アサーティブな人が心がけている「聴き上手になる」4つのコツ
「上司や先輩の言うことにNOと言えない」悩みを抱える人は多い。そんな時、相手に嫌な感じを与えない、素敵な自己表現ができたら……それを教えてくれるのが「アサーティブ・コミュニケーション」だ。神奈川大学公開講座「素敵な自己表現・アサーティブ・コミュニケーション」から、神奈川大学人間科学部2年の佐藤優衣記者が、アサーティブ・コミュニケーションのポイントをレポートする。(本記事は2回連載の1回目)
言いたいことが言えなくて、いつか爆発しそう……
アサーティブ(Assertive)とは直訳すると「主張的」という意味だ。しかし「アサーティブ・コミュニケーション」とは、自分の言いたいことだけを自己主張するということではない。
他人を尊重しながら、自分の考えや意見を、その場の状況にあった適切な方法で表現し、そのような率直な自己表現を通して、創造的な双方向コミュニケーションの場を構築する──それがアサーティブ・コミュニケーションである。
日常生活で次のような悩みを持つ人は多い。
「相手に気を遣ってしまって言えない」(ノンアサーティブ:受け身的な表現)
「ついに我慢できずに口を開いたらつい言い過ぎてしまった」(アグレッシブ:攻撃的な表現)
こんな状況は数多くあるはずだ。講座の講師を務める喜多朋子先生(Manner-Bo Alliance株式会社)は、普段のコミュニケーションにアサーティブを取り入れることで、次の3つの効果が期待できるという。
- 一方的、威圧的な相手への関わり方が学べる。
●言えずに我慢して爆発、というコミュニケーションパターンを変えられる。
●トレーニングをすることで、言えない相手に自分の意見が言えるようになる。
では、どのようにすればアサーティブを身につけることができるのだろうか。
アサーティブはまず相手の話を「聴く」ことから
喜多先生は次のように語る。
「相手に自分の話を伝えたいときは、まず自分が相手の話に耳を傾けましょう。また、話を聴く際には、自分の価値観を一旦横におき、相手の話を受け容れることが大切です」
ここで喜多先生は三つの「きく」について説明した。
「『きく』には、『聞く』『聴く』『訊く』があります。『聞く』は意識しなくても聞こえてくること。『聴く』は意識して相手の言葉だけでなく心まで聴くこと。『訊く』はわからないことについて尋ねることです。アサーティブ・コミュニケーションでは、漫然と『聞く』のではなく、相手の思いや考えを『聴く』ことを心がけましょう」
1.表情豊かに前傾姿勢で、アイコンタクトをしながら聴く
まず、大切なのは聴く態度だ。相手を尊重し、その話を聴こうとするところから、アサーティブ・コミュニケーションは始まっているからだ。
相手の話に応じて表情を豊かに変える、アイコンタクトを十分に取る、また前傾姿勢で相手の話を聴くことが効果的だという。こうした表情や態度、話し方などの、非言語表現のことをノンバーバル・コミュニケーションという。
前傾姿勢になると、相手の話を意識して聴いていることが伝わる。あごを上げる、腕組み、足組みをしながら相手の話を聴くと、アグレッシブな印象を与えてしまうので避けた方がよい。
また、アイコンタクトを積極的にすることで、あなたの話を受け入れているという雰囲気が伝わる、ただし、あまりじっと見つめすぎると威圧的に見えるので注意をする。
2.効果的に、うなずいたり、あいづちを打ったりする
また、会話の途中で「うなずく」「あいづちを打つ」ことも重要だ。
「うなずく」時は、相手の一文の区切りや句読点のタイミングでうなずくとよい。うなずきをすることで、相手は自分を受け入れられていると感じる。しかし、うなずきすぎるのは禁物。聞き流していると思わせてしまうことがある。
「あいづち」はバリエーションが大切だ。「はい」の連続はワンパターンなあいづちである。「へえ~」「そうですね」「それで」など、返答する言葉を工夫しよう。
3.相手の言葉を繰り返すなどして、共感と明確化を
相手の話の中に出てくる重要な単語を復唱、相手の話を要約すると、相手は共感してくれている感じ、共通理解が深まる。この共通理解を深めるということはアサーティブ・コミュニケーションの大切なポイントだ。
相手がノンアサーティブ(アサーティブではない人)だと、なかなか本音をもらさない。分かってもらいたい気持ちは、ときに他人を引き合いにして自分の本音を語ることがある。
たとえば「あなたは人に好かれていていいですね」と話しかけられたら、「ありがとう、何かあった?」「なぜそう思うのですか?」などと質問を返す。すると相手は自分の話を聴いてくれると感じ、「実はね……」と本音を話し始めることがある。
4.「訊く」を有効的に活用し、相手の本音を訊きだす
三つの「きく」のうち「訊く」を有効に活用することも大切だ。
相手の話の中に、自分がわからないことや知らないことが出てきたら、話の腰を折らない範囲で質問してみよう。話に興味を持っていることが伝わるはずだ。
日常の社会生活の中で、とくに自分の言いたいことを言えない相手は、上司や先輩といった目上の人だろう。まずは相手に敬意を持ち、しっかり聴くこと。ここからアサーティブ・コミュニケーションが始まる。また自分が上司や先輩であれば、部下や後輩に威圧感や不快感を与えず、共感に満ちた聴き方をすることが大切だ。
では、アサーティブ・コミュニケーションでぜひ学びたい、「自分の言いたいことをどのように伝えるか」について、次回「アサーティブな人が心がけている「話し上手になる」4つのコツ」で詳しく紹介する。
◆取材講座:「素敵な自己表現「アサーティブ・コミュニケーション」──言いにくいことを素敵に表現する」(神奈川大学公開講座/みなとみらいエクステンションセンター)
◆講師プロフィール:喜多朋子(きた・ともこ)
Manner-Bo Alliance株式会社
電気メーカー、情報コンサルティング会社にて総務・採用・秘書業務、社員教育を経て、講師として独立。現在は研修、大学非常勤講師として活躍。実務経験に裏付けられたビジネスマナー、接遇、キャリアデザインの指導には定評がある。秘書技能検定、サービス接遇検定の面接審査員にも従事している。
取材・文/佐藤優衣(神奈川大学人間科学部2年)
初出:まなナビ