猫が母になつきません 第298話「やめられない」
ずっとお休みだった英会話のクラスが再開することになりました。お休みだった間、母はずっと「もう歳だしやめたほうがいいわね」「私が一番歳が上だから、みんなの迷惑になるわ」と言っていました。実際母は宿題もこなせないし、日付がわからなくなっているので何度もクラスの人にスケジュールをたずねてしまうし、たずねたこともすぐに忘れてしまうし…といった具合でいろいろしんどいのです。宿題やスケジュール管理を私がかわりにやっても、かわりにレッスンを受けることはできません。母は本当はもうやめたいのにふんぎりがつかないのです。やめたら英語を忘れてしまうというというよりも「いつまでも学びを忘れないなんて偉いわぁ」と言われなくなるのがつらいのです。I want to be praised!(私はほめられたい)。自分から「もうやめることにした」と言いだしておいて、私が「そうすれば」というと「やめない!」。いつもの被害妄想で「英会話のクラスの人たちが自分のことをやめさせようと話し合っている」と言い出すこともあり、母は自分からやめるのではなくむしろやめさせてくれたら…とさえ思っているような。「やっぱり迷惑よね?」とたずねる母に、私は「そりゃ迷惑だよ」と答える。私の答えなんて関係ない、それでも母はやめられないのですから。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。