兄がボケました~認知症と介護と老後と「第84回『特別送達』が届きました」
両親が他界した後、共に暮らしてきた兄が認知症を発症し、その兄のサポートを一手に担ってきたライターのツガエマナミコさん。ここ数か月間、祖父母の家の相続手続きなど兄の財産管理ために成年後見人になる必要が生じ、煩雑な手続きを進めてきました。そしていよいよ、裁判所からお知らせがきたというお話です。
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「審判」と書かれたコピー用紙
畑を持っている友人からジャガイモをいただきました。
ご実家が農家だったので(今は農家廃業)、自分たちで食べる分だけ畑で野菜を育てているのでございます。
「たくさんできたから」という理由で3~4キロほどのジャガイモを車で届けてくれました。
今どきスーパーで買えば、たった4~5個で400円前後する代物でございます。おまけに手渡された袋の中を見るとプチトマトやキュウリ、タマネギに万願寺トウガラシ、そして「庭に咲いてたやつだけど」と色とりどりのかわいい花束まで作ってくれていて驚いてしまいました。誕生日でもないのに、一人暮らしの年寄りには嬉しすぎる小分けのサプライズ。わたくしが殿方だったら間違いなく「惚れてまうやろー」と叫ぶ、そういう類の嬉しさでございました。
どこかに行く途中で寄ってくれたので、本当に野菜を届けてくれただけで疾風のごとく去っていく彼女を見送り、中身を全部出してみると1キロほどのお米と手作りのエコバッグも入っておりました。
昔からそう思っておりましたが、「良妻賢母」を人の形にしたらきっと彼女になります。それに引き換えわたくしは、悪妻にも愚母にもなれず、子どもはもちろんジャガイモ一つ育てられない年寄りになりました。若いうちは自由でオシャレな暮らしに憧れましたが、歳を取るほどに彼女のように“地に足の付いた生き方”が羨ましくなってまいりました。
とりあえず、ジャーマンポテトを作り、先日肉ジャガも作りました。キュウリもトマトも鮮度が良く、こういう野菜が食べられることこそが食の贅沢だと実感しております。
持つべきものは農家育ちの友! ありがたい出来事でございました。
届いたといえば、先日、家庭裁判所から厚い封書が届きました。「面接から1か月ぐらいで封書が届きます」と言われた、その封書が2週間ほどで到着したのです。
それは普通郵便ではなく、「特別送達」という赤い判子が押されているものでございました。見慣れない印だったので調べてみましたら、一般的な「書留」とは違い、裁判所など法的機関が重要な書類を確実に受取人本人に届けるために使用する特殊な取り扱いの郵便だそうでございます。
そんな特別な郵便の中身は、ズシリと重い書類の束でございました。
まず重要なのは、わたくしが後見人として認められたかどうか?でございます。
上から数枚目に「審判」と書かれたコピー用紙が入っておりまして、わたくしの申し立てを認める旨が書かれておりました。どうやらわたくしは無事に裁判所の面接をパスできたようでございます。
けれども、それは普通のA4コピー用紙1枚のじつに頼りない紙。内容もスカスカでおよそ「審判書謄本」というほど重要な書類に見えなかったので、司法書士さまに「『審判書謄本』をコピーして送ってください」と言われたときに「ん?これか?」と戸惑ったくらいでございます。
改めてA4の頼りない紙をじっくり見ると、裁判官さまの署名・捺印のさらに下の方に小さな字で「これは謄本である。」という薄いゴム印がありました。こんなに大事なことをこんなに小さく、印字の薄いゴム印で表すのかと思い、やや呆れてしまいましたが、とにかく第一関門は突破いたしました。ここから2週間、誰からも異議申し立てがなければ「確定」となり、後見人としての「効力」が生じるそうでございます。
同封されていたその他の書類は「後見等事務報告書」「財産目録」「収支予定表および添付資料」の用紙と、その書き方見本、そして「後見人等の役割」からはじまる約100ページに及ぶA4サイズの冊子でございました。
まずは、指定された締め切り日(封書受取から約2か月先)までに「後見等事務報告書」「財産目録」「収支予定表および添付資料」の用紙をすべて書き込んで家庭裁判所へ郵送すること、それが後見人としての最初のお仕事のようでございます。
2か月先とはいえ、このところの体感的時間の速さから察するにあっという間でございましょう。法的な書類の作成は、考えただけでも脳から汗が出てまいります。後回しにせず急がねば!
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性63才。両親と独身の兄妹が、2012年にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現67才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。2024年夏から特別養護老人ホームに入所。
イラスト/なとみみわ
