孫が見た《老々介護の課題》祖父は痛みを訴えるも通院は拒否、祖母は困惑…「誰のためのケアなのか?」
高齢者同士の夫婦による「老々介護」が増えている。内閣府「令和7年版高齢社会白書」によると、介護を担うのは7割が女性で、配偶者の割合が最も多い。長年母のケアを続けてきたヤングケアラーのたろべえさんこと高橋唯さんの祖父母も老々介護に直面。病を抱えた祖父を祖母が介護することになり――。孫が感じたケアの課題とは。
執筆/たろべえ(高橋唯)さん
「たろべえ」の名で、ケアラーとしての体験をもとにブログやSNSなどで情報を発信。本名は高橋唯(高ははしごだか)。1997年、障害のある両親のもとに生まれ、家族3人暮らし。ヤングケアラーに関する講演や活動も積極的に行うほか、『ヤングケアラーってなんだろう』(ちくまプリマー新書)、『ヤングケアラー わたしの語り――子どもや若者が経験した家族のケア・介護』(生活書院)などで執筆。 https://ameblo.jp/tarobee1515/
初めての介護タクシー利用
父方の祖父母の「老々介護」が始まった。90代の祖父を80代の祖母がサポートしている。先日、祖父の要介護認定が下り、判定は「要介護2」。ケアマネジャーさんとケアプランを決め、通院時に介護タクシーを利用することが決まった。本当は訪問介護や入浴介助サービスも利用したいところだったが、祖父本人は望んでおらず、利用に至らなかった。
→前回の記事:孫が見た《老々介護の実態》祖父のケアプランを決める場に同席「介護サービスを選ぶのは難しい」
祖父は過去に前立腺肥大になったことがあり、3か月に一度、泌尿器科に定期通院している。身体が弱くなってきてからは筆者か父が都合をつけて通院に連れて行っていたが、もし今後、通院の頻度が増えてきたら常にどちらかの都合がつくとは限らないので、介護タクシーを利用してもらうことにした。
通院日の前日、祖母に連絡して段取りがわかっているかどうか確認するように父に頼んでいたところ、先にタクシー会社から父に連絡があった。なぜ祖母ではなく父に連絡が来たのだろう?と思い、祖母に聞いてみると「知らない番号だったから出なかった」とのこと。
後日確認すると、タクシー会社の代表電話は祖母のスマホに登録していたが、その番号とは違う番号から連絡が来ていたので、また新たに登録しておいた(祖母は自分ではスマホに連絡先を登録できない)。
祖母には詐欺には気をつけるように、知らない番号からの電話には出ないようにと口酸っぱく言っているので、きちんと警戒しているとわかったのはよかった。しかしながら、今後、祖父のケアにかかわる人が増え、様々な連絡も増えると、少々不便になってくるので悩ましい。
祖父の状態は思わしくない?
また、祖母は「夫(祖父)はもう10年以上も同じ病院に通ってるけど、はじめてお医者さんから連絡があった」とも言っていた。状態は変わりないか、明日は病院に来られそうかと聞かれたとのことだった。
地域では大きい病院なので、患者個人に医師から直接連絡が来るというのはそうそうないことだろう。体力の問題で詳しい検査はしていないが、それだけ祖父の状態は思わしくないのかもしれないと思った。
祖母はひとりで病院に付き添って医師の話を聞いてくることに不安がありそうだったが、付き添いもお願いするとなると1時間3200円かかるということで、ひとまず今回はお願いせず、なにかあったら筆者もすぐ駆けつけられるようにした。
介護タクシー利用はうまくいったが、別の心配事が…
通院から数日後、祖母から連絡があった。介護タクシーは行きも帰りもスムーズに利用できたとのことだった。医師からも特に変わったことは言われていないそうだが、祖母としては気になることがあって連絡してきたようだ。
「じいちゃんが最近、かなり脇腹を痛がっている。痛みを訴える場所が日によって違う。とにかく激しく痛がるので見に来てほしい」とのことで、父が確認に行くと、息をするだけでも痛がっていたらしい。
祖母としては病院でも先生に伝えたつもりだが、特に処置はされなかったと言う。祖父は家の中でしょっちゅう転んでいるので、骨折の可能性もあるのではないかと思うが、祖母がそこまで伝えられているかは定かではない。そもそも泌尿器科では対応できなかったのではないかとも思う。
祖母はケアマネジャーさんにも相談し、ちょうど祖母自身の通院の日が近かったので、筆者が祖母と同じ病院に祖父も連れて行くということになった。
祖父が通院を拒否「次の通院まで痛みに耐えられるのか?」
ところが、いざ祖母の家に行ってみると、出てきたのは祖母ひとりだった。祖母は一緒に病院に行こうと祖父に伝えたのだが、激しく抵抗されてしまい、結局連れて行くのは難しいと判断したそうだ。
筆者からも説得しようかと思ったが、これまでの経験上、祖父は一度行かないと決めたら、そこでいろいろ言ってもかえって興奮させてしまうとわかっていたので、この日は祖母だけを病院に連れて行った。
祖父はとにかく病院嫌いで、理由がわかればいいのだが、会話も難しく、泌尿器科の定期通院以外にはなかなか行ってもらえない。次の定期通院は3か月後だが、今の様子ではおそらくそれまで痛みに耐えることはできないと思う。
ケアとは、誰のためのものなのだろうか
ケアマネジャーさんにも経緯を報告したが、やはり本人が病院に行く気にならない以上、無理矢理連れて行くことはできないそうだ。
もちろん、ケアを受ける人の意向に沿ったケアが提供されることは1番大切だが、ケアラー経験のある筆者としては、やはり祖母の負担も気になるところだ。
祖父の移動や入浴も祖母が手伝っているが、スムーズにいかないことが多いようで、祖父が抱える痛みによる影響も大きいと思う。これでもし、介護中に祖父が怪我をするようなことがあった場合、祖母が「痛みで動きにくいと知っていて、どうして病院に連れて行かなかったのか」と言われてしまうこともあるのだろうか。
祖母が自分の都合ではなく、祖父の気持ちを優先してケアをしていることは、ある意味「正しいケアの在り方」なのに、それで責められるのは解せない。ケアとはいったい、誰のためのものなのだろうか…。
ヤングケアラーに関する基本情報
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■ヤングケアラーとは
ヤングケアラーとは、家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている子どものこと。近年は子どもから大人になってもケアが続くこともあるため、18才~おおむね30才までをヤングケアラーと呼