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健康

【誤嚥性肺炎】はなぜ起こる?危ないチェックリストと予防法

 神奈川県に住む主婦の恵子さん(仮名・58才)はひどくふさぎこんでいる。最近、食事の際にむせるようになり、声も出しにくくなったと感じて耳鼻咽喉科を受診したところ、医師からこんなことを言われたのが原因だ。

「年齢の割に、のどの機能が落ちている。このままだと、さらに年を取った時にのどの衰えが進み、最悪の場合は誤嚥性肺炎を起こしてしまう」

 彼女はつい最近、後期高齢者になって誤嚥性肺炎にかかると、死亡率が高くなるという雑誌記事を読んでいた。しかし、まさか60才手前の自分がかかる可能性があるとは、夢にも思っていなかった。

 恵子さんのように、誤嚥性肺炎という言葉は知っていても、一体、どんな病気なのかよくわからない人も多いと、『肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい』(飛鳥新社)の著者で、耳鼻咽喉科医師の西山耕一郎さんは言う。

「誤嚥とは、食道にいくはずの飲食物や唾液が、誤って気管から肺の方に入ってしまうことをいいます。飲食物や唾液が肺に入ると中で細菌が繁殖し、炎症を起こして肺炎を引き起こすのです」(西山さん・以下同)

のど仏の機能低下が誤嚥を引き起こす

 のどは、喉頭蓋(こうとうがい)といわれる“ふた”を分岐点として、食道と気管に分かれている。

「飲食する時はのど仏が充分に上がり、喉頭蓋が防波堤の役割をして気管に飲食物が入らないようになっています。しかし、のど仏の機能が低下すると、うまくふたが閉じず、隙間から飲食物が気管に入って誤嚥を引き起こすのです」

 肺炎は、日本人死亡原因の第3位で、75才以降の高齢者に多くみられる。おまけに、肺炎の70%以上が誤嚥に関係しているといわれ、特に、免疫力が低下していると炎症も併発しやすく危険度が増す。

「若い人なら、誤嚥しても、激しくせき込むことで、誤って気管や肺に侵入した飲食物を外に出すことができます。ですが、のどの筋肉は40~50代から衰え始め、使わないとどんどんそれに拍車がかかる。そうなると、吐き出す力も低下して、誤嚥したものを外に出せなくなります。病気で体力が落ちている人は、特に注意が必要。最悪の場合は死に至ります」

 のど仏の老化以外にも、声を出さないことで、誤嚥を引き起こしやすくなると言うのは、発声指導を行うヴォイスティーチャーの高牧康さん。

「若い人でも声帯が萎縮している人を見かけます。原因は、声を出す機会が減っていること。最近はLINEやメールでのやりとりが増え、電話などで声を出さない、声帯を使わない人が増えています。声帯は声を出すだけでなく、異物混入を防ぐ弁のような役割もしています。“あー”と声を出して10秒以上続かない人や、声が小さくなったと言われるようになった人は、のどを鍛えてほしいですね」(高牧さん)

のどの筋肉の衰えをチェック

 以下のチェックリストは、西山さんと高牧さんが教えてくれた、注意すべき点をまとめたものだが、これに4つ以上当てはまる人は、声帯やのどの筋肉のトレーニングをすぐに始めた方がいい。

□「あー」と声を出しても10秒以上続かない
□コップ1杯の水が一気にのめない
□猫背であごを突き出した食べ方をする
□以前より声が小さくなったと言われる
□会話をする機会が減った
□以前より食べるのが遅くなった
□大きな錠剤がのみ込みにくい
□食事中によくむせる

「のどの衰えは、鍛えることでもとに戻ります。まずは声を出すこと。そして、今回紹介したのどを動かすトレーニングをすれば、誤嚥を防げるだけでなく、若々しい声も出るようになりますよ」(西山さん)

 普段の生活で気をつけたい4つのポイントは、以下の通り。

1.最初に汁物を食べない

 

「サラサラした水分の多いものは、のどを通過する速度が速いので、誤嚥しやすいのです。のどをゆっくり通過するものから食べ始めましょう。“とろみ”のある八宝菜や卵かけご飯、ひきわり納豆などは、誤嚥を減らすので、積極的に食べましょう」(西山さん)

