新型コロナ対策 酪酸菌が免疫力アップに最強の善玉菌な理由
国を挙げて新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策を行っているが、収束の兆しはいまだ見えない。マスクの着用や除菌スプレーなどで予防するにも、品不足でままならないのが実状だ。そんないまだからこそ、大切なのが免疫力の高い体づくり。「最強の善玉菌」酪酸菌をいざ!
【目次】
2月10日、新型コロナウイルス感染症対策にかかる緊急提言が「STOP感染症2020戦略会議」(※1)から発表された。
【※1「STOP感染症2020戦略会議」とは、海外から多くの人が訪れる東京オリンピック・パラリンピックイヤーを、感染症対策の重要年度と位置づけ、昨年12月に発足したもの】
正しい手洗いや咳エチケットなどに加え、感染症予防に向けた新生活習慣として、「免疫力を向上させる酪酸菌、乳酸菌などプロバイオティクス摂取の重要性」が提案されたのだ。「酪酸菌」といわれても、あまり耳慣れない言葉だが、いったいどういうものなのか。
腸にはおよそ1000種類、100兆個もの細菌が生息している。その中の1つ酪酸菌は、酪酸産生菌ともいい、腸内で酪酸を作る菌の総称だ。
「酪酸菌は、もともとヒトの腸内にいる常在菌で、主に大腸に生息しています。腸内環境を整える善玉菌としては乳酸菌とビフィズス菌がよく知られていますが、腸内でこれらと共生し、整腸効果を発揮し合う、第3の善玉菌として、酪酸菌が注目を集めています。それぞれ腸内で炭水化物を代謝する際に、乳酸菌は乳酸、ビフィズス菌は酢酸と乳酸、酪酸菌は酪酸と酢酸を主に作り出し、大腸だけでなく、全身の健康に寄与しています」
と、京都府立医科大学消化器内科学教室准教授の内藤裕二さんは説明する。
3つの善玉菌とその働き
■乳酸菌
・作り出す酸の種類(乳酸)
・生息場所(小腸)
・主な動き
乳酸を作り出すことで悪玉菌の増殖を抑制し、腸内環境を改善する。
■ビフィズス菌
・作り出す酸の種類(乳酸)(酢酸)
・生息場所(大腸)
・主な動き
乳酸や酢酸を作り出すことで悪玉菌の増殖を抑制し、腸内環境を改善する。
■酪酸菌
・作り出す酸の種類(酢酸)(酪酸)
・生息場所(大腸)
・主な動き
酪酸や酢酸を作り出すことで悪玉菌の増殖を抑制する。酪酸は大腸の主要なエネルギー源でもあり、酪酸を作り出すことで腸の正常な働きをサポートする。
酪酸菌が最強な理由
その3つの善玉菌の中でも、酪酸菌が最強と呼ばれるのはなぜか。
「酪酸の大部分は、そのまま大腸粘膜上皮のエネルギー源になるため、大腸の働きを活性化させるのに欠かせません。酪酸を生み出す酪酸菌が、最強といわれるのはこのためです。一般的な乳酸菌は熱・酸・抗生物質に弱く、摂取しても生きて腸まで届くのはごく僅か。一方、酪酸菌はこれらすべてに強く、生きたまま腸まで届くところが決定的に違います」(内藤さん)
また、前出の戦略会議の委員で「プロバイオティックスによる感染症対策ワーキンググループ」の座長である、聖マリアンナ医科大学感染症学講座教授の國島広之さんは、その重要性をこう語る。
「限定された状況でのデータですが、鼻水やのどの痛みなどの症状が現れるウイルス性呼吸器感染症の発症リスクは、腸に酪酸菌が少ない方が、多いときより5倍高くなると報告されています」
つまり、酪酸菌が多く、腸内環境が整った状態であれば、インフルエンザはもちろん、新型コロナウイルス感染症などの発症リスクは抑えられるかもしれないのだ。免疫力を高めたいいま、意識すべきは酪酸菌なのだ。
教えてくれた人
内藤裕二さん/京都府立医科大学消化器内科学教室准教授
イラスト/あらいぴろよ
※女性セブン2020年4月9日号