悲報!介護保険制度見直しで介護費負担が2倍・3倍に増えるのはこんな人【FP解説】
令和3年8月から高額介護サービス費の上限額が大幅に引き上げられた。世帯の収入が高いほど介護費用の負担が増え、中には2倍、3倍の負担を強いられる人も…。どんな人が、いくらくらい負担増となるのか。ファイナンシャルプランナーの大堀貴子さんに解説いただいた。
制度見直しで高額介護サービス費がどう変わる?
高額介護サービス費とは、介護保険サービス費用の自己負担額が一定額以上になると、上限額を超えた分が還付される制度だ。
令和3年8月から介護保険制度の見直しにより、高額介護サービス費の上限額が引き上げられた。これにより、該当する世帯は介護費用の負担が増えることになる。
高額介護サービス費は、所得に応じて上限額が設定されているため、所得が高ければそれに応じた自己負担額を支払う。これまでは、どんなに所得が高くても負担額の上限は月額4万4400円だったが、条件により上限額が大幅アップ。
さらに、この改正では、介護施設入所者・ショートステイ利用者の「食費・居住費」についての見直しも行われた。
どんな人が負担増となるのか、以下で具体的に見ていこう。
※参考/厚生労働省「【お知らせ】令和3年8月からの介護保険制度の見直しについて」「01 介護保険施設における食費及び高額介護サービス費の負担限度額が変わります。(周知用ポスター)」。
高額介護サービス費の自己負担上限額は年々上昇
高額介護サービス費の自己負担上限額は、年々引き上げられている。上限額が上がる=自己負担額が増え、介護にかかる費用が上がるというわけだ。
平成29年8月の改正で、上限額は月額3万7200円(世帯を共にする人が市区町村税を課税されている場合)だったが、これが4万4400円に引き上げられた。
ただし、軽減策として世帯全員が65才以上で、介護サービス費用の自己負担割合が1割の世帯は、年間の上限額が44万6400円で据え置きとなっていた。しかし、これは3年間の緩和措置だったため、令和2年8月からは月の負担上限額は4万4000円(年間52万8000円)となった。
高所得者は大幅な負担増 上限額は2倍以上へ
これまで高額介護サービス費は、どれだけ年収が高くても月額上限額は4万4400円だった。しかし、今回の見直しで、現役並みに働いている65才以上の人が世帯にいる場合、上限額が大幅に引き上げられた。新設された条件は、ふたつ。
年収が約770万円以上は月額上限額が9万3000円に、年収約1100万円以上の場合は、上限額14万100円に引き上がった。
これまでは4万4000円の負担で済んでいたが、該当する人は自己負担額が2倍、3倍に増えるわけだ。所得が高い人がいる世帯のほか、不動産所得・事業所得がある場合は大きな負担増を強いられることになる。
低所得者向け「食費」の助成は自己負担額値上げへ
高額介護サービス費に加え、今回の改正で見直されたのが、介護施設に入所またはショートステイ時にかかる「食費・居住費」だ。
「食費・居住費」については、低所得者向けの助成制度がある。生活保護受給者や市区町村税が非課税など、以下のような一定の条件を満たす場合に助成が受けられるものだが、今回の制度見直しにより、居住費に変更はないが食費の自己負担額が値上げされた。「食費・居住費」助成制度の要件
この「食費・居住費」の助成制度には、金融資産の条件もある。
これまでは、金融資産が単身1000万円以下、夫婦2000万円以下の世帯は、助成制度により軽減を受けられたが、今回の改正により、65才以上で年金収入が120万円を超える世帯の場合、単身500万円以下、夫婦1500万円と金融資産の金額が引き下げられ、軽減を受けられる条件が厳しくなった。
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少子高齢化が進む中、介護保険料の値上げや高額介護サービス費の自己負担額の引き上げは続くことが予想される。
今後は介護保険制度にどっぷり頼れる時代ではなくなるかもしれない。国の制度はあくまでも補助的なものと考え、10年、20年後の介護に備え、貯蓄や介護保険など自分で備えておく必要がありそうだ。
文/大堀貴子さん
ファイナンシャルプランナー おおほりFP事務所代表。夫の海外赴任を機に大手証券会社を退職し、タイで2児を出産。帰国後3人目を出産し、現在ファイナンシャルプランナーとして活動。子育てや暮らし、介護などお金の悩みをテーマに多くのメディアで執筆している。