オンライン帰省した人の声 高齢者がスマホでぶつかる壁とは
コロナ感染拡大を防ぐために、政府は「オンライン帰省」を推奨。高齢の親が住む実家への帰省を控えている人は多いだろう。そこで、アンケート調査をもとに「オンライン帰省」について考察。実際にオンライン帰省できた人、できなかった人の生の声を紹介する。
コロナ渦でオンライン帰省した人の割合は?
緊急事態宣言後に迎えるゴールデンウィーク前に、県をまたいだ移動を伴う帰省を控えるため、政府は「オンライン帰省」を要請した。離れて暮らす高齢の親に孫の顔を見せられない今年は、飲み会から習い事、帰省にまでオンラインが大活躍だ。
今年のゴールデンウィークに帰省する予定だった人を対象にした調査※によると、
「オンライン帰省」した人は、35.9%となり、約4割の人がオンライン帰省を実施。
また、自分の実家との「オンライン帰省」は71.1%の人が「楽しかった」と答えている。
一方で、義理の実家との「オンライン帰省」が「楽しかった」と答えた人は、47.8%にとどまっている。自分の実家と義理の実家では温度差があるようだ。
※【緊急実態調査】「オンライン帰省」って実際どうだったの?(調査/チカクhttps://www.mago-ch.com/)。今年のゴールデンウィーク(4月29日-5月6日)に帰省する予定だった20~40代の男女117名へのインターネット調査。
オンライン帰省って何?必要なものは?
そもそも「オンライン帰省」とは、ビデオ通話などを使って離れて暮らす家族とコミュニケーションするもの。実際に帰省することではなく、実家とオンラインで繋がるという意味の言葉。
「オンライン帰省」に必要なものは、
・スマホやパソコンなどの通信機器
・ビデオ通話ができるソフトやアプリ
・インターネット環境 など
「オンライン帰省」を楽しむには、スマホやPCなどのハードとインターネット通信環境(Wi-Fiなど)のほか、アプリやソフトなどが必要となる。アプリの中でも、LINE(ライン)やzoom(ズーム)などのアプリを使っている人が多いようだ。
また、スマホの機種によっては、ビデオ通話機能を搭載しているタイプもある。
前述の調査から、おおよそ4割の人の親世代が、「オンライン帰省」に必要な機器や環境を有していると考えられる。実際にいま、シニアによるインターネットの利用率は年々上昇傾向にある。
平成30年版 情報通信白書(総務省)※によると、60代は73.9%、70代は46.7%がインターネットを利用している。
また、スマホの保有率は、60代が44.6%、70代が18.8%となっている。いずれも2017年時点の調査なので、さらに普及が進んでいることが見込まれる。
記者の周りでも70代、80代の高齢の親が、ガラケーからスマホに買い替えたという声を最近よく耳にするようになった。
そこで、今年のゴールデンウィークに「オンライン帰省」をしたという人に話を聞いた。
※令和元年版 情報通信白書(総務省)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd232120.html
孫とビデオ通話を楽しむシニアも
「今日は何して遊ぼうか。しりとり? なぞなぞにする?」と、おじいちゃん。
「なぞなぞがいい~!!」と、孫たちが盛り上がっている。
ゴールデンウィークのある日、Mさん(40代会社員)の父親と子供たちが、LINEのビデオ通話で30分ほど「オンライン帰省」を楽しんだ。
毎年ゴールデンウィーク、お盆、お正月と、年に3回は九州の実家に帰省していたが、今年はコロナの影響で帰省を自粛しているため、「オンライン帰省」は今後も続けていくという。
高齢の親がスマホでぶつかる壁
前述のMさんは、「半年ほど前に親がスマホに買い替えたとき、Wi-Fi環境は設定してあげました。LINEのビデオ通話は、受信ボタンを押すだけなので、75歳の父もわりとスムーズに覚えたようでした。
ただ、いまだに自分からビデオ通話をかけることができないのが悩み…。いつもこちらからかけて、子供たちにバトンタッチしています。
ときどき、どこかのボタンを押してしまうのか、ビデオ通話中に突然モノクロ画面になったり…。外出先だと通信料金がかかるとか、Wi-Fiの意味がいまひとつわかっていないようです」
一方、コロナで帰省できなかった関西の実家に住む80代母親に、ビデオ通話を提案してみたというKさん(40代女性、自営業)は、
「家にこもっていてイライラしているようだったので、顔を見て話すと気分も変わるかなと思って、何度かビデオ通話を誘ってみたのですが、髪がぼさぼさだからと、顔が映るのが嫌みたい。
母が持っているシニア向けのスマホには、ビデオ通話機能もついているのですが、機能を説明してもうまく伝わらず…。うちはこのゴールデンウィークはオンライン帰省できませんでした」
このようにスマホを持つシニアの中でも、ビデオ通話などの新たな機能を使えるようになるまでのハードルは高いという人もまだまだ多い。
そんな人たちには、スマホがなくても、テレビを介して「オンライン帰省」できる商品もある。
前述の調査を実施したチカクが開発・販売を手がける『まごチャンネル』は、親の実家のテレビに本体を繋ぐことで、子供や孫たちの映像や写真を送って楽しんでもらえるものだ。
→関連記事を読む:オンライン帰省もできるまごチャンネルとは?
今後、コロナとの共存や新しい生活様式により、「オンライン帰省」はもとより、給付金の申請や確定申告など、さまざまなシーンでオンライン化が広がっていくことが考えられる。これを機に高齢の親とスマホやインターネットの使い方について話をしてみるのはいかがだろうか。
構成・文/介護ポストセブン編集部