高齢者におすすめのコンビニ食品|漢方目線の胃腸に負担をかけない食事で「未病を治す」
高齢者には胃腸に負担をかけない食事が大前提
高齢になると食欲が衰え、消化吸収機能全体が弱くなることから、胃腸に負担をかけないことが大事になってくる。さらに季節の変わり目は胃腸も弱り気味になりやすい。そんなときには、どんな食事を取るべきか。身近なコンビニ食品で考えてみよう。
美容や健康の知識に富んだ専門家に、親世代にすすめたいコンビニフードを教えてもらうこの企画。今回は、健康と美を応援する漢方専門店 薬日本堂の薬剤師で、柏店の店長を務める岩田和代さんに、胃腸が弱り気味になる季節の変わり目におすすめのコンビニ食品を教えてもらった。
岩田さんによると、東洋医学的には、高齢になると五臓(肝・心・脾・肺・腎)の機能全般が弱くなるが、その中でも特に、食べ物の消化吸収を管理する働きのある「脾」と、生命力を蓄え他の臓器を助ける「腎」をケアする食事が大切だそう。特に「腎」を強化することで体全体が元気になり、寿命をのばすことができると考えられているという。
「漢方には「未病(みびょう)を治す」という言葉があります。病気になる前にからだのバランスを整え病気にならないようにすることです。『医食同源』とも言われるように、毎日の食事に気をつけることは病気予防・健康向上の近道です。また、高齢になると臓器の機能が弱ってきて、季節の影響を体に受けやすくなります。代謝する力も弱るため、負担をかけずに栄養バランスのよい食事をとることが重要。高齢者が弱りやすい『脾(ひ)』にやさしく『腎(じん)』を強化するものを中心に、季節の旬のものをとりいれていくことで、体のバランスを整えるコンビニ食品をチェックしてみましょう」(岩田さん・以下同)
『根菜たっぷり!10品目の生姜スープ』(セブンイレブン)
●胃の調子を整える生姜がポイント
レタス1個分の食物繊維を摂ることができるスープ。もち麦、鶏肉、白菜、にんじん、玉ねぎ、ごぼう、れんこんなど10品目の具材が入っている。さらに昆布、椎茸のだしを利かせたスープに生姜を加えてあり、香り豊かなスープになっている。141kcal。
「生姜はお腹を温めて、胃の調子を整え食欲を増進させます。また生姜は解毒作用があるので、魚介類の食中毒予防も期待できます。脾にやさしい消化吸収のよいスープで多くの品目の野菜がとれるのは嬉しいですね。もち麦や大豆などの雑穀や豆類は元気をつける食材としてもおすすめです」
『もち麦もっちり!梅ひじきおむすび』(セブンイレブン)
●健康効果の高い梅やひじきも一度に摂れる
昆布とかつお節から丁寧に取っただしで炊き込んだもち麦ごはんに、ひじき煮を混ぜ込んだおむすび。ひじきや食感のよい梅チップ、香りのよい赤しそが入っていて食感も香りも楽しめる。
「海藻の中でも低カロリーでミネラル豊富なひじきは腎を補う食材です。鉄分が多く貧血の改善にも有効。抜け毛や乾燥肌の予防にもおすすめです。梅には食欲増進効果と、クエン酸による疲労回復効果も期待できます。もち麦は白米より食物繊維が豊富なことと、急な血糖値上昇しない低GI食品としても注目されています。」
『ごぼうと蓮根のつくね入り和風スープ』(ファミリーマート)
●腸内環境を整える根菜がたっぷり
鶏むね肉にごぼう、蓮根、人参などの根菜を合わせたつくねを入れた和風スープ。具材の椎茸がスープの旨みをアップさせている。
「蓮根はのどの炎症や咳どめによいとされる、秋におすすめの潤い食材です。また根菜が多いことにも注目。高齢者は腸内の善玉菌が減少してきます。根菜の食物繊維は腸内細菌の善玉菌のエサとなるので、腸内環境を整えてくれます。そろそろ寒さも気になる時期なので、体を温める鶏肉が入っているのも嬉しいですね。つくねになっていることでたんぱく質の吸収も効率的です。」
『ラタトゥイユ』(セブンイレブン)
●アレンジの利く色とりどりの野菜煮込み
なす、赤パプリカ、黄パプリカ、玉ねぎ、ズッキーニの5種の野菜をトマトペーストで煮込んだラタトイゥユ。野菜の具材感、香ばしさが味わえる。80g入りで59kcal。パスタと合わせたり、カレーのようにごはんにかけても、手軽に野菜中心の一皿が完成する。柔らかく、よく火を通してあるので、高齢者にも食べやすい。
「ラタトゥイユは元々フランスの家庭料理で野菜からの水分だけで作られるので、旨味が凝縮していて調味料控えめでも美味しく食べられます。赤黄パプリカはビタミンも豊富で、疲労回復や美肌効果も期待できます。この季節はぜひ温めて食べてください。」
薬剤師:岩田和代さん
薬日本堂柏髙島屋店 店長で国際中医師。以前調剤薬局勤務時に「病気になってから薬を飲むのではなく、病気にならない体づくりが大切」との思いが強くなり、「未病を治す」という考え方のある漢方に興味を抱く。日々の漢方相談において、漢方と生活養生の実践で「美しく」「健康的に」年齢を重ねることを提案している。
撮影/黒石あみ 取材・文/竹腰奈生