「京丹後長寿コホート研究」に見る長寿の重要なカギは酪酸菌
2月10日、新型コロナウイルス感染症対策にかかる緊急提言が「STOP感染症2020戦略会議」から発表された。
正しい手洗いや咳エチケットに加えて、感染症予防に向けた新生活習慣として「免疫力を向上させる酪酸菌、乳酸菌などプロバイオティクス摂取の重要性」が提案されたのだ。
遺伝子の研究が進み、医学界では腸内細菌の研究が人気だという。その中で、最強の善玉菌として特に注目を集めているのが「酪酸菌」だ。
長寿の国、日本で進む腸内環境の研究
世界的な長寿国である日本。その秘訣を探ろうと、多くの研究が行われているが、その一環として腸内細菌に関する研究も進んでいる。
●京丹後長寿コホート研究
京都府立医科大学が2017年度にスタートさせた疫学調査「京丹後長寿コホート研究」では、京丹後市に住む高齢者に、酪酸菌の割合が高いことが判明した。
京丹後市は、住民の人口に占める100才以上の割合が全国平均の2.8倍という長寿地域。ここに住む65才以上の51人と、京都市(全国平均)に住む51人の腸内フローラを比較したところ、体に有用な菌が多いとされるファーミキューテス門というグループの細菌占有率が、京都市の平均58%に対し、京丹後市では68.2%と高く、そのうちのトップ4が酪酸菌だったという(グラフ参照)。
研究を担当した京都府立医科大学消化器内科学教室准教授の内藤裕二さんは言う。
「京丹後市に住む高齢者は若い頃、自分たちで耕した田んぼや畑、山海から食料を調達する生活でした。市販品を口にする機会の多い都市部の人と彼らの食生活の差が、腸内細菌と長寿の関係にも表れていると考えられます」
さらに、京丹後市の同一家庭の祖父母世代から孫まで、3世代の腸内フローラを調べたところ、世代が若くなるにつれ、腸内細菌の多様性が低下し、状態は悪化していた。
「いま手を打たなければ、日本が長寿国を維持することは難しい。酪酸菌は健康長寿の重要なカギとなる菌だと考えています」(内藤さん)
イラスト/あらいぴろよ
※女性セブン2020年4月9日号