肌のシミとしわ 種類と原因別対処法、クリニックでの施術用語を専門家が解説
シミ&しわの原因は数々あれども、共通の敵はなんといっても紫外線。夏が終わったからと日焼け対策をサボると、気になるシミ&しわが悪化することに。それは大変! 正しい知識と、ケア方法を皮膚科医の今泉明子さんに教えていただこう。
いまさら聞けない! スキンケア【Q&A】
「私のシミ&しわ対策は、これで大丈夫?」―― いまさら聞けないスキンケアに関する素朴な疑問を、今泉医師にお答えいただいた。
Q:シミ&しわができやすいのはどんな人?
汗をかきにくい、冷え症などの代謝が悪い人や、不規則な生活、スキンケア不足の人。
「肌の新陳代謝が落ちるとシミ・しわができやすくなります。また、紫外線を浴びると肌のハリを保つコラーゲンやエラスチンが傷つき、そこにメラニン色素が蓄積されるので、長時間のウオーキングも油断は禁物です」
Q:冬でも日焼け止めは必要なの?
「紫外線には、肌の奥まで届き、しわやたるみにつながるUVA(紫外線A波)と、シミのもととなるUVA(紫外線B波)があります。UVAは一年中、雨の日も降り注いでいます。オゾン層の破壊で昔より紫外線が強くなっているため、もはや日焼け止めはシミ&しわ予防の“鉄則”。いまや30代前後の美肌男子も、日焼け止めは習慣化しているほど。
日焼け止めの数値は、日常生活ならSPF35以上、PA++(※1)、長時間外にいるならSPF 50、PA+++は必要。塗るタイミングはベースメイクの前に。塗り直しは、重ねづけできるパウダータイプを持ち歩くと便利です。ちなみに手の甲のシミは代謝が悪いため、美容医療では顔よりも取るのが大変。できるとやっかいなので、日焼け止めを必ず塗ってください」
(※1)SPFはUVBを、PAはUVAを防ぐ効果指数のこと。いずれも数値が増えるほど防御効果が高い。1回の効果は2時間ほどなので、塗り直しが必要。
Q:予防しているのになぜこめかみにシミが?
「もしかして、“Oゾーン(顔の際)”を塗り残していませんか? ファンデーションもそうですが、正面はしっかり塗っても、顔のサイドは疎(おろそ)かにしている人が多いんです。
ちなみに、資生堂が過去に実施した『化粧水のつけ方調査』では、ほとんどの人が顔の真ん中だけを念入りにしていたという結果が出ています。頰はもともと水分量が多いのですが、Oゾーンは圧倒的にコラーゲン量が少なく、マスクをしてもむき出しになる危険地帯。日焼け止めは、まずここから塗る習慣を」
Q:毎日のシートマスクでシミ・しわはなくなる?
「結論から言うと、シートマスクだけでは、すでにあるシミや深いしわは消せません! ただ、水分量が多ければ皮膚の代謝が上がるので、一部のシミが薄くなり、小じわに効果はあるでしょう。やらないよりはやった方が絶対にいいと思いますが、気をつけたいのは時間。規定時間以上にシートをのせ続けると水分が蒸発し、かえって乾燥を招くので、規定より短めに行って」
Q:高価なアイクリームも効果が出ないのはなぜ?
「塗る範囲を間違えているかもしれません。眉から目のまわりの皮膚のほとんどは下がる筋肉。まぶたばかりをマッサージすると、この下がる筋肉を鍛えてしまい、かえってたるみの原因に。顔の上半分のうち、引き上げてくれるのは眉上の筋肉だけなので、アイクリームは眉上まで塗りましょう」
内側から外側へ螺旋(らせん)を描くようにやさしくなじませよう。
Q:お手入れしてもシミが濃くなり、くすみます…。何が原因?
「ストレスがかかるとメラニンを誘発し、シミが濃くなることは、マウス実験でも証明されています。ストレスを発散させ、たっぷりと睡眠を取ることが重要です。また、顔が全体的にくすんでいる人は、古い角質が蓄積している可能性大。若い頃は約28日サイクルで行われていた肌のターンオーバー(生まれ変わり)が、中高年になると約40日間隔に。そのため、お手入れをしても古い角質がたまっていきます。
週に1回、ピーリング(※2)などで角質を取り、ターンオーバーのサイクルを整えるのも手。大人になると、与えるだけでなく取り除くケアも必要。クリニックでも行っていますし、市販の商品もたくさんあります」
(※2)ピーリングとは、古くなった角質や肌の老廃物をジェルやスクラブ入りの化粧品などで取り除くケア。敏感肌の人は肌をいためてしまうこともあるので、クリニックで相談を。
Q:マスクこすれで頰にくすみが…。これもシミになるの?
「以前から『ナイロンタオル皮膚炎』という言葉があるのですが、入浴時にナイロンタオルで皮膚をこすり続けると、シミの一種である色素沈着が起きることがあります。マスクでいうと、ナイロン素材の不織布のものは要注意。つけ外しを繰り返すと摩擦が起きます。場面に応じて、シルクや綿など自然素材のものと使い分け、美白作用や保湿性の高いスキンケア商品でお肌を保護しましょう」
Q:サプリメントは摂るべき?
「体の内側から補えばより効果的です。特に肌の新陳代謝を促し、毛穴引き締め効果もあるビタミンB群、活性酸素を除去するビタミンC、抗酸化作用のビタミンEが◎。市販の“飲む日焼け止め”も紫外線の吸収量を減らし、メラニンを分解する酵素があるので、予防になると思います」。
服用薬がある場合は、かかりつけ医に相談を。
Q:あってもいいしわ、ない方がいいしわってありますか?
「年を重ね、多くの経験を経た女性が1本のしわもないなんて、美しいというより不自然ですよね。たとえば、笑ったときにできる目尻のしわは魅力的に見えることが多く、あえて残すというハリウッド女優も。
一方で、眉間のしわは表情が険しく、神経質そうに見えるので、ない方がいいと思います。まれに、しわや顔色から疾患が見つかる場合があるので、体調不良に伴い急激にしわができた場合は注意が必要。気になるようなら皮膚科に相談を」
Q:自宅ケアか、クリニックに行くか…その決めどきは?
「どんなに小さくても、できてしまったシミはクリニックで取るしか方法はありません。加齢により深く刻まれたしわも同様です。それでも、毎日のお手入れと規則正しい生活、食事やサプリメントの摂取などで、悪化を防ぎながらシミ&しわを改善することは可能です。スキンケアで顔のくすみが取れたらシミやしわが気にならなくなったという人も多くいます。『どうしても消したい』のか『目立たなくなればOK』なのか、顔全体を眺めて、冷静に分析しましょう」
★美容医療と自宅ケアとの併用で相乗効果に
顔に異物を入れるのは怖い」「費用が心配」と、二の足を踏む美容医療だが。
「定期的にピーリングを行って、お肌の新陳代謝サイクルを整えるなど、ご自宅でのケアを補足する目的で当院に通われるかたもいらっしゃいます。微電流を流して、日常のケアでは届かない肌の深層部に有効成分を届ける施術など、怖いものばかりではないんですよ(笑い)」(今泉さん)
深刻なシミやしわをどうしても取りたいという人は、クリニック選びが肝心だ。通常は、きめ細かなカウンセリングで解決策を探っていくが、早急に施術を進めるところは気をつけた方がいい。興味がある人は、まず相談に行くのがよさそうだ。
あなたのシミの種類はどれ?【原因・症状&対処方法】
下記で、自分に当てはまるものはあるか? 種類と原因、それにともなうスキンケア法と、クリニックに行った場合、想定される施術内容をまとめた。
★老人性色素斑
長年紫外線を浴びることで現れる最も一般的なシミ。茶褐色で輪郭がはっきりしている。30代以降に(20代の人も)多く、こめかみや頰、手の甲などにできる。
【スキンケア方法】
薄いシミなら美白化粧品も有効だが、日焼け止めクリームを塗り、日傘や帽子で紫外線をとにかくカット。食生活では抗酸化作用のあるポリフェノールやリコピンを。
【クリニック想定施術内容】
QスイッチYAGレーザーまたはNd-YAGレーザーなど
★炎症後色素沈着
ニキビや虫刺され、すり傷、マスクこすれなどの炎症の痕が沈着したもの。時間が経つと消えることが多いが、日焼けにより悪化し、痕が残ってシミになることも。
【スキンケア方法】
肌を強くこする洗顔やマッサージを避ける。美白化粧品も有効だが、炎症を起こしている場合は自己判断せずクリニックへ。
【クリニック想定施術内容】
イオン導入や外用薬(トレチノイン・ハイドロキノン)、内服薬(ビタミンC)など
★肝斑
実は原因のほとんどは紫外線。ほかの要因として、女性ホルモンの乱れにより、両頰の左右対称に薄茶色のもやもやとしたシミが広がる。30~40代に多く、閉経後に薄くなる。
【スキンケア方法】
とにかく遮光と、ストレスに気をつけ、充分な睡眠を。トラネキサム酸入りの美白化粧品もいい。レーザー治療はより悪化する可能性があるのでNG。
【クリニック想定施術内容】
トーニング、ケミカルピーリングなど
★雀卵斑(そばかす)
遺伝的な要因で発生する斑点で、幼児期からでき始め、思春期以降に薄くなる。白人に多く見られる。鼻から頰にかけてできるほか、体に現れることも。
【スキンケア方法】
美白化粧品の効果は期待できないが、紫外線の影響で悪化することが多いので、日焼け対策は必須。メラニンの生成を抑えるビタミンCやEを摂る。
【クリニック想定施術内容】
フォトフェイシャル、ケミカルピーリングなど
あなたのシワの種類はどれ?【原因・症状&対処方法】
上記のシミ同様、種類と原因、それにともなうスキンケア法と、クリニックに行った場合、想定される施術内容をまとめた。
★表情じわ
表情のくせ(表情筋の過緊張)によって生じる皮膚の動きが、徐々に固定されてできたもの。紫外線や乾燥、加齢によるものだが、喫煙も原因の1つ。主に目尻や額、眉間にできる。
【スキンケア方法】
UVケアで徹底的に紫外線をブロックし、皮膚の薄い目元はアイクリームで、こすらず、やさしく保護を。化粧品では真皮にアプローチするビタミンC誘導体入りを。
【クリニック想定施術内容】
ボツリヌストキシン注射(しわ取り注射)、ヒアルロン酸注射など
★たるみじわ
加齢、長年の日焼け、乾燥でハリを失い、余った皮膚が深いしわとなった。目の下から頰にかけてのゴルゴライン(ゴルゴ13に由来)、ほうれい線、口から顎にかけてのマリオネットライン、首のしわなど
【スキンケア方法】
UVケアや保湿ケアで進行を防ぐ。化粧品では真皮にアプローチするビタミンC誘導体入りを。フェイスマッサージで血流を促し、リフトアップを図る。
【クリニック想定施術内容】
ヒアルロン酸注射、マイクロボトックスリフト、糸リフト、イントラジェン、HIFU(ハイフ)など
★乾燥じわ
乾燥によって現れる顔のいろいろな箇所にできる小じわ、ちりめんじわ。主に水分不足や喫煙などが原因で肌の柔軟性が低下。そのまま放置すると表情じわ、たるみじわに進む場合もある。
【スキンケア方法】
とにかく乾燥が大敵なので、UVケアで紫外線をブロックし、保湿する。化粧品は、乾燥を防ぎ保湿効果のあるセラミド入りが有効。
【クリニック想定施術内容】
ヒアルロン酸注射、プラズマシャワーなど
クリニックで使われる主な施術用語
聞いたことはあるけれど、よく分からない。そんな施術用語の疑問もこの機会にスッキリさせよう。
※紹介した用語は、施術の一部。価格は「今泉スキンクリニック」のもので、各クリニックにより異なる。
■QスイッチYAGレーザー
特定の色素のみに反応し、深い層までの色素をピンポイントで破壊し、シミを除去する。短い時間で瞬間的に照射するため、皮膚へのダメージが少ない。初回1ショット3300円、次回以降1ショット1100円~。
■Nd-YAGレーザー(レーザートーニング)
低出力で均一なエネルギーを照射し、シミの原因となるメラノサイトを徐々に破壊。初回ショット3300円、次回以降1ショット1100円~。
■イオン導入
微弱な電流を皮膚に流し、イオン化した有効成分を肌の深層へ届ける施術。5500円~。
■ケミカルピーリング
弱酸性の薬剤(グリコール酸、サリチル酸マクロゴール)を塗布し、ふだんの洗顔では落としきれない角質を取り除く。2万7500円~。
■フォトフェイシャル
紫外線の中でも幅広い波長を持つIPLを照射し、色素沈着を改善させる。1回3万3000円~。
■ボツリヌストキシン注射(しわ取り注射)
気になるしわの部位に有効成分を注入し、拘縮した筋肉を緩める。効果は4か月程度継続する。2万7500円~。
■ヒアルロン酸注射
気になるしわの部位にヒアルロン酸を注入し、ハリを出す。ほうれい線や目の下のクマ、たるみに効果がある。7万7000円~。
■HIFU(ハイフ)
たるみが気になる部分に超音波を当て、たるみやゆるみを引き上げる。4万6200円~。
■プラズマシャワー
イオン化された美容液を照射し、肌のハリや小じわ、たるみを改善。2万7500円~。
教えてくれた人
今泉明子さん/皮膚科医
「今泉スキンクリニック」院長。ヒアルロン酸やボトックス治療など、美容医療における技術力の高さに定評がある。
取材・文/佐藤有栄 イラスト/とげとげ
※女性セブン2021年11月11・18日号
https://josei7.com/
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