老人性難聴は認知症発症の危険も!脳の認知機能を高める「耳トレ」で対策を
「テレビの音量、上げすぎ!」と、家族に注意されることはないだろうか? これ、耳が老化しているサインだ。
人間は加齢によって耳の機能が低下し、特に高音域が聞き取りにくくなる。
「これは、老人性難聴という耳の老化です。50代以降で発症する人が多いんです」
そう話すのは、工学博士・音育家の小松正史さん。誰にでも起こる老化現象だが、近年は老人性難聴が認知症発症の危険因子の1つといわれている。認知症とまではいかなくても、耳が衰えると会話のキャッチボールがうまくできなくなり、人と話すことが億劫になるケースも増える。
脳の認知機能を高めることが大切
内耳の(かぎゅう)の中には音を感じ取る有毛細胞があり、これが加齢によって衰えると徐々に聞こえが悪くなる。残念ながら、有毛細胞を再生させて老化を止めることはできない。
「しかし、耳で聞いた音を認識するのは脳。それゆえ音を聞く脳の機能を高めれば、聞こえにくさを改善でき、老化を遅くすることが可能です」(小松さん)
木の葉の擦れ合う音や、川や波などの自然の音も、脳の活性化に役立つ。自然の音に耳を傾けながら散歩するのも、耳のアンチエイジングにはおすすめだ。
次の項目にチェックが付いた人は耳が弱っている可能性があるので要注意。
□運動不足だと思う
□ストレスや疲れがたまっている
□1日1時間以上、イヤホンを使っている
□耳鳴りが気になることがある
□1~2mの距離で話していても、相手の声が聴き取りづらいことがある
□会話を聞き返すことが多い
□家族にテレビの音量が大きいと注意される
□人から「声が大きい」と言われる
□人から「会話の反応が鈍い」と言われる
□名前を呼ばれていても気づかないことがある
耳の老化原因
【耳をあまり使っていない】
人間は聞きたくない音を無意識にシャットアウトしてしまうことがあるが、すると脳が音を認知する機能が低下し、聞こえが悪くなる。
【騒音に長時間さらされる】
幹線道路や電車、ヘアドライヤー、掃除機の音、ヘッドホンで音楽を聴くことなど、日常的にさらされている大きな音が耳の老化を加速する。
耳を若返らせる「耳トレ」
耳が若返るトレーニングを小松正史さんに教えてもらいました。
●好きな場所で周囲の音に1分間耳を澄ませ、いちばん近くに感じた音といちばん遠くに感じた音を覚える。室内の場合は窓を開けると遠くの音が聞きやすい。2人以上で行うと、人によって感じ方が違うことがわかり、楽しいトレーニングに。
【ポイント】
「普段は近くの音を聞くことが多いので、遠くの音も意識すると、音の距離感が強く意識されて、音に敏感になります」(小松さん)
●仏壇のりんやトライアングル、ピアノなど、音が持続して鳴る道具を用意。音を鳴らして、音が消える瞬間まで耳を澄まし、音が消えた瞬間に、他にどんな音が聞こえたかを意識する。
【ポイント】
「音が消えた瞬間を強く意識すると、例えば、空調や街の騒音など、今まで気づかなかった音が大きく感じられてきます」(前出・小松さん)
●ゆったりと座り、今までの人生の中でもっとも心に残る音を思い出してみる。一日の終わりや時間のある時に、思い出してみよう。
【ポイント】
「過去の音を強く意識すると、潜在意識の領域にしまい込まれていた音の感覚が蘇ります。音の記憶がきっかけとなり、他の思い出や身体感覚も蘇り、脳と体が活性化します」(小松さん)
●A4サイズ程度の紙を1枚机に置く。音を立てないように紙を裏返す。
【ポイント】
「音を立てないように意識すると、些細な音への意識が高まり、耳が活性化します。同時に体の動作も敏感になるので、体の活性化にもつながります」(小松さん)
●好きな場所で1分間周りの音を聞く。「靴音」「救急車」「話し声」「カラス」など、聞こえてきた音に名前をつけて、紙に書き出す。
【ポイント】
「これまで意識していなかった音が発生していることに気づけます。音に名前をつけると、意識していなかった音の響きと言葉がつながり、脳の活性化にもなりますよ」(小松さん)
※女性セブン2018年3月15日号
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