兄がボケました~認知症と介護と老後と「第86回 後見人初回報告苦戦中」
「認知症を患う兄の成年後見人になる」と決意し、申請、面談など複雑な手続きを司法書士の伴走のもと頑張ってきたライターのツガエマナミコさん。晴れて後見人に認定されてからも、提出書類の準備に追われる日々です。なかなか知ることのできない成年後見人の仕事。その実情をリアルタイムで明かしてくれました。
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「いい勉強です」とは言ってみたものの
ベランダで蝉が仰向けでひっくり返っているのを発見してから、かれこれ2週間が経ちました。近所に棲む野鳥さまが「お、旨そう」とくわえて飛んで行ってくれないかと待っているのですが、やはり自分で処分しなければならないようでございます。
野鳥といえば、少し前の朝、大きな声で鳴き続ける不思議な小鳥さまがおりました。小鳥のさえずりは珍しくないのですが、それは誰かが鳥の鳴き真似練習でもしているかのように、しつこく長く続いたのです。ベランダに出てみると、電線の上で一羽の小鳥が力強く鳴いておりました。しかも、ななめ向いのマンションに向かって必死に鳴いている小鳥はその場を一歩も動きません。わたくしの経験では小鳥はちょこまか動いてすぐいなくなるもの。カラスのような大物ならいざ知らず、小鳥があんなに大声で鳴きながら動かないというのは異常に見えて、「もしや足が電線にくっついしまったのでは?」と心配になりました。
ふと見ると、向いのマンションの住民も異常に長い鳴き声に窓から小鳥を眺めています。小鳥の足に異常はなさそうなのに2~3分しても一向に飛び立つ気配がありません。わたくしはキッチンに戻って紅茶を淹れました。「いつになったら飛ぶのかしらん?」と再びベランダに出ても同じ態勢で鳴いている小鳥。こちらが根負けしてテレビを観始めてしまいました。
おそらく10分近く1か所で鳴いていたように思います。小鳥らしからぬ行動になぜか人っぽさを感じました。「小鳥の姿になって会いに来た」そんなラブリーな小鳥さまだったのかもしれません。
後見人の初回報告書作成をする中で、どうしてもわからないのが亡き母が受け取るはずだった分の遺産目録でございます。今後行う祖父母の家の売却によって発生するわけでございますが、所在地やら面積やら書き込む欄がございまして、何を書いたらいいのやらまったくわかりません。
同じ遺産の相続人である認知症の叔父(母の弟)にも同じように後見人がついているので、叔母に聞いたら何かわかるかと思い、お電話をしてみたところ、「うちはね、監督人が付いたのよ。司法書士の先生が監督人になってくれて。だから全部お任せしてしまっているの」とおっしゃるではありませんか。
叔父の後見人は娘、わたくしの従妹でございます。「一緒に頑張ろうね」と言っていたのにわたくしだけが置いてけぼりになりました。従妹は普通の会社員ですし、十分な時間が取れないと考慮されたのでしょうか。「マナミコちゃんには余計な仕事を増やしてしまってごめんなさいね」という叔母に「いえいえ、いい勉強です」と返すのがやっとでございました。
「まぁ、多少間違っていてもとりあえず期限までに提出していれば何とかなるでしょう」と叔母も言うので、そのつもりでおりましたら、3日後ぐらいに司法書士さまから「少しお手伝いしますか?」とメールが届きました。きっと叔母がなにか言ってくれたのだと思います。
少し前に「私はその立場にないので見ることはできません」と言っていた司法書士さまです。叔母が何を言ってくれたのかわかりませんが、ありがたいことでございます。
さっそく分割未了の相続財産目録についてメールで伺ってみると、なんとなく話が噛み合いません。住む都道府県が違うと書式も違うようで、「ある程度書いたら一度見せてください」となり、現在絶賛下書き中でございます。
添付する資料についてはコピーの仕方から面倒で「綴じ代分として左3センチあけてコピー」、「A4またはA3用紙」、「通帳は表紙と中表紙と一年分の記帳」、「目録と資料は紐づくように右肩に目録番号を振って」など、細かい指示があったのを読み飛ばしてしまったせいで、コピーはすべてやりなおし。アバウトでいい加減なわたくしにはイライラすることばかりでございます。
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性63才。両親と独身の兄妹が、2012年にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現67才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。2024年夏から特別養護老人ホームに入所。
