ひとりで最期まで自宅で快適に暮らすための21のルール【役立ち記事再配信】
ひとり暮らしのシニアが増え、その多くは”自宅で最期を迎えたい”と考えている。居心地のいい居間に、慣れ親しんだベッドの寝心地…。この心地よい環境で一生暮らすためには、相応の準備が必要になる。
元気で時間のあるうちに始めるべき「一生楽しいわが家で暮らす」最強メソッドを専門家に取材した。
【目次】
- 最期はひとりになるのが当たり前になる
- ひとりで最期まで自宅で暮らす21のルール
- 1.介護保険制度を賢く使う
- 2.気の合うケアマネジャーを見つける
- 3.元気なうちに地域包括支援センターに行く
- 4.信頼できる人を任意後見人を決めておく
- 5.寝室とトイレの距離を最短にしておく
- 6.ドアを引き戸に替えておく
- 7.ドアノブはレバー式に
- 8.家電はコードレスに
- 9.生活拠点を1階に移しておく
- 10.吹き抜けに改築するのは厳禁
- 11.ものを捨てるルールを決めておく
- 12.ビタミンD豊富な食事を心がける
- 13.食事は”しっかり噛んで”摂る
- 14.ストレッチなど軽い運動を心がける
- 15.シャワーは座って浴びてカビ予防
- 16.入浴後の水滴取りで掃除不要に
- 17.トイレのたびにブラッシングを
- 18.知的好奇心を持って行動する
- 19.趣味で社会とつながっておく
- 20.毎週決まった喫茶店に通う
- 21.入院セットをまとめておく
- ひとり暮らしで知っておきたい 介護保険サービス11選
最期はひとりになるのが当たり前になる
ひとり暮らしのシニア世代が増えている。内閣府の調査によれば、65才以上でひとり暮らしをしている人は、1980年時点においては女性約69万人、男性約19万人だったものが、2015年には女性約400万人、男性約192万人にまで増加し、2025年には女性約471万人、男性約229万人にまでふくらむ試算だ。女性が多いのは、配偶者との死別が大きな理由だとされている。
自身も9年前、まだ42才だった夫を突然失う経験をしたシニア生活文化研究所代表理事の小谷みどりさんが言う。
「今後は、最期はひとりになるのが当たり前の社会になる。どんな医療を受けて、どう人生を終えたいかなどを、元気なうちにしっかり考えておくべきです」
7割の人が「人生の最終段階を過ごしたのは自宅」と答えたアンケート
2014年に厚生労働省が公表したアンケート結果によると、
「末期がんであるが、食事はよく摂れ、痛みもなく、意識や判断力は健康なときと同様の場合」の人に人生の最終段階を過ごしたい場所を尋ねると、7割以上の人が「在宅」と答えている。
たしかに、入院すれば手厚い医療が受けられる半面、病院は医療機器に囲まれた無機質な空間。しかも他人と一緒の大部屋で過ごすことになる場合が大多数だろう。そんな医療機関ではなく「住み慣れた自宅で天寿を全うしたい」という希望は誰しも持つ。
だが、厚労省の「人口動態統計」(2016年)によれば在宅死を実現できているのはわずか13%。現実には8割近い人が病院で亡くなっているのだ。
ひとりで最期まで自宅で暮らす21のルール
知識を得てしっかり準備をしておけば、家で快適に寿命を全うすることも不可能ではない。今日から実践できるルールを紹介する。
1.介護保険制度を賢く使う
食事も光熱費もひとりでまかなっていく中、何より温存したいのはお金。何才まで生きるかわからないだけに、出費は最小限にしたい。
そもそも介護にはどのくらいのお金がかかるのだろう。「生命保険文化センター」の調査によれば、介護期間の平均とされる5年間で考えると、施設の場合708万円かかるが、在宅ならば345万円ですむという結果になっている。施設よりも在宅の方が安価に抑えることができるのだ。
介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんはこうアドバイスする。
「病気や障害によって日常生活に支障が出るのであれば、費用を抑えるため介護保険制度を賢く使ってほしい。その際に重要なのは、要介護認定の要介護度。市区町村の担当者による聞き取り調査や、主治医の意見書をもとに認定が行われ、重度だと認定されるほど、より手厚い支援が受けられます」
介護保険は要支援1~2、要介護1~5の7段階に分かれ、重度であると認定されれば介護保険で使える介護サービスの上限が上がる。
