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健康

「下肢静脈瘤」とは?症状・原因・治療・予防法を専門医が解説!

 足の疲れや重だるさ、むくみがいつまでも続くならば「下肢静脈瘤」という足の病気かもしれない。

 静脈瘤などと聞くと恐ろしい病気のように思えてしまうが、生命にかかわる心配はないのだろうか。日本人の半数近くに起こり、中高年から発症率が増加するといわれる下肢静脈瘤について、血管病の専門医である「お茶の水血管外科クリニック」の広川雅之院長に、この病気の正しいとらえ方や悪化防止法についてお話しいただいた。

下肢静脈瘤とはどんな病気?

「下肢静脈瘤」とは、脚の静脈が膨れてコブのように盛り上がる病気です。

 静脈は、体の各部で回収した老廃物などを含む血液を心臓へ送り返す血管。足の静脈の場合は重力に逆らって心臓に血液を戻さねばならないので、逆流を防ぐため〝ハ〟の字型をした弁が存在しています。

 この逆流防止弁が壊れて閉まらなくなると、下肢静脈の血液循環が悪くなって血液がたまり、コブのように膨れてしまうのです。

 下肢静脈瘤は30代半ばごろから発症しますが、最初はあまり目立たない上に、症状もないため、放置されているうちに徐々に進行していきます。そして50~60代半ばになるとコブが大きくなり、様々な症状がおこります。

 まず気づくのは見た目です。足の静脈が皮膚の表面に浮き出てきます。静脈のコブが大きくなってボコボコと盛り上がる「伏在型(ふくざいがた)静脈瘤」と、赤い血管がクモの巣のように皮膚に広がる「クモの巣状静脈瘤」、あるいは2つのタイプが同時に起こることもあります。ほぼ片方の足だけに起こり、両足に同時に現れることはあまりありません。

足のむくみ、重だるさ、疲れやすさ、明け方のこむら返りが自覚症状

 自覚症状では、昼から夕方にかけての足のむくみ・重だるさ・疲れやすさ、明け方の足のつり(こむら返り)などが代表的です。

「足の血管が熱くなる」「ピリピリ痛む」と訴える患者さんもいます。また、下肢静脈瘤では皮膚の循環が悪くなるため皮膚炎が起こり、足の皮膚が色素沈着で黒っぽくなったり、かゆみを伴う湿疹ができたりします起こりやすい場所は、足の内側(親指側)で、くるぶしの上あたりです。

 この皮膚炎が悪化すると、うっ滞性潰瘍(皮膚がただれて穴があく)になったり、まれに出血したりすることがあります。

 下肢静脈瘤は、なぜ起こるのでしょう。次のような原因が考えられています。

□遺伝…両親が下肢静脈瘤の人の9割が発症
□妊娠・出産…ホルモンによって血管がやわらかくなる
□加齢…血管の壁のコラーゲン減少が関係
□立ち仕事…美容師、理容師、調理師、スーパーのレジ係など。静脈血を心臓に送り返す「足の筋ポンプ作用」が、立っていると働かないため
□その他肥満・高血圧・運動不足など

 日本人を対象とした調査で、15歳以上の人の約43%に下肢静脈瘤が認められています。

 つまり誰にでも起こる病気ですが、発症は男性1に対し女性は2~3倍。私のクリニックでも下肢静脈瘤の患者さんの7割は女性です。出産に加え、スーパーの店員さんなど立ち仕事をする人が多いことが、女性の発症率の高さと関係していると思います。

午後、止まっているときに症状が現れるのが特徴

 足に疲れや、重だるさを感じる人は、足に下肢静脈瘤があるかどうか自己診断をしてみましょう。

 自己診断は、浴室の鏡の前に立ち、くるぶしの上からひざ関節の裏側・足のつけ根までを観察し、色素沈着や皮膚炎、青黒い血管(静脈)が盛り上がっていないかどうかを調べてみましょう。

 ただし、足に下肢静脈瘤があったとしても必ずしも下肢静脈瘤による症状とは限りません。午前中よりも午後、動いているときよりも止まっているときに症状が現れるのが下肢静脈瘤の特徴です。

 50代以上で足の疲れや重だるさ、痛みを感じる場合は、変形性膝関節症や脊柱管狭窄症などの整形外科の病気のこともあるので、合わせて整形外科を受診するといいでしょう。

 下肢静脈瘤についてときどき「破裂して大出血する」「悪化すると足の切断になる」「血のかたまりが脳や心臓に飛んで梗塞を引き起こす」などの俗説を耳にしますが、下肢静脈瘤では、そういった生命にかかわるようなことは起こり得ません。下肢静脈瘤だからといって、慌てなくても大丈夫です。

生命にかかわることはなく、外来で10分でできる治療法も

 生命にはかかわりませんが、見た目が気になったり、症状で困っている人は治療を検討します。最近では患者さんの体への負担が少ない治療法が確立されてきています。体調さえ問題なければ年齢制限もなく、90歳の方でも治療は可能です。

 軽症の人では「硬化療法」という注射の治療を行います。硬化剤という治療薬を静脈瘤に注射して血管を固めてしまいます。固まった血管は半年ぐらいで自然に吸収されてしまいます。外来で10分程度でできる日帰りの治療です。

 もう1つの治療は血管内治療です。静脈の中に細い管を入れて、中からレーザーや高周波の熱で静脈を焼いてふさいでしまう治療です。血管内レーザー治療、血管内ラジオ波治療と呼ばれ、出血や術後の痛みも少なく傷跡も小さいため日帰りで治療ができます。血管内治療も硬化療法も健康保険が適用されます。

家庭でできる予防体操

 下肢静脈瘤になりにくくし、悪化を防ぐ方法があります。

 一番簡単なのは最近よく出回っている「弾性ストッキング」をはくことです。着圧ストッキングと呼ばれることもあります。妊娠中の女性や立ち仕事の方に特ににオススメできます。

 次のような運動も試してみましょう。

【1】イスに浅く腰掛け、両足をまっすぐ投げ出して、かかとを床につけたままつま先を前後に動かす。
【2】安定した家具などにつかまりながら爪先立ちをし、かかとを下ろすことを繰り返す。

 どちらも10回を1セットとして、1日2~3回行うといいでしょう。

 どちらも10回を1セットとして、1日2~3回行うといいでしょう。

 下肢静脈瘤は深刻な病気ではありませんし、治療や予防も難しくありません。しかし、足を健康に保つことは快適に暮らす上でとても大切です。少しでも気になったら専門医を受診するようにしましょう。

教えてくれた人

広川雅之さん/「お茶の水血管外科クリニック」院長。血管病の専門医。

お茶の水血管外科クリニック公式サイト



取材・文/大竹 麗

●破裂すると致命的…「腹部大動脈瘤」を名医が解説<前編>

●変形性膝関節症がラクになる 改善率8割の『痛みナビ体操』

●座り続けると死亡リスク増 回避のためのストレッチ法

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