運転免許を持ってないから、加藤が運転するクルマで現場まで行き来してた。あるとき加藤は「志村のヤツ、俺が帰ったら、先に風呂に入ってたんだよ。どっちがボーヤかわかんないよ」って笑ってたな。「ま、いっか」と許しちゃう加藤も器が大きいけど、そういうことをやっちゃう志村もやっぱり大物だよね。
その加藤が「全員集合」の初期の頃、事情があって1か月ぐらい番組を休んだことがあった。当時は加藤を中心に笑いを組み立ててたから、長さんも困ったと思う。誰かに加藤の代わりをさせなきゃいけない。荒井(注)さんは独自のキャラだし、僕は……長さんも僕にやらせようとはまったく思わなかっただろうね。そんなわけで仲本がやったんだけど、あいつは立派に代役を務めた。
それからずいぶんあとのことだけど、「ドリフ大爆笑」で仲本と長さんがやった兄弟コントは、ドリフの数あるコントシリーズの中でも名作と言っていいんじゃないかな。兄の長さんがやたら威張っていて、弟の仲本は無邪気にとぼけてばっかりで、そこにすれ違いが生まれる。体操だけじゃないんだよね。コメディアンとしての才能もかなりのもんだよ。
あらためて、すごいメンバーといっしょにやってこられて幸せだったと思う。よく言ってるけど、僕はドリフの「いちばんのファン」です。8日の特番をきっかけに、今までドリフを知らなかった人たちも「ドリフって面白いな」と思ってもらえるといいな。
ブーさんからのひと言
「ドリフの話を始めると止まらなくなるほど、僕たちには沢山の思い出があります。でも、思い出だけじゃない、まだまだこれから3人で新たなことに挑戦しますから楽しみにしていてください」
高木ブー(たかぎ・ぶー)
1933年東京生まれ。中央大学経済学部卒。いくつかのバンドを経て、1964年にザ・ドリフターズに加入。超人気テレビ番組『8時だョ!全員集合』などで、国民的な人気者となる。1990年代後半以降はウクレレ奏者として活躍し、日本にウクレレブーム、ハワイアンブームをもたらした。CD『Hawaiian Christmas』『美女とYABOO!~ハワイアンサウンドによる昭和歌謡名曲集~』『Life is Boo-tiful ~高木ブーベストコレクション』など多数。著書に『第5の男 どこにでもいる僕』(朝日新聞社)など。YouTube「【Aloha】高木ブー家を覗いてみよう」(イザワオフィス公式チャンネル内)も大好評。6月に初めての画集『高木ブー画集 ドリフターズとともに』(ワニ・プラス)を上梓。毎月1回土曜日20時からニコニコ生放送で、ドリフの3人とももクロらが共演する「もリフのじかんチャンネル ~ももいろクローバーZ×ザ・ドリフターズ~」が放送中。5月8日(日)には、フジテレビ系で「ドリフに大挑戦スペシャル」(19時~21時54分)の第二弾が放送される。
取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。最新刊「【超実用】好感度UPの言い方・伝え方」が好評発売中。この連載ではブーさんの言葉を通じて、高齢者が幸せに暮らすためのヒントを探求している。