「『まだこんなに元気なのに』と介護認定を嫌がるかたもいますが、福祉用具のレンタルや購入に補助金が出ますから積極的に利用したい。介護用品は意外と価格が高く、たとえばお風呂でも滑らない介護用の椅子は2万円程度。介護認定を受けていれば9割引きの約2000円で買えます。そのほか、ヘルパーが自宅に訪問して入浴や食事などの生活援助を行う訪問介護制度や、20万円を上限として最大9割のリフォーム代が返ってくる制度もあります」(太田さん)
2.気の合うケアマネジャーを見つける
満足のいくサポートを受けるためにキーとなるのはケアプランを立案するケアマネジャーだ。介護評論家の佐藤恒伯さんはこんな指摘をする。
「何よりも重要なのは、ケアマネジャーさんとの相性です。自分と合う人かどうかを見分けるポイントは、“愚痴を言っても親身になって聞いてくれるか”。
いい悪いの話ではなく、フィーリングの話なので、合わなければ各市区町村に設置された、介護や医療などに関するマネジメントを総合的に行う地域包括支援センターに告げて変えてもらいましょう。変更できないと思い込んでいる人も多いですがそんなことはない。ストレスが減ります」(佐藤さん)
逆にいえば、気の合うケアマネジャーに的確なプランを作成してもらえば、介護度が増してもひとり暮らしが継続可能だ。実際に、要介護度4の独居女性が、1日4回もの「見守り」に訪れる巡回サービスのおかげで在宅で過ごすことができたという例もある。
3.元気なうちに地域包括支援センターに行く
「もし要介護認定を受けていなかったとしても、『地域包括支援センター』に相談すれば、リハビリやヘルパーさんを頼むことができる場合もある。料理ができない状況であれば弁当の配達をしてくれる地域もあります。自治体によって提供サービスが異なるため、元気なうちに足を運び、何が受けられるか確認してください」(太田さん)
認知症などの症状が表れ、意思疎通が図れなくなったときの法的手続きや、医療に関する選択を託せる人を決めておくのも、最期を見据えると重要になる。
4.信頼できる人を任意後見人を決めておく
「本人の判断力が低下したときに、財産や身の回りのことを代わって決定する人を決める『任意後見制度』があります。
認知症などになってから法定後見人をつける場合は裁判所が選定するため、赤の他人の弁護士などの専門職が選ばれやすい傾向があります。『認知症になったら自宅を売って施設に入る』などと決めているのなら、事前に身近な人の中で信頼できる人を任意後見人に選定して契約しておけば、希望をかなえることができます」(太田さん)
意識不明時に本人が望まぬ延命措置が行われるのは、不幸としか言いようがない。
5.寝室とトイレの距離を最短にしておく
自宅を終の棲家と決めたら、過ごしやすい環境づくりが大事。健康なうちに暮らしやすい家にシフトしておきたい。高齢者住環境研究所代表の溝口恵二郎さんが気をつけるべきポイントを解説する。
「まず、寝室とトイレの距離は最短にしておくこと。寝室の部屋を移すか、押し入れをトイレにリフォームしたり、増築するなどの方法がある。将来、歩けなくなっても、トイレには毎日必ず行くため、なるべく楽に移動できるようにしておきましょう」(溝口さん)
6.ドアを引き戸に替えておく
健康なうちには思いもよらないリフォームが、あとから効力を発揮する場合もある。
「ドアは体力がなくなっても開閉しやすい引き戸に替えておくといいでしょう」(溝口さん)
7.ドアノブはレバー式に
さらに、ドアノブはレバー式にておくのがいいという。
「リウマチなどにより手がしびれたり、力が弱くなると回すタイプのドアノブはうまく回せなくなるからです」(溝口さん)
8.家電はコードレスに
「家電を買うならばコードレスがおすすめ。移動が楽になりますし、電源コードに足をとられて大腿骨骨折からの寝たきり、という最悪のパターンも避けられる」(溝口さん)
9.生活拠点を1階に移しておく
「手すりをやたらとつけておく人もいますが、いざ使うときには腰が曲がっていて高さが合わない場合も少なくない。2階建て住居の場合、生活拠点を1階に移すことはしておくべきですね」(溝口さん)
10.吹き抜けに改築するのは厳禁
自宅のリフォームや回収もやりすぎは禁物だという。
「流行に乗せられて吹き抜けに改築してしまうのは考えもの。エアコンが効きにくく、温度調節がしづらくなる。特に冬は暖かい空気が上にたまり、冷えます」(溝口さん)
住まいのリフォームに関しては、素人考えは禁物のようだ。だが、私たち自身が取り組める課題もある。40年以上のひとり暮らし歴を持つ生活研究家の阿部絢子さんは、こんなルールを実践している。
