介護業界で働くと20万円もらえる!? 新制度「就職支援金」返済免除される条件を解説
介護業界に転職する人に支援金が支給される新制度がスタート。介護業界で初めて働く人向けの「就職支援金」として20万円が支援されるという。返済免除の条件は?誰でも支援される? 新制度についてファイナンシャルプランナーの大堀貴子さんに解説いただいた。
介護福祉業界で働きたい人を支援する新制度
「介護の仕事に興味がある」「介護現場で働いてみたい」「いまは休んでいるけど介護の仕事に復職したい」。そんな人に注目なのが新たに厚生労働省による「介護職就職支援貸付事業」だ。
これは、介護・福祉分野に就職することで支援金を受け取れるもの。未経験者向けの「就職支援金」と経験者向けの「再就職準備金貸」がある。それぞれ内容や条件を見ていこう。
1.未経験者には20万円の「就職支援金」
ほかの業種から介護業界に就職すると、上限20万円の貸付を無利子で受けられる。そのまま介護職として2年間働き続ければ、20万円の返済が免除される。
【条件】
・他業種から就職する人…介護未経験者、無資格者、無職などであったこと。
・一定の研修を修了している人…公的職業訓練機関における「介護職員初任者研修」等を終了していること。
・介護職として2年間継続して働くこと
2.職経験者には40万円「再就職準備金」
介護職経験者でしばらく介護職を離れている人には、「再就職準備金」として上限40万円の貸付を無利子で受けられる。上記と同様で、2年間継続して介護職に従事していれば返済が免除される。
【条件】
・介護職での経験は勤務経験1年以上ある人。
・介護福祉士の有資格者、実務者研修または介護職員初任者研修を修了していることが必要(旧介護職員基礎研修、1級課程、2級課程でも可)。
・所定の方法で届出や再就職準備金利用計画書を提出すること。
誰でも対象になる?支援金の使い方は?
「就職支援金」「再就職準備金貸」は、介護職に就職するための費用が推奨されているが、詳細を報告する義務はないため、使い方は本人次第となる。
上記の支援金は、いずれも都道府県の福祉協議会人材センターから申し込みを行う。
また、具体的な勤務形態については、とくに明示されていない。各福祉協議会ごとに条件が異なるが、正社員や非常勤、パートにかかわらず一定時間以上働く必要がありそうだ。
※参考/厚生労働省「介護職として再就職をお考えの方、初めて働くことをお考えの方へ(再就職準備金、就職支援金のご案内)」
支援金に必要な「介護職員初任者研修」とは?
「介護職員初任者研修」(以下「初任者研修」)とは、介護職として働くための入門的な資格のこと(旧ホームヘルパー2級)。都道府県が指定する養成機関で受講する。
介護職の知識やスキルを学ぶ講義と130時間の実習が必要で、最後に筆記試験による修了評価が行われる。
また、「初任者研修」の上位資格である「介護福祉士実務者研修」(以下「実務者研修」)を受講することでも、支援金の条件を満たすことができる。しかし、研修時間は450時間と「初任者研修」の約3倍かかることになる。
ただし、「実務者研修」を受けると、実務経験がなくても、訪問介護現場などで働ける「サービス提供責任者」になることができ、国家資格である「介護福祉士」の受験資格も得られる。
「実務者研修」は、130時間の講義を通学で受けるほかに、一部レポート提出などの自宅学習をし、実習については通学するという通信講座もあるが、実際に2~3か月程度はかかるとされる。
支援金の給付に必要な資格を無料で受けるには?
「初任者研修」にかかる費用は、通常約2~5万円程度かかるが、これを無料で受講する方法がある。
東京都内で介護の仕事をする場合
東京都内での就労を予定している場合は、東京都福祉保健局が実施している「介護職員資格取得支援事業」により、「初任者研修」を令和4年2月28日まで無料で受けられる。
※参考/東京都福祉保健局「無料で介護の資格をとろう」
「教育訓練給付制度」を利用する
「初任者研修」「実務者研修」の受講費用は、会社員(会社員等)で、雇用保険に加入している場合は、「教育訓練給付制度」を使えば、ハローワークで給付が受けられる。
なお、雇用保険に加入しておらず、「教育訓練給付」を受けられない場合は、「求職者支援制度」の「職業訓練受講給付金」で受講費を無料にするという手もあるが、世帯収入や資産状況など、条件が厳しいので給付の対象になるかは、最寄りのハローワークに確認を。
※参考/厚生労働省「教育訓練給付制度」「求職者支援制度のご案内」
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介護現場への転職を考えているなら、お得な支援制度を活用して無料で資格を取得し、新制度でさらに20万円の支援を受けるのがおすすめだ。
文/大堀貴子さん
ファイナンシャルプランナー おおほりFP事務所代表。夫の海外赴任を機に大手証券会社を退職し、タイで2児を出産。帰国後3人目を出産し、現在ファイナンシャルプランナーとして活動。子育てや暮らし、介護などお金の悩みをテーマに多くのメディアで執筆している。
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