高木ブー『志村けんの大爆笑展』で懐かしいセットに再会!「しみじみ見入っちゃった」
「バカ殿や白鳥のバレリーナの志村と会えて嬉しかったな。どっかから『高木さん、久しぶり』って志村の声が聞こえてきた気もした」と高木ブーさん。松坂屋上野店で開催中の「志村けんの大爆笑展」(10月17日まで)を訪れて、懐かしいセットやコントで使っていた小道具とも再会した。志村さんを隣りに感じて、何を思ったのか。(聞き手・石原壮一郎)
大盛況!初日は開店前から大行列に
やっぱり志村はすごいね。こんなすごい展覧会をやっちゃうんだもん。僕が行ったのは初日の閉店後で、加藤(茶)夫妻もいっしょだった。加藤も「これはこうなんだよ」なんて綾菜ちゃんに説明しながら楽しそうに見てたな。仲本は朝から「一日店長」をやってもう中を見てたから、そのときはいなかった。
その日の昼間は、すごい人出だったらしいよ。知り合いに聞いたけど、デパートが開く前から大行列ができてて、今はコロナ対策で入場制限をしているせいもあって、前売り券を持っている人もすぐには入れない。まず整理券をもらって、入れるのは2時間後だったんだって。お客さんは、まさに老若男女で子どもも多かったらしい。さすが志村だよ。
座ってアイーンのポーズをしてるバカ殿の人形があって、そこでは並んで記念撮影ができる。あの人形は表情も肌の感じも、細かいところまでよくできてたな。仲本も取材で言ってたけど、つい話しかけたくなっちゃう。
置いてある座布団にも志村らしい仕掛けがしてあって、ファンの人は嬉しいと思うな。たらい落ちの写真が撮れるコーナーでは、孫のコタロウと娘のダンナさんが並んで撮ってた。僕はさんざん落とされてるから撮らなかったけど。
志村がやってたキャラクターのうち、馴染みが深いのは『8時だョ!全員集合』のコントでいっしょにやったバカ殿と、少年少女合唱隊のコーナーで生まれた白鳥かな。バカ殿は志村の代名詞のひとつだけど、最初はコントの設定のひとつで、志村本人は「長く続くキャラクターじゃないな」と思ってたみたい。わからないもんだよね。
特殊技術の展示コーナーには懐かしい小道具がたくさん
しみじみ見入っちゃったのが、うんこのぬいぐるみがたくさん飾ってあるショーケース。うんこや白鳥やカラスなんかの小道具は「特殊美術」って言うんだけど、そういうのは「光子館」って会社が作ってた。毎週たくさん発注してたから、たいへんだったと思うよ。展示の説明に「うんこは1000個くらい作った」って書いてあった。
イメージ通りの小道具がないと、面白いコントは作れない。小道具も大道具も衣装も、みんなで知恵を絞って力を合わせて作ってたんだよね。今は技術的には進化しているのかもしれないけど、手作業で作るからこその味があった。ああいう職人技は残ってほしいな。職人さんにはとってもお世話になったし、メンバーとも仲が良かった。志村の訃報があったときは、光子館の職人さんのひとりが僕に手紙をくれてさ。その気持ちが嬉しいよね。
売店には、志村の限定グッズがたくさん並んでる。変なおじさんが描かれたパジャマやバカ殿が浮いたり沈んだりするボールペンや、お菓子もいっぱいあった。東京でやる前に大阪で開催されたんだけど、並んでいるグッズを全部買ったファンの方がいたんだって。持って帰れないのはもちろんだけど、しまっておく場所もたいへんだよ。それだけ志村のことが好きだったんだろうな。幸せなヤツだよ。
ウチはバカ殿の着物の模様を表紙にした御朱印帳やコラボした七味とかを買ってきた。この御朱印帳を持って、志村といっしょにあちこちの神社仏閣を巡らなきゃ。僕の『高木ブー画集 ドリフターズとともに』のサイン本と、オリジナルのポストカードも並べてもらってます。お客さんがいるときに、売り場で「はい、いらっしゃい」なんてやりたかったな。
今度はお客さんがいるときに変装して来てみたい
たくさんのファンの人が会場に来てくれているのは、展示を見て「ああ、やっぱり志村けんは面白かったな」って思い出して、楽しませてくれたことに感謝したいからっていうのがあるんだと思う。コロナ禍のご時世で何もやれてないしね。できることなら僕も、ファンの人たちといっしょに会場をまわってみたい。「志村のあのギャグは面白かったよね」なんて話しながら。こっそり紛れ込んでファン同士の会話を聞くのもいいな。
今はほら、みんなマスクしてるじゃない。娘のかおるに「マスクしてれば高木ブーだってわからないから、こっそり行ってみたいな」って相談したんだけど、「いやいや、すぐバレるから」って言われちゃった。うーん、そうかな。バレない変装の方法を考えないとね。
【データ】
「志村けんの大爆笑展 日本全国を笑いの渦に!」
東京は松坂屋上野店で10月17日まで。その後、宮城(11月~)、石川(12月~)など、全国各地で開催予定。
https://shimuraken-daibakusho.com/
高木ブー(たかぎ・ぶー)
1933年東京生まれ。中央大学経済学部卒。いくつかのバンドを経て、1964年にザ・ドリフターズに加入。超人気テレビ番組『8時だョ!全員集合』などで、国民的な人気者となる。1990年代後半以降はウクレレ奏者として活躍し、日本にウクレレブーム、ハワイアンブームをもたらした。CD『Hawaiian Christmas』『LET IT BOO』『Life is Boo-tiful ~高木ブーベストコレクション』など多数。著書に『第5の男 どこにでもいる僕』(朝日新聞社)など。YouTube「【Aloha】高木ブー家を覗いてみよう」(イザワオフィス公式チャンネル内)も大好評。6月に初めての画集『高木ブー画集 ドリフターズとともに』(ワニ・プラス)を上梓。毎月1回土曜日20時からニコニコ生放送で、ドリフの3人とももクロらが共演する『もリフのじかんチャンネル ~ももいろクローバーZ×ザ・ドリフターズ~』が放送中。11月18日には日本武道館で『ドリフ&ももクロ ライブフェス』の開催が決定!
取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。最新刊「【超実用】好感度UPの言い方・伝え方」が好評発売中。この連載ではブーさんの言葉を通じて、高齢者が幸せに暮らすためのヒントを探求している。