11.ものを捨てるルールを決めておく
「ひとり暮らしで年齢を重ねると徐々にだらしなくなってしまいやすい。だからものもたまってしまう。決断力がないといつまでたっても片づかない」。そこで阿部さんは、5つのルールを決めているという。
【1】ここ2年間使っていないもの
【2】デザインや機能が古くなったもの
【3】修理するにはお金がかかるもの
【4】存在すら忘れていたもの
【5】物語がない思い出の品
「5つのチェック項目を決めていて、2つ以上該当するものは即、捨てることにしています」(阿部さん)
あの世にはものを持っていけない。最期まで暮らしを環境に合わせて変えられるよう、身軽になっておくべきだろう。
12.ビタミンD豊富な食事を心がける
高齢になっても自宅で暮らすためには健康な体の維持が欠かせない。食事もそのための重要な柱だ。
「飽食の時代といわれますが政府の調査によると、ひとり暮らしになった高齢女性に起きる大きな問題は栄養失調だと指摘されています。家族がいれば張り切ってバランスのいい献立を考えていた人も、ひとりになると毎日同じものを食べたり、好きなだけ食べてしまうなどの傾向があるようです。栄養バランスを考え、なるべく自炊してほしいですね」(小谷さん)
秋葉原駅クリニックの医師、佐々木欧さんは「ポイントはビタミンDの摂取」だと話す。
「きのこ類や魚類に多く含まれるビタミンDは、丈夫な骨を維持するのに必要な栄養素。高齢者を骨折から寝たきりへと向かわせる“主犯”の骨粗しょう症を防いでくれる。ほかにも、たんぱく質や、繊維質の食べ物も重要」(佐々木さん)
13.食事は”しっかり噛んで”摂る
咀嚼(そしゃく)も重要ですからサプリメントに頼るより、野菜や肉などバランスのよい食事をしっかり噛(か)んで摂ることを意識してほしい」(佐々木さん)
14.ストレッチなど軽い運動を心がける
ビタミンD不足とともに、骨粗しょう症の大きな原因は運動不足によって骨が弱くなること。運動にも積極的に取り組みたい。
「ストレッチや散歩などの緩やかな運動がおすすめです。15~30分程度で充分なので少しずつ毎日するといいでしょう。翌日に疲れを持ち越していたらやりすぎだと考え、あくまで無理のない範囲で行いましょう」(佐々木さん)
15.シャワーは座って浴びてカビ予防
肩肘張らずとも、家事だけで適度な運動になっている場合もある。その家事も阿部さんは合理化できると断言する。
「年を重ねたひとり暮らしはだんだん気力も体力もなくなっていくので、省けることは省く。たとえばシャワーも立って浴びると飛沫があちこち飛んでカビの原因になるので座って浴びる」(阿部さん)
16.入浴後の水滴取りで掃除不要に
「入浴後はスクイージーで水滴をとることを習慣にしてしまえば風呂掃除は不要になります」(阿部さん)
17.トイレのたびにブラッシングを
「トイレも用を足したら毎回ブラッシングすることで大掃除はいらなくなります」(阿部さん)
18.知的好奇心を持って行動する
頭の健康も大切だ。阿部さんが続ける。「何気ない日常生活の中でも、知的好奇心を持って行動することが大切です。たとえば、テレビもただボーッと見ているのではなく、歴史ものを見て『この遺跡やお城に行ってみたい、どこにあるのだろう』と頭を働かせることが大事なのではないでしょうか」(阿部さん)
19.趣味で社会とつながっておく
「認知機能を保つためには、元気なうちにカルチャーセンターや地域の活動など、どんなものでもいいので積極的に参加し、趣味の開拓を兼ねて社会とのつながりを増やしておくことはおすすめです」(佐々木さん)
20.毎週決まった喫茶店に通う
配偶者を失った人たちが集う「没イチの会」を主宰する小谷さんのヒントにも耳を傾けたい。
「夫に先立たれた後のひとり暮らしでも、趣味などを通じた友達をつくるといい。加えて“毎週水曜日はこの喫茶店でモーニングを食べる”など、決まった行動をとると、そこで緩やかなコミュニティーができ、気にかけてもらいやすくなります」(小谷さん)
21.入院セットをまとめておく
急遽入院することになった際の下着などは、事前に『入院セット』としてまとめておくこと。親戚や友人などの負担を減らせます。万が一に備えた工夫をしておけば、より安心感が得られますよね」秋葉原駅クリニックの医師、佐々木欧さん
平均寿命は伸びたが、自活できる「健康寿命」はそれの約10年短い。知恵を駆使して「ピンピンコロリ」を目指したい。