誤嚥・嚥下障害の原因とリスク チェックリストと自宅でできる誤嚥予防体操【動画】
「最近よくむせる」「飲み込みにくい」。「誤嚥(ごえん)が心配…」。加齢とともに、嚥下(えんげ・飲み込む動作)がしにくくなり、高齢者は誤嚥性肺炎も不安…。そこで誤嚥の原因や症状、対策などを理学療法士が解説。初めの人でも簡単にできる誤嚥を予防するリハビリ動画も掲載。喉を鍛えて健康長寿!
むせる、つまる…誤嚥の原因とは
誤嚥(ごえん)とは、食べ物が本来の食道を通らず別の気管に入ってしまうこと。食べ物を咀嚼して飲み込み、喉を通して消化器官へと送る一連の動作を「嚥下(えんげ)」と呼び、嚥下機能が低下すると誤嚥のほか、さまざまな嚥下障害が起こります」
こう話すのは、理学療法士として多くの患者さんのリハビリを行っている西秀和さんだ。理学療法士として多くの嚥下障害を持つ患者さんのリハビリを行っている西さんに、誤嚥の原因や対策、効果的なトレーニングなどを教えてもらった。
●誤嚥・嚥下障害の原因は?
誤嚥をはじめ、嚥下障害が起こる原因には、以下のようなものがあるという。
・加齢に伴うもの
・脳梗塞など脳血管障害によるもの
・神経筋疾患によるもの など
「加齢に伴い活動量が低下することで運動量が減少し、全身の筋力が落ちます。筋力が低下することで嚥下に利用する、喉の周り(口の中や首)が動かしづらくなり、咀嚼や嚥下に時間がかかったり、むせやすくなったりする人は増えていると感じます」
●嚥下障害の主なリスクとは?
むせる、つまるといった目に見えた症状のほか、嚥下障害がたびたび起こると以下のようなリスクが挙げられる。
・食事の意欲低下→栄養不足
・栄養不足による筋力低下
・筋力低下で喉の位置が下がる
・誤嚥が起こりやすくなる など
「食事の時間が長びき、何度もむせてしまうと、次第に食への意欲が低下してしまい、食事量が減って栄養バランスが崩れてしまうことも。
また、食事量や栄養が低下することで、さらに筋力低下が進み、誤嚥性肺炎を起こすリスクもあります。
喉も舌も筋肉で動かしています。加齢により喉頭の位置自体が下がってしまうため、嚥下のためには、特に喉を引き上げる力が必要になります。
舌の力や動きが弱くなると口の中や食道に入る前に食べ物が残りやすくなって誤嚥を起こし、それが原因で肺に炎症が起こる誤嚥性肺炎につながってしまうのです」
●誤嚥性肺炎は死因の6位
厚生労働省の調査によると、飲み込み(嚥下)機能の低下による誤嚥性肺炎は、死因の中で6位となっている。
1位 悪性新生物(腫瘍)
2位 心疾患(高血圧性を除く)
3位 老衰
4位 脳血管疾患
5位 肺炎
6位 誤嚥性肺炎
7位 不慮の事故
8位 腎 不 全
9位 血管性及び詳細不明の認知症
10位 アルツハイマー病
※令和元年厚生労働省「性別にみた死因順位別死亡数・死亡」より。
最近むせやすい…誤嚥? 症状をチェック
疾患のほか、加齢により徐々に進行する嚥下障害の自覚症状には、下記のようなものがある。普段思い当たることはあるかチェックしてみよう。
□自分の唾液でよくむせる
□飲みこんだどきによくむせる
□飲み込んだ後に声がガラガラしやすくなった
□食後にうがいすると食べ物のカスが出てくる
□常に痰がでる、痰が絡みやすくなった
□声がでにくくなった
□痩せてきた
嚥下障害の自覚症状を詳しく解説すると…
「食べ物を噛んだりすりつぶしたりして喉に送り込むまでの自覚症状としては、口の中に食物が残りやすい、口から食物がこぼれる、噛みづらい、口が渇く、などが挙げられます。
また、食べ物を飲み込むことについての自覚症状には、発熱を繰り返す、咳が出る、むせる、喉に残った感じがする、痰が増える、 声がガラガラになる(湿性嗄声)などが挙げられます。
そして、すべてに共通する症状に、飲み込みづらい、体重が減る、食べない、食べる時間が長くなった、などが挙げられます」
少しでも気になることがある人は、嚥下リハビリを始めてみてほしいと、西さんは続ける。