がん予防はミトコンドリアがカギ|活性化させる食材・食事とは?レシピも紹介
大昔から人類は不老長寿を夢見て、その方法を探し求めてきた。この長年の夢を実現すべく、多くの科学者たちが食品のアンチエイジング機能に注目。
なかでも特に重要な研究課題に位置付けられてきたのが、人間の細胞内に存在する小器官“ミトコンドリア”と“食”との関係だ。長年科学の視点で食を追求してきた医学博士の佐藤拓己さんも、「がんやさまざまな病気を予防するためには、ミトコンドリアを活性化させる食生活が重要」と言う。では、私たちはどんな食生活をおくればいいのか、佐藤さんに聞いた。
10年前に乳がんを患い、手術、抗がん剤治療、ホルモン治療等を行った本誌記者(59才・その後、再発なし)が、各種治療とともに真剣に取り組んだのが「食生活の見直し」。食事、運動、睡眠など日々の生活が、がん予防にいかに大切か、自らの体験を踏まえつつレポートします。
細胞の生死を司るミトコンドリアの活性化が病気予防のカギ
──ミトコンドリアとはどのような器官なのですか?
佐藤 ミトコンドリアは人間の細胞の生死を司る細胞内小器官です。元は独立したバクテリアの一種で、酸素を使って効率よくエネルギーを作り出すことができる生き物でした。そのバクテリアが約20億年前、細胞に取り込まれ、いまのミトコンドリアになったと考えられています。
細胞で消費されるエネルギーの大部分(60~80%)がミトコンドリアで生産されるので、ミトコンドリアが活発に働く状態であれば、細胞も生き生きと活動しアンチエイジング効果が期待できるのです。
──ミトコンドリアは人間の生命を左右する重要な器官というわけですね?
佐藤 その通りです。例えば、がん細胞を抑制する効果も期待されています。健康な細胞はミトコンドリアを最大限に使ってエネルギーを生産しています。ところが、がん細胞は酸素を嫌うため、酸素をエネルギーとするミトコンドリアをほとんど使いません。代わりに燃費の悪いブドウ糖を大量に食べて増殖する性質があります。
がん細胞は、少しの活性酸素で不安定な状態におかれ、死にやすくなることが知られています。そのことから、がんの餌となるブドウ糖の摂りすぎに注意して、ミトコンドリアを活性化させることで、がんやさまざまな病気の予防につながるわけです。
食事でミトコンドリアを覚醒する
──ミトコンドリアを活性化させるためにはどうしたらよいのですか?
佐藤 まずは、ミトコンドリアに直接エネルギーのもととなる物質(食材)を送り込んで覚醒させることが重要です。覚醒させる食材とは「有機酸」と呼ばれる一群の化合物。例えば、レモンやライム、酢などに多く含まれる「クエン酸」。リンゴや梅干しなどに含まれる「リンゴ酸」。アセロラやキウイなどの果物や、赤ピーマン、パセリ、ブロッコリーなどの野菜類に含まれる「アスコルビン酸(ビタミンC)」。ぬか漬けに含まれる「酪酸」などです。
日頃からこれらの食材を積極的に摂取することで、ミトコンドリアが活性化します。また、ミトコンドリアの働きを阻害するカロリー過剰や炎症などを避けることも大切です。〝有機酸を恒常的に摂取し、ブドウ糖をある程度制限し、運動をしてミトコンドリアを活性化させる”。がんになりにくい食生活というのは、ミトコンドリアを存分に使う食生活。ミトコンドリアと共に生きることが、長生きの秘訣であると私は考えています。
ミトコンドリアを活性化させる食品
クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸(ビタミンC)などの有機酸は、老化の原因となる活性酸素から細胞内のミトコンドリアを保護する役割を持つ。これら有機酸を含む果実や青物野菜をバランスよく食事に取り入れることが、アンチエイジングの鍵となる。
●リンゴ
リンゴ酸、クエン酸などの有機酸を多く含み、胃腸の働きをよくする効果がある。皮には整腸作用を促し便秘を防ぐペクチンが豊富。
●オレンジ
抗酸化力が強いビタミンCやβ-クリプトキサンチン、血管を強くするヘスペリジン、皮膚や粘膜を強化するβ-カロテンを含む。
●メロン
免疫力の増進・維持に効果があるビタミンC・ビタミンB6が豊富。塩分を排泄するカリウムも多く、高血圧予防にも効果がある。
●アセロラ
ビタミンCの含有量が果物の中でも圧倒的に多い。ポリフェノールも豊富で、強い抗酸化作用を発揮し、老化予防や美肌効果も高い。
●キウイ
ビタミンCが100g中に約70mg(みかんの倍の量)と多く、風邪予防や疲労回復などに効果がある。食物繊維も豊富で整腸作用もある。
●レモン
クエン酸、ビタミンCの含有量が多く、免疫力向上、成人病・老化予防、疲労回復、ストレス解消などさまざまな効果がある。
●ライム
クエン酸、ビタミンC、ポリフェノールが豊富。血流をよくし、心筋梗塞や脳梗塞などを予防。目の老化を防止し、美肌効果も高い。
●赤ピーマン
完熟した赤ピーマンは緑ピーマンに比べビタミンA、E、B6、Cの含有量が約2倍多い。特にビタミンCは全野菜の中で最も多い。
●パセリ
ビタミンC、K、E、B1、B2、β-カロテン、カリウム、カルシウム、鉄分などをバランスよく含む香草。生活習慣病の予防に効果的。
●ブロッコリー
ビタミンCの含有量がレモンよりも多く、疲労回復、風邪予防、がん予防、老化防止に効果がある。食物繊維も豊富で整腸作用も高い。
●ケール
ビタミンC、β-カロテンやルテイン、カルシウム、食物繊維などを豊富に含み、老化防止や免疫力を高める効果などがある。
●モロヘイヤ
ビタミンA、C、Eの含有量は野菜の中でもトップクラス。細胞や血管の老化を防ぎ免疫力を高め、肌のシミやしわ、乾燥を防ぐ。
●かぼちゃ
抗酸化ビタミンといわれるビタミンCとE、β-カロテンが多くアンチエイジング効果が高い。喉や肺など呼吸器系を守る働きもある。
●梅干し
リンゴ酸やクエン酸が豊富に含まれ、消化吸収を助け、腸の働きを活発にして便秘を解消。新陳代謝が活性化され疲労回復効果もある。
→長生できる最強の野菜スープレシピ|抗酸化物質たっぷりでがん予防も