2.のみ込むときはうなずく

うなずきながらのみ込んでいる女性のイラスト

 上を向いて食べ物をのみ込むとのどにつかえやすくなり、むせてしまう。「誤嚥を防ぐには食べ物をのみ込む瞬間に軽く下を向くこと。のどにたまった食べ物が食道に入りやすくなり、誤嚥を防げます」(西山さん)。

3.おしゃべりをする

女性二人が楽しそうにおしゃべりをしているイラスト

 のどの筋肉を衰えさせないためにも、声を出すことを意識する。「おしゃべりは最適です。友達同士はもちろん、テレビに向かって語りかけるのも◎。スポーツ観戦などで声援を送るのもいいですね。また、メールではなく、電話で話すとのどの筋肉が動いて、のみ込む力もアップします」(高牧さん)。

4.運動をする

ウオーキングをしている女性のイラスト

 誤嚥性肺炎を防ぐには体力づくりが欠かせない。「呼吸機能と免疫力を低下させないためにも全身運動で体力をつけましょう。ウオーキングなどの有酸素運動は血行もよくなる上、呼吸機能や肺活量も上がります。こまめに歩く習慣を身につけて」(西山さん)

簡単のどトレーニング

 のど仏を上下させる運動はのみ込む力を向上させるのに最適。1の嚥下おでこ体操から5の深呼吸までを毎食前に通して行うことで、効率よくのどの筋肉を強化できる。いずれも、のど仏に力が入っていることを意識して行おう。カラオケもトレーニングになる。

【1】嚥下おでこ体操

手のひらの付け根をおでこに当て、頭を押し当てている女性のイラスト

 額に手のひらの付け根「手根部」を当て、おへそをのぞきこむようにして、手根部と額に力を入れて、5秒ほど両方から押し合う(10回)。

【2】あご持ち上げ体操

両手の親指を当て、顔を下に向け、あごで両親指を強く押しているイラスト

 下あごに両手の親指を当て、顔を下に向け、あごで両親指を、両親指であごを5秒強く押し合う(10回)。

【3】のど「イ~」体操

口を思いっきり横に広げ、「イ~」と言っている女性のイラスト

 口を思いっきり横に広げ、「イ~」と5秒声に出して言う。奥歯を食いしばるように力を入れるのがコツだ(10回)。

【4】ごっくん体操

下を向き、ゆっくり唾液をのみ込んでいる女性のイラスト

 下を向き、ゆっくり唾液をのみ込む。この時、唾液ではなく、少量の水を含んでもOK。唾液をのみ込んだら顔を上げ、再び唾液をゆっくりのみ込む(5~6回)。

【5】深呼吸で終了

深呼吸している女性のイラスト

 1~4のトレーニングを終えたら、口からゆっくり息を吐き、吐ききったら、鼻からゆっくり息を吸い込む(5~6回)。

裏声を使ってカラオケトレーニング

マイクを持ってカラオケで歌っている女性のイラスト

 思い切り声が出せるカラオケは、大きな声も出せるので、のど仏の周りを鍛えられ、ストレス解消にもなるのでおすすめだ。「地声と裏声を交互に発すると、のど仏が上がったり、下がったりしていい運動に。特に、裏声が出せる高音の曲がおすすめです」(高牧さん)。

イラスト/ササキサキコ

※女性セブン2018年7月19・26日号

【関連記事】

●死を招く誤嚥性肺炎を防ぐ のみ込む力を鍛えるトレーニング法

●誤嚥性肺炎の原因は口腔機能の衰え!? 命を繋ぐ「口腔ケア」<第1回>

●肺炎を起こす誤嚥、1日600回も危険が。みそ汁やミカンは要注意

コメント

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この記事へのみんなのコメント

  • すみよし

    誤嚥は怖い。。。おじいちゃんが誤嚥で入院した時は驚きました。 カラオケで裏声を出すのが予防になるというのは教えてもらえてとても良かったです! おじいちゃん、カラオケ大好きだし!

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