腸内環境を良好にする食物繊維「レジスタントスターチ」 冷めたごはんに多く含まれるが「味気ない…」という人向けの食べ方を管理栄養士が解説
腸活において知っておきたいのが「ハイパー食物繊維」とも呼ばれる「レジスタントスターチ」だ。レジスタントスターチは不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の両方を含んでおり、腸内環境を良好にするのに最適な成分といえる。『9割の人が間違っている炭水化物の摂り方』(アスコム)を上梓した、管理栄養士の笠岡誠一さんに、レジスタントスターチとおすすめの摂取方法について詳しく教えてもらった。
教えてくれた人
管理栄養士・笠岡誠一さん
かさおか・せいいち。東京農業大学大学院卒業。山之内製薬(現アステラス製薬)を経て、2000年より文教大学専任講師を務め、2014年より現職。専門分野は栄養生理学、食品科学で、「レジスタントスターチ」に早くから注目し、腸内環境を改善する”腸活”を多方面で世に広める。著書に『炭水化物は冷まして食べなさい。』(アスコム)、『9割の人が間違っている炭水化物の摂り方』(同)など。
炭水化物は糖質と2種類の食物繊維で構成される
炭水化物は糖質と食物繊維で構成されており、さらに食物繊維には水溶性と不溶性の2種類がある。不溶性食物繊維は便のかさを増やし、排便に必要な腸の収縮活動(ぜん動運動)を促進する役割があるほか、腸内細菌がエサを食べられるように大腸にとどめるための「家」として、腸内細菌が増えるのを手助けする役割もある。
一方、水溶性食物繊維には腸内細菌のエサになる役割があるほか、小腸での栄養素の吸収の速度をゆるやかにし、食後の血糖値の上昇を抑えたり、コレステロールを吸着し対外に排出することで血中のコレステロール値を低下させたりする効果がある。
「どちらの食物繊維も腸内環境を整える上ではなくてはならないものです」(笠岡さん・以下同)
両方の食物繊維の機能を兼ね備えた「レジスタントスターチ」
どちらの食物繊維も重要だが、この両方の食物繊維の機能を兼ね備えた成分がある。それが「レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)」だ。レジスタントスターチを摂取することで、非常に効率よく腸内環境を良好にしていくことができる。
「レジスタントスターチの存在が発見されたのは、1980年代のこと。それまでは、その存在に誰も気づかずにいたのです。毎日食べていたのにもかかわらず、その効能を知らずにきたのです。それでも研究者たちのたゆみない努力と研究技術の進歩により、レジスタントスターチには腸内環境を良好にする大切な役割があることがわかってきたのです」
レジスタントスターチは直腸も元気に
さらに、レジスタントスターチは、腸内細菌を増やしづらい直腸を元気にすることにも長けている。本来、直腸にもビフィズス菌などの善玉菌がいるため、エサとなる食物繊維を届けたいものだが、食物繊維の多くは大腸と肛門をつなぐ直腸を素通りしてしまうため、直腸に腸内細菌を増やすことは容易ではない。
しかし、レジスタントスターチは、大腸の入り口付近から善玉菌のエサとなるブドウ糖を少しずつ与え続けて、人間の体に良い影響を与える短鎖脂肪酸を生み出し、その後も形を変え、有害物質を回収しながら善玉菌や短鎖脂肪酸を直腸まで運んでくれるのだ。
「つまり、レジスタントスターチは、大腸の一番肛門側にある『直腸』までしっかり元気にしてくれる『ハイパー食物繊維』なのです」
レジスタントスターチは「冷ます」と摂取しやすい
レジスタントスターチには「RS1」、「RS2」、「RS3」の3種類があるが、最も摂取しやすいのはRS3だ。
「RS3は、もともと消化されやすい普通のでんぷんが、加熱調理後に冷めることによって性質が変わり、消化されにくくなったものです。つまり、具体的には、冷ましたご飯、冷製パスタ、ポテトサラダなどにRS3を多く含んでいます」
「冷やごはん」は手軽な摂取法
RS3の摂取方法としておすすめなのが、「冷やごはん」だ。冷やごはんは味気ない、と感じる人もいるかもしれないが、おにぎりやお弁当のごはんも冷やごはんだ。
「炊きたてのごはんのレジスタントスターチを100とすると、常温で1時間冷ますだけで、157程度まで含有量がアップするというから驚きです」
レンジで温めたごはんでもレジスタントスターチは増えている
それでも温かいごはんを食べたい、と思う人は、レンジで温めた冷やごはんや冷凍ごはんがおすすめだ。データによると、炊きたて、冷蔵保存後、冷凍保存後のお米のレジスタントスターチ量は、炊きたてが100だとすると、冷蔵保存後は161程度、冷凍保存後は124程度で、レンジで温めるとレジスタントスターチはやや減少するが、それでも炊きたてごはんよりは多く含まれているそうだ。
「おにぎりにして1時間置いてから食べるのが理想的ということになりますが、温かいごはんが食べたいという日もあるでしょう。そんな日は、一度冷ましてからレンジで温め直すといいでしょう。それでも、炊きたてごはんより恵みのごはんということになるでしょう」
まずは1食の置き換えから
いくら体に良いと言えども、突然食習慣を変えて、さらにそれを継続するのは困難だ。そのため、笠岡さんはまずは1日1食を「レジスタントスターチメニュー」に変えることをすすめている。特に継続しやすいのは昼食の置き換えだ。
昼食がレジスタントスターチ食になると、血糖値の急上昇が防げるために、午後の授業や業務中にだるさや眠気を覚えにくくなるというメリットもある。
「外食ですとなかなか思い通りにならないので、自前のお弁当が理想的。朝、こしらえたものでも、お昼にはお米のレジスタントスターチが増えているので、願ったりかなったりですよね。それが面倒な方は、コンビニのお弁当を温めないだけでもレジスタントスターチ食に早変わりです」
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