【介護食の基本】“区分”って何? 正しい市販品の選び方
日々の介護食作りをラクにしてくれるレトルト食品などの“市販品”。様々な味や種類が販売されているが、一体どのように選べばいいのだろう?
「市販の商品を選ぶときは、味や好みだけでなく、“区分”を確認しましょう」。こう話すのは、介護食の料理教室やカフェを運営する『Kamulier(カムリエ)』店長の志水香代さん。
市販の介護食多くには、素材のやわらかさ、飲み込みやすさといった形状ごとに4つの「区分」(※)が表示されている。
「まだ噛むことができる状態なのに、やわらかすぎる介護食を選んでしまうと、噛んだり飲み込んだりする力が弱ってしまう心配も。もぐもぐと口を動かして、ごっくんと飲み込むことは、脳や体の活性化につながります。体の機能を低下させないためにも、その人の嚥下の状況にあった『区分』選びが大切です」(志水さん)
この「区分」とは、日本介護食品協議会が定めた規定で、数字が小さいほど通常食に近く、区分の数字が上がっていくほど流動食に近づいていく。
にんじんで再現してもらった。
区分1:容易に噛める
にんじんをさっとゆでて噛みやすくした状態。
区分2:歯茎でつぶせる
にんじんをしっかり(約20分)ゆでて、つぶれやすくした状態。
区分3:舌でつぶせる
ゆでたにんじんを潰し、寒天で固めたゼリー状。
区分4:噛まずに飲み込める
ゆでたにんじんをピューレ状にし、市販のゲル化剤などで固めて飲み込みやすくした状態。
※参考/日本介護食品協議会「区分選択の目安」
とろみをつけてさらに食べやすく
食材をミキサーにかけてとろみをつければ、介護食にはなるのだが、それでは味気ないし、噛む力が弱どんどん弱ってしまうと前述の志水さんは話す。
もぐもぐと口を動かせるなら、上あごと舌で食材をつぶして飲み込めるくらいの「区分3」を。
自宅で作るなら、ミキサーにかけた食材を寒天やゼラチンで固めて、小さ目にカットすれば口の中ですぐにつぶれ、喉にも貼り付かず、つるんと食べられる。
噛むことが難しい人は、「区分4」を選んで。にんじんなどの野菜をゆでてミキサーなどでペースト状にし、市販のゲル化剤適量で固めてやわらか野菜に。ゲル化剤を使うと形を簡単に残せるので、にんじんらしくカットして仕上げて。食事は見た目も大事な要素。見栄え良く、素材の香りも上手に引きたてることができれば、食欲アップにもつながる。
このやわらか野菜に、顆粒の中華だしを溶いたお湯に水溶き片栗粉でとろみをつけたあんをかければ、さらに食べやすく、飲み込みやすくなる。区分4相当の“にんじんの中華あん”が簡単にできあがる。
なお、今後はこのマークから区分数字がなくなり、「容易に噛める」など文言だけのマークに統一されることが決まっている。
市販ゲル化剤(写真は宮源の『ミキサーゲル』)で固めたにんじんに、中華風のとろみあんをかけて。
「寒天で固めた食材は、時間がたつと水が出てきて、水分と固形分が分離してしまう場合があります。飲み込みやすさや、口の中ではりつきにくさを重視する場合は、寒天よりもゲル化剤を使うのがおすすめ。食材の持つ色がしっかり出るので、見た目もキレイに仕上がります」(志水さん)
※この回では、日本介護食品協議会 ユニバーサルフードの区分についての説明しています。介護食品には、「スマイルケア食」による分類分けがされている物もあります。
日本介護食協議会HP:http://www.udf.jp/products/index.php
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