大竹しのぶ母が死去 在宅介護で寄り添い続けた母への想い
バラエティー番組にラジオや新聞連載コラム、映画やドラマロケのスケジュールもびっしり詰まっている大竹。息つく暇もないほどの激務をこなす大竹しのぶ。自宅で母の介護を続けていたが、その母、江すてるさん(96才)が2018年9月に息を引き取った。
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厚生労働省の調査結果(2017年)によると、現在介護を担う人の21.8%が「介護者と同居する子供」だという。第一線で活躍する芸能人もまた、母の老いと介護に向き合う日々を送っている。90代の母に寄り添う大竹しのぶもそのひとりだった。
還暦を超えてなお女優として第一線で活躍する彼女は、都内の高級住宅地にある豪邸で、長男の二千翔さん(33才)、長女でタレントのIMALU(28才)と共に、母・江すてるさん(96才)の介護をする日々を送っていた。
大竹は兄1人、姉2人、妹1人の5人きょうだいの三女として生まれた。高校教師だった父親が結核で入退院を繰り返したため一家は貧しく、生活保護を受けて生活していた。江すてるさんは父親に代わって働き、家に帰っても寝る寸前まで割烹着をつけて家事と子育てをこなした。
大竹が20才の時、父親は亡くなった。
子供たちが成人した後も江すてるさんは、家族のために働き続けた。
今度は大竹が女優業で多忙に。大竹が最初の夫と死別し、2度目の結婚をした明石家さんま(63才)と離婚するなど、波瀾万丈の人生を歩むなか、娘に常に寄り添い、忙しい大竹に代わって孫の子育てを手伝ったのも江すてるさんだった。
「江すてるさんは自宅へ突然取材に訪れたワイドショーのスタッフや記者にも嫌な顔せず、対応してくれる有名なお母さん。スキャンダルがあっても笑い飛ばす大らかな人です。そんな母親を“今度は私が支える番”と決意しているんでしょう」と大竹の知人は、彼女の介護への向き合い方を振り返る。
舞台の仕事は1~2年前から決まっている。地方公演など東京を数日離れることもあるが、大竹が介護を理由に舞台に穴をあけたことはない。いつ急変するかわからない母と仕事と、神経がすり減るような日々。
「私は介護を経験する運命」
それでも大竹は「介護が面白い」と周囲に前向きに語っている。
8月下旬のネットメディアのインタビューで、大竹は介護は「経験する人」と「しない人」がいるとして、こうも語った。
《私は経験する運命なんだなって。まあ、自分で選んでそうしてきたわけですけども。だから、面白いなって思いますね》
大竹が仕事で不在の時は主に二千翔さんとIMALUが付きっきりとなり、大竹のきょうだいも頻繁に自宅を訪問して介護生活を支えている。
大竹は仕事を終えて帰宅すると、江すてるさんの食事や病状をチェック。家事を終えると深夜1時を回ることもめずらしくない。
「大竹さんが中心となって、きょうだいや子供たちとしっかり連携をとっています。頼るところは頼ると決めているようです。しかも息抜きもできているのよ、と笑って話してくれる。
みんなが寝静まった後、本を読んだり音楽を聴いたりして、リラックスできる時間をつくるようにしていて、“介護で気がめいってしまわないように、フラットな心でいられるよう心がけてる”と。その切り替えができるのが、彼女のすごさなんだと思います」(前出・大竹の知人)
阿川佐和子さん流の介護は…
父を看取り、現在は認知症の母の世話をする阿川佐和子さん(64才)の著書『看る力 アガワ流介護入門』(文藝春秋刊)が話題だ。阿川さんは「息抜き上手は介護上手」と言い切る。
介護に必要なのは「後ろめたさ」を持つことだと言う。
例えば母には「仕事が忙しくて」と言いながらゴルフに出かけて息抜きをすると、その後ろめたさから介護中に優しくなれる。逆に「私はこんなに頑張っているのに」と不満ばかり募ると介護の疲れが倍増する。
同書で阿川さんはこう明かしている。
《これはある意味、浮気をしてる亭主が奥さんに優しいのと同じ原理だと思うんですよ(笑)。介護は、精神的な疲れがすごく大きいから、どう軽減するかっていう方法を、自分なりに編み出す必要があるなと思ったんです》
途中で力尽きないためにも手抜きや息抜きが必要だと阿川さんは強調する。
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2019年9月1日夜9時、東京初台の新国立劇場で昼夜2公演をこなした大竹しのぶが足早に用意された車に乗り込み、まっすぐと自宅へと向かった。
記者が大竹の姿を目撃したこの時が、奇しくも最愛の母の旅立った日であった。
※女性セブン2018年9月20日号
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