危険な”脂肪肝”を防ぐ食べ方のルール7「酒より甘い飲料がNG」「お肉から食べる」
体内で余った中性脂肪が肝臓にたまる「脂肪肝」という病気がある。日本人の4人に1人にその症状が見られ、放っておえば糖尿病や高血圧、心筋梗塞といった生活習慣病を引き起こしやすくなる。そうならないためには対策が必須。最初にすべきは、“食べ方の見直し”。食生活を大きく変えなくても、ちょっとご飯を減らしたり、食べる順番を変えるだけでOK。まずは1週間続けてよう!
脂肪肝を防ぐには「食べ方」がポイント
「脂肪肝と診断されても症状がないからと放置したり、少しよくなったからと元の生活に戻してしまい、何十年も脂肪肝に苦しんでいる患者さんが少なくありません。脂肪肝は発症しやすい割には早期に対処すれば治りやすい病気。まずは食べ方の癖を直し、習慣化することから始めてみましょう」(栗原さん・以下同)
軽症の場合、以下の方法を試せば、1週間で改善できるという。ポイントは、糖質の摂取量に注意すること。
「糖質を摂取すると血糖値が上昇。すると血糖値を下げようとインスリンが分泌されます。糖質を摂りすぎると、インスリンは余分な糖質を中性脂肪に変えてしまい、それが肝臓にたまるのです」
女性は50代以降にリスクが上がる!
特に女性は、50代から脂肪肝のリスクが高まるという。
「女性ホルモンのエストロゲンには、血糖値の急上昇を抑えて脂肪肝を防ぐ効果があるのですが、更年期で減少するため、リスクが高まるのです」
では、糖質さえ摂らなければよいのだろうか。
「女性の場合、1日の糖質摂取量を200gに抑えたいのですが、50代女性ではその2倍以上摂っている人が多い。エストロゲンも減るので、これまで通りの食生活では脂肪肝を避けられません。かといって、極端な糖質制限もおすすめしません。肝臓が正常に働くためにはエネルギーが必要で、そのため肝臓にはある程度の中性脂肪が蓄えられています。
しかし、行きすぎたダイエットでそれが枯渇すると、脳が体中の脂肪を肝臓に集めるように指令を出します。その結果、肝臓に中性脂肪が集まりすぎて、脂肪肝を発症してしまうのです」
糖質は多すぎても少なすぎてもいけない。減量は1か月に0.5~1kg減が理想だ。
→コロナ太りで急増中 生活習慣病を引き起こす「脂肪肝」とは? セルフチェック付き
間食は果実よりチョコレートを!
女性の場合、健康のためにとスイーツを控えて果物を食べる人が多いが、これもまた、脂肪肝対策にはNGだという。
「果物に含まれる果糖は糖質の中でも最も中性脂肪になりやすい物質だからです」
夜に果物を食べるのは、飲酒後、しめにラーメンを食べるのと同じ危険性があるという。間食には高カカオのチョコレートを習慣化しよう。
脂肪肝を防ぐ食事7つのルール
脂肪肝対策で最も重要な食の見直しについて、7つに分けて説明していく。
【1】ご飯の量を10%減らす
「私が提唱する1日の糖質摂取量の目安は、男性250g、女性200gで、このうちご飯などの主食から摂る糖質の目安は120~150gです」(肝臓専門医・栗原毅さん、以下同)。
ただしご飯の重さが、糖質の重量ではないので要注意。お茶わん1杯のご飯には55g程度の糖質が含まれていて、1日に3回ご飯を食べると165gとなり、1日の目安を超える。そのため、ご飯の量を10%減らすとちょうどよいことになる。
■ご飯の量と糖質量
丼もの 280g/糖質103g
お茶わん1杯 150g/糖質55g
【2】ランチは20分以上かける(早食いせずによく噛む)
「日本人には早食いの人が多く、これは悪い習慣です。特に問題はランチで、うどんやそば、ラーメンなどの一品ものを流し込むように食べて終える人が多いんです」。
早食いによって一気に食べ物が体内に入ると急激に血糖値が上がるので、これを下げようと大量のインスリンが分泌される。インスリンには糖を脂肪に変える働きもあるため、肝臓に脂肪がたまりやすくなる。これを防ぐにはインスリンが急に分泌されるような食べ方を避ければいい。
「食事はよく噛んで、最低でも20分はかけましょう。早食いを助長する麺類はできるだけ避けるのがおすすめです」。
【3】食事は肉から食べる。卵は1日3個食べてOK
脂肪肝の予防や解消には、食べる順番を意識することも大切だ。
「糖質の吸収を遅らせる食べ方としては、食物繊維の多い野菜やきのこなどから食べ始め、次に肉や魚、卵などのたんぱく質、最後にご飯やパンなどの炭水化物で締めるのが一般的ですが、私は、たんぱく質を最初に食べることをおすすめします。
というのも、日本人はたんぱく質の摂取量が少なく、特に60代以上の人はその傾向が顕著だからです」。
肉や卵には、アルブミンやメチオニンなど、肝臓の働きを助ける物質も含まれている。また、卵にはコレステロール値を下げる効果もあるので、1日に3個ぐらい食べてもいいという。
【4】間食にはカカオ70%以上のチョコレートを
カカオ70%以上の高カカオチョコレートには、肝臓の機能を高める効果があるという。
「カカオに含まれるポリフェノールには、肝臓の脂肪蓄積を抑制する効果が認められています。ほかにも、血糖値や血圧を下げ、精神を安定させる効果や、歯周病の予防効果なども期待できます。間食したくなったら高カカオチョコレートにしましょう。チョコレートで肝臓の数値がよくなった症例もたくさんありますよ」。
高カカオチョコレートには、食物繊維も含まれているので、食前に食べるのもおすすめ。
■ポリフェノールの多い食べ物
1位 高カカオチョコレート 840mg
2位 りんご 220mg
3位 赤ワイン 180mg
※100g中のポリフェノール含有量
【5】酒はOKだが、甘い飲み物や果物は避ける
野菜や果物の栄養素が摂れたり、腸内環境を整えられる飲料を、健康にいいからと毎日飲んでいる人も多いが、こと脂肪肝を改善するには、控えた方がいいという。
「これらの飲み物には糖質(果糖ぶどう糖液糖)がたっぷり含まれているものが多いんです。飲むときは、栄養成分表示をチェックし、糖質量を確認しましょう」。
同様に、果糖が豊富な果物も脂肪肝にとっては危険な食べ物。逆にアルコールは適量を守れば問題ないという。
「かつては肝臓が悪くなるのはお酒のせいといわれましたが、最近では、適量のアルコールを飲む人の全死亡率(※)は低いとされています。適量とは、ビールなら中瓶2本、日本酒なら2合、ワインならグラス3杯まで。糖質の少ない(あるいはゼロの)ジンやラム、焼酎、ウイスキーはよりおすすめです」。
ただし、果汁入りサワーなどの甘みの強い酒は避けること。
(※)病気や事故など、あらゆる死因を含めた死亡率のこと。これが最も低いのは、酒をまったく飲まない人ではなく、日本酒にして1~2合の酒を毎日飲んでいる人だという。
★糖度の高い果物ランキング
出典/栗原毅著『〈卵と肉〉が糖尿病に効く!』(主婦の友社)
果実名/目安量/目安量当たりの糖質(g)
■1位 りんご 1個 33.4
■2位 柿 1個 26.0
■3位 なし 1個 22.2
■4位 ぶどう 1房 19.5
■5位 バナナ 1本 19.3
■6位 パイナップル 1/4個 11.8
■7位 キウイフルーツ 1個 9.4
■8位 みかん 1個 8.8
■9位 メロン 1切れ 7.8
■10位 いちじく1個 6.2
【6】食べるべきは「オサカナスキヤネ」
脂肪肝の予防や改善のために摂るべき食材、それが「オサカナスキヤネ」だ。
「『オ』は悪玉コレステロールを減らすオリーブオイル、『サ』はDHAやEPAを含む魚、『カ』は食物繊維やミネラル豊富な海藻、『ナ』は血栓を溶かす効果のある納豆、『ス』は動脈硬化や高血圧を予防する酢、『キ』は食物繊維が豊富で免疫力を高めるきのこ、『ヤ』は食物繊維やビタミンCたっぷりの野菜、『ネ』は善玉コレステロールを増やして悪玉コレステロールを減らす長ねぎや玉ねぎのこと」。標語にして覚えよう。
■「オサカナスキヤネ」とは?
オ…オリーブオイル
サ…サカナ
カ…海藻
ナ…納豆
ス…酢
キ…きのこ
ヤ…野菜
ネ…ねぎ類
【7】緑茶を飲む&食べる
体に取り込んだ酸素の一部は、ストレスや放射線、大気汚染などが原因で、体に悪影響を及ぼす活性酸素に変化する。この活性酸素の影響を受けやすいのが肝臓で、そのダメージから肝臓を守るのが緑茶に含まれるカテキンだ。
「カテキンには強い抗酸化作用があるため、1日700mlを目安に摂取しましょう」。茶葉を食べた方が多くのカテキンが摂取できるので、以下のレシピを参考にしてほしい。
■食べる緑茶レシピ
★茶がらと大根のサラダ(1人分)
大根(200g)はせん切りにし、ひとつまみの塩を加えてもんだら10分ほどおいて水気を絞る。これに茶がら(大さじ1)と適量のごま油を加え、塩少々で味を調えたら器に盛って、すりごまをふる。
★油揚げの茶がらみそピザ(1人分)
油揚げにみそ小さじ1を塗り、茶がらとかつおぶし各大さじ1を混ぜたものと適量の溶けるチーズをのせてトースターで約5分焼く。
教えてくれた人
栗原毅さん/栗原クリニック東京・日本橋院長・肝臓専門医
取材・文/上村久留美 イラスト/こさかいずみ
※女性セブン2022年3月3日号
https://josei7.com/
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