人気イラストレーターが”断捨離”に挫折!? 捨てられない、片付けられない4つの理由
人生初の「断捨離」に取り組んだ様子を描いたコミックエッセイが話題のなとみみわさん。いざ片付けを始めようとしても、なかなか進まずに挫折を繰り返したという。物が捨てられない理由とは…。「断捨離」を終えたご自宅兼仕事場でお話を伺いました。
「断捨離」の“挫折”を描いたストーリー
「“ばあさん”の介護が終わって、息子も巣立って、離婚もして…。この2年の間にいろんなことを手放していったら、なんだか心にぽっかり穴が開いてしまったみたいで」
明るい笑顔で語るイラストレーターのなとみみわさん(以下、同)。
義母を介護した日々を綴ったブログ『あっけらかん』が話題をよび、コミックエッセイ『ばあさんとの愛しき日々』に。介護ポストセブンでは連載『兄がボケました』の挿絵も担当するなど、さまざまな媒体で活躍する売れっ子。忙しい日々の中で、感じていたことは…。
「50代を目前にひとり暮らしを始めたんですが、部屋は散らかり放題。床で寝てしまったり、ご飯作るのも面倒でお菓子で済ませたり。仕事部屋の机の上はいつもごちゃごちゃで、ペンや消しゴムが見つからない。
でも、部屋が汚くても死ぬわけじゃないし!って、ずっと思っていたんですよね」
そんな彼女が一念発起して人生初の「断捨離」に挑戦し、『コミックエッセイ 1ヵ月でいらないモノ8割捨てられた! 私の断捨離』にまとめた。
「断捨離」とは、もともとヨガの思想。不要な物を手放していくことで心を解放し、身軽になっていくという考え方。提唱者であるやましたひでこさんの指導を受けながら、1か月かけてすっきりシンプルな暮らしを実現するまでの様子が克明に描かれている。
「いざ『断捨離』するぞって思って、片付けに取り組むんですけどね、そうするとすぐ“奴ら”が現れて、挫折。現れては、挫折…の繰り返しでした」
そんな、なとみさんの「断捨離」を阻む“奴ら”の正体とは…。
断捨離が進まない理由は「妖怪」
「『断捨離』しようとすると、妖怪が現れる(笑い)。片付けできない理由を妖怪のせいにしているわけですが…。
まあ、奴らとは長い付き合いなんですよ。物がごちゃごちゃだった実家暮らしのときから私の中にはびこっていました」
1.余計な物が増える原因“妖怪モノかくし”
まず、物が増えていく原因になっていたのが「妖怪モノかくし」。
「仕事をするデスク周りがごちゃごちゃしているから、消しゴムひとつ探すのに時間がかかるわけです。探しているとイライラしてきて、もう新しいの買いに行こうって、それを何度も繰り返すから、だんだん物が増えていく。リップクリームなんかもいろんな場所に点在していました。
何か使うときには必ず“探す”という行為が付属しているから、それが昔から当たり前で。『妖怪モノかくし』は出現率ナンバーワンでした」
「『断捨離』を終えたら、探さずに済むようになって『モノかくし』の出現頻度が減りましたね。以前は、“探す”という行動のせいで、仕事の手が止まることも多かったのですが、今はあるべきところにものがある、とっても快適ですよ。
キッチンの引き出しなんかも、ものがパンパンで開かなくて、無理やり引っ張り出して何かが中でバキッと折れたりして(笑い)。『断捨離』をして不要な物を整理した結果、そういうひとつひとつの小さいストレスがなくなって、本当にすっきりしました」
2.片付け始めると登場する“妖怪思い出語り”
「いざ片付けを始めると、決まって現れるのが『妖怪思い出語り』」
「アルバムを引っ張り出して文集を読んで、誰かにもらった小物だとか、『ああこれはあのときの!』って思い出に浸って手が止まる。あれこれ出しっぱなしなのに捨てられなくて、余計散らかってしまうんですよ」
3.捨てられない罪悪感…“妖怪もったいない坊や”
