猫が母になつきません 第242話「たびする」
母の高校時代の同級生4人での旅行ですから全員80代で、旅行にいくはずだった去年の春といえば最初の緊急事態宣言がでたとき。二泊三日の短い旅行とはいえ、中止は当然です。手書きの旅のしおりにはたくさんの予定が詰め込まれていて、高齢者にはきついのでは?と思うくらい広い範囲を移動することになっていました。母にまかせるといつもそうなのです。大張り切りで若くてもこれはキツイというような予定を立ててくる。しおりに書いてあるメンバーの名前はすべて下の名前に「ちゃん」付けで、気分は完全に女子高生。旅のわくわくは80代になっても変わらない。本当に楽しみにしていたのがしおりから伝わってきました。「みんなで集まれるのは最後かも」という母の言葉を去年は受け流していましたが、この長い一年を過ごしてみて高齢者の一年というのは若い時の一年とは違うのだというあたりまえのことをあらためて実感しました。この旅にはタイトルが付いていました…「八十路の再会」。再会の日のはじける笑顔が早く見られますように。
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第190話_ さいご
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。