管理栄養士が教える【コンビニ食材】で手軽に認知症予防
コンビニごはんは、手軽だけどあんまりヘルシーじゃない……なんて誤解! 食材選びのコツさえ知っておけば、健康長寿に役立つアイテムがかならず見つかるはず。今回は「認知症予防」をキーワードに、管理栄養士・料理研究家の舘野真知子さんにおすすめ食材とその理由を聞いた。
たんぱく質とビタミンで「動ける身体」を作る
コンビニで食事をすませようというとき、まず思いつくのが菓子パンやサンドイッチ、おにぎりではないだろうか。これらの食品に共通するのは、体を動かすエネルギー源である「糖質」が含まれていること。食事選びの基本として正しいと思いがちだが……。
「糖質はクルマでいうところのガソリンのようなもの。ちゃんと動くためにはもちろん必要な栄養素ですが、“認知症予防”を考えたとき、それだけでは不十分なんです」(以下、「」内は舘野さん)
認知症を予防するのに意識するべき栄養素とは、「たんぱく質」と「ビタミン類」と舘野さんは言う。
「たんぱく質は、筋肉や血液などを作る材料となる栄養素。クルマで例えると車体を構成する材料です。たんぱく質が不足すると車体がガタガタになるように、体を動かせなくなってしまうんです。
身体を思い通りに動かせないと、筋肉が衰えたり怪我をしたりして認知症の発症リスクが高くなると言われます。そうならないためにも食事のたびにたんぱく質を補給することが大切です」
ではビタミン類はどんな役割を果たすのだろうか?
「ビタミンは、炭水化物やたんぱく質をきちんと活用するための潤滑油のようなものと考えてください。例えばビタミンB1やビタミンB2は糖質を分解してエネルギーにするのを助けます。ビタミンB6やビタミンB12はたんぱく質の代謝を助けます。
ビタミン類は野菜や果物だけでなく、肉や魚、卵、穀類などさまざまな食材に含まれていますから、ごはんやパンなど主食だけ食べるのではなく、“おかず”をプラスアルファすることがとても大切です」
そこで、たんぱく質とビタミン類をかしこく摂れるコンビニ食材を舘野さんに選んでもらった。
おつまみコーナーはたんぱく質食材の宝庫
弁当や惣菜コーナーの近くにある冷蔵コーナーには、おかずにも酒のつまみにもなるたんぱく質豊富な食材がそろっている。
●かまぼこ
白身魚のすり身から作られていて、低脂肪・低エネルギーなのに高たんぱく。カニカマや笹かまぼこでもよい。たんぱく質量の目安(各100gあたり)は、蒸しかまぼこ12.0g、カニカマ12.1g。
●ちくわ
ちくわもかまぼこと同じく、魚のすりみから作られていて、100gあたりのたんぱく質量は12.2gと豊富。
●ゆで卵・温泉卵・卵焼き
卵のたんぱく質量は1個(生卵の全卵・可食部50gとして)あたり約6g。たんぱく質だけでなく、ビタミンやミネラルも含まれている。そのまま食べるだけでなく、そばやご飯、サラダのトッピングにしてもおいしい。
●ツナ缶
オイル漬けでなく、水煮缶を選べば低脂肪・低塩分でヘルシー。たんぱく質量は水煮缶1缶(70g)で約11〜13g。サラダやうどん、そば、パスタ、トーストにのせるなど、アレンジしやすい。
●チーズ
個包装のタイプ、スモークチーズ、さけるチーズなど、さまざまな風味があるので楽しく食べられる。たんぱく質量(プロセスチーズの場合)は30gあたり約7g。
野菜だけじゃないビタミン類の摂り方
カップサラダや野菜ジュースはもちろんOK。でも、それ以外にもビタミンが摂れるコンビニ食材がある。
●ほうれん草のおひたし
ビタミンを摂ろうと思うとサラダに目が行きがちだが、和の惣菜のなかにも野菜が多めに使われたものがある。よく見かけるのがビタミンAやビタミンCが豊富なほうれん草のおひたしだが、きんぴらや煮物類でもOK。
●豆腐
大豆には栄養の代謝を助けるビタミンB群が豊富。また、体や頭のサビつき(酸化)を抑えるビタミンEも含まれる。「畑の肉」と呼ばれるほどたんぱく質も多いので積極的に摂りたい。
●納豆
豆腐と同じく大豆から作られるため、ビタミンB群、ビタミンE、たんぱく質が豊富。発酵食品なので栄養を吸収しやすいというメリットもある。
●ナッツ類
おやつやおつまみとして、最近人気のナッツ類。アーモンドやくるみにはビタミンEが含まれる。塩分や油脂が使われていない素焼きのものがベスト。
●豚しゃぶサラダ
豚肉にはビタミンB群が豊富。ほかの野菜と組み合わせればさらに多くのビタミン類が摂れる。豆入りのサラダでもOK。
教えてくれたのは…
舘野真知子/料理研究家・管理栄養士。栃木で8代続く専業農家に生まれる。 管理栄養士として病院に勤務後、2001年アイルランドに料理留学。帰国後はフードコーディネーター、レストランの初代シェフを務め、現在は「発酵」をキーワードに食の魅力を国内外に伝えるため、多くのメディアで活躍。著書は「認知症予防! 脳がよみがえる水煮缶レシピ」(佐古田三郎監修/PHP研究所)、「きちんとおいしく作れる漬け物」(成美堂出版)、「料理用あま酒、はじめました」(光文社)など多数。
取材・文/市原淳子