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暮らし

孫が見た《老々介護》「緊急入院したじいちゃんは反応がない…しかし病室に入ると急にしゃべり始めた」祖父渾身の言葉

 内閣府「令和7年版高齢社会白書」によると、要介護認定を受けた人の割合は75才以上が11.6%、85才以上では44.5%と上昇。介護者の7割以上が65才以上の女性で「老々介護」のケースも相当数存在する。ヤングケアラーとして母のケアを担ってきたたろべえさんこと高橋唯さんの祖父母も老々介護の真っ最中。祖母(80代)も祖父(90代)を介護しているが、祖父は断固通院を拒否…。嫌がる祖父をなんとか病院に担ぎ込んだのだが――。

執筆/たろべえ(高橋唯)さん

「たろべえ」の名で、ケアラーとしての体験をもとにブログやSNSなどで情報を発信。本名は高橋唯(高ははしごだか)。1997年、障害のある両親のもとに生まれ、家族3人暮らし。ヤングケアラーに関する講演や活動も積極的に行うほか、『ヤングケアラーってなんだろう』(ちくまプリマー新書)、『ヤングケアラー わたしの語り――子どもや若者が経験した家族のケア・介護』(生活書院)などで執筆。 https://ameblo.jp/tarobee1515/

老々介護が本格化「嫌がる祖父を病院へ…」

 昨年末から父方の祖父母の「老々介護」が本格化してきた。90代・要介護2の祖父を80代の祖母がサポートしている。デイサービス利用初日、送迎の職員が迎えに来てくれたものの、祖父の拒否が強く、結局利用できなかった。

 しかし、その場でデイサービスの看護師さんが祖父の身体の状態を確認してくださり、「容体が悪く床ずれもできている。すぐに病院を受診した方がよい」とのこと。後日大暴れの祖父を父と祖母でなんとか車に乗せ、病院へ連れて行った。

父と連携しながら祖父の入院をサポート

 午前中は父が祖父母に付き添ってくれていたが、午後は仕事に行かなければならず、筆者とバトンタッチした。

 筆者が病院に着いたとき、救急外来での様々な検査が終わり、より家から近い病院に入院できるように調整をしているところだった。祖母と一緒に、ストレッチャーの上で点滴につながれている祖父の近くに座って、病院が手配してくれた介護タクシーを待つことになった。その間、祖父に触ったり話しかけたりしてみたが、反応はまったくなかった。

 30分ほど待っていると、介護タクシーが到着した。病院のストレッチャーからタクシーのストレッチャーに4人がかりで祖父を移動させて、入院先の病院に向かった。

祖父の診断結果は…

 入院先の病院では、またはじめから様々な検査をした。

「さっきの病院でも同じ検査をしていて、その結果を持ってきているのですけど…」とスタッフさんに伝えてみたものの、こちらの病院でもやらなくてはいけないものらしい。

 最初に救急外来に行った病院は、祖父が10年前に前立腺肥大を診てもらってから、3か月に一度の定期検診に通っていたところだ。病院嫌いの祖父がなんとか行くことができる唯一の病院だった。以前の定期検診の際、大腸がんのようなものが見つかっていたが、確定検査をするためには体力が十分ではなかったため、そのまま様子見となっていた。

 祖父のこれまでの状態を問診票に記入したり、入院の書類を書いたりしながら待っていると、内科の診察室に呼ばれた。医師は、モニターに映った検査結果を見せながら丁寧に説明してくれた。

「現在、お祖父様は腎盂腎炎という、いわゆる膀胱炎が悪化したような感染症を起こしています。腎盂腎炎をこちらの病院で治療することはできますが、全身の状態が悪いのは元々の大腸がんのようなものの影響が大きいです。そちらは残念ながら治療できるものではありません。

 もしも入院中に心臓が止まるようなことがあっても、措置はなにもせずに、ご家族のみなさんに集まっていただくことになります」

 こういう場合、筆者はなんとなく「延命を希望されますか?」と聞かれるようなイメージをもっていたので意外だった。まあ祖父の状態を見れば、聞くまでもないことは素人目にも明らかだった。

 命に関わるほど具合が悪いのに最後まで抵抗する元気が出るものなのか…と驚きつつ、どうして祖父にとって病院はそこまで嫌な場所なのだろうかという疑問を抱えながら、入院する病棟へ移動した。

入院生活に必要なものを準備

 病棟では、看護師さんから入院生活についての説明を受けた。

 入院には口腔ケア用品や水分を摂る際の吸い飲みやとろみ調整食品など、準備する物がいろいろあるということを初めて知った。筆者はてっきり、自分で用意した物を使いたいというこだわりが特にないのであれば、病院で用意してもらえて、後から請求されるのかと思っていた。

 看護師さんが「なるべく早く準備してほしいのですが、もう病院の売店は閉まっておりまして…」と言うので、車で近所のドラッグストアまで買いに行き、後部座席で祖母に購入品ひとつひとつに名前を書いてもらって、病院に届けてきた。

 こうして家族が準備してくれる場合はいいが、そうでなければ誰に準備してもらえばいいのだろう。

病室で急に祖父がしゃべり始めた!

 本来であれば、病室には面会予約をしないと立ち入ることができないのだが、少しの時間であればということで、祖父の顔を見てから帰ることにした。筆者が昼に病院に着いて以降、祖父は話しかけてもまったく反応を示さなかったのだが、病室に入ると急にしゃべりだした。

「(俺は)なんでこんなところにいるんだよ-」「嫌だ!」「帰る!」「(お前たちは)なんで帰っちゃうんだよ、連れて帰れよー!」

 こちらからも「なんで嫌なの?どういうところが嫌?」と聞いたり、「痛いの、治してもらおう」「今日は疲れただろうから、まずは休んで」と声をかけたりしているものの、全く耳に入っていないようでひとりで怒り続けていた。

家族には「何ができただろう?」

 嫌がる祖父を置いていくのは心苦しかったが、ひとまず祖母と病院を後にした。祖母は朝から一日がかりだったので「なんだか気が抜けたら疲れた」と言っていた。

 医師に延命措置の希望を聞かれなかったというのは、もはや手の施しようがないということなのか、祖父はそれほど衰弱していたのか…と思いきや、病院に行きたくなくて朝から大暴れで抵抗したり、帰り際も全力で怒っていたりと、意外と元気なのか?と思うこともあって、こちらも気持ちが落ち着かなかった。

 何が正解だったのか、本当にこれでよかったのかわからない。だけど同時に、筆者も父も祖母にも、これしかできることがなかったのだとも思う。

 とにかく今は祖父の身体のつらさが少しでも楽になることを祈るしかない。

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