「物を捨てるときって、どうしても罪悪感があるんです。まだ使えるんじゃないか、大事な人からもらったし…とか考え始めると、『妖怪もったいない坊や』がひょっこり現れます」
「物に心を寄せると、捨てられないんですよ。そうじゃなくて、これは自分にふさわしいか、今の自分にとって幸せか?と、自分軸で考えるようにすると、捨てられるようになる。最初はそれがなかなかできなくて…」
4.「断捨離」を阻むラスボス“大妖怪どうでもええ”
「思い出もあるし、もったいないしで、何を捨てていいのかわからなくなってくるわけです。そのうちだんだん嫌気がさしてきて、双子の妖怪『めんどくせぇ~』と『まぁいっか~』が出てきて、作業は中断。
最終的には、双子の父『大妖怪どうでもええ~』が出現して、すべてを投げ出してしまうわけです(笑い)」
「断捨離」の挫折を描きたかった
「『断捨離』って誰でもそう簡単にうまくいかないと思うんです。だから、なとみさんにはその挫折をリアルに描いてほしかった」と、担当編集者が明かす通り、コミックは「断捨離」を決意してから行動を起こし、やましたさんの指導により実践するまでが全10話で描かれているのだが、
「5話まではずっと挫折しっぱなし(笑い)。妖怪たちのおかげで、なかなか始まらないんですよ」と、なとみさんは苦笑い。
片付けをしていると現れる4体の妖怪たちとのやり取りは、日常生活で“あるある”なシチュエーションばかりで、思わずクスっと笑ってしまう。
生活がすさんで自己肯定感が下がる
「挫折してもう“どうでもええ!!”となってしまうと、そこからまた負の連鎖に。ひとりだしご飯作らなくてもいいか、風呂も明日でいいかって。そうすると部屋も汚いままで、イライラして、生活が荒れてきて。自分が嫌になって、自己肯定感が下がってしまう。
なんだかいつも孤独で寂しくて、心にぽっかり穴が開いていたわけです。その穴を、友達と会うとか仕事で埋めるとか、何かで満たそうとするから、余計に寂しくなっちゃってね…。
でも、やましたさんに言われたんです。『その開いた穴には、もっともっと素敵なことが入ってくるから。“断捨離”して前向きになって自分を変えていこうって』」
こうして、本書の後半戦で、いよいよなとみさんの「断捨離」が本格的にスタートする。
不要な物を手放し“妖怪”を成仏させる
「仕事場、洋服、キッチン周りと、小さな枠を決めて、取り組んでみると、どんどん捨て方がわかっていくんですよ。
時折現れる妖怪たちに張り手を食らわせながら…。といっても妖怪はもともと自分なんですけどね(笑い)。この本のために、可愛い妖怪を描いて彼らを成仏させたいと思って。
『断捨離』は自分と向き合う作業。自分の周りを幸せなもので満たしていこうと決めました。やり始めたら、これは“自分を大切にする”という行為だと腑に落ちたんです」
挫折を繰り返しながらも『断捨離』を通して自分なりの幸せを見つけたなとみさんの『コミックエッセイ 1ヵ月でいらないモノ8割捨てられた! 私の断捨離』。親の介護で心が疲れたとき、目の前のことに追われているときにおすすめの1冊だ。
教えてくれた人
なとみみわさん・イラストレーター
義母の介護経験を綴った『ばあさんとの愛しき日々』(イースト・プレス)、『毎日があっけらかん―高齢になった母の気持ちと行動が納得できる心得帖。』(つちや書店)など著書のほか、女性誌やウェブメディアで活躍中。やましたひでこさん監修の『コミックエッセイ 1ヵ月でいらないモノ8割捨てられた! 私の断捨離』(講談社)で人生初の「断捨離」に挑戦。ブログ「あっけらかん」http://akkerakan.blog.jp/ インスタグラム @miwasowmen
撮影/北原千恵美 構成・文/介護ポストセブン編集部
※「断捨離(R)」はやましたひでこさんの商標登録です。