猫が母になつきません 第279話「なんねん?」
時々、唐突に母に聞く「今日は何年の何月何日?」。答えはいつも年号から間違っています。年月日を認識できなくなることを「見当識障害」というそうです。最初に日付や時間がわからなくなり、次に場所がわからなくなり、人がわからなくなる、という順番で症状が進むことが多いんだとか。最近母が少しずつ外に出るようになって気づいたのは、日付が認識できないので人との約束がまったくできない、ということです。記憶力もなくなっているので約束の日時を忘れてしまうし、忘れたので電話して聞いても電話を切る頃にはもう忘れているといった具合です。母のカレンダーは文字でいっぱい。何度も聞いて何度も書くので自分でも何を書いているのかわからなくなるらしい。母のスケジュールは私が把握して「今日は〜の日だよ」と言うようにしていますが、この時期予定が変更になることも多く、把握しきれないのが悩みの種。母もまだ自分でできると思っているところがあり、私に管理されるのが不満なようですし…。そこで《デジタル日めくり電波時計》というものを買ってみました。画面に文字で年月日と曜日と時間、ついでに温度と湿度も表示される卓上時計です。母が認識しやすいよう日付が一番大きく表示されるものを選びました。母に見せると「こんなものがあるのね」と気に入った様子。同じ日付が二度と表示されることのないその時計を見ていると「今日って今日しかないんだな…」とあらためて実感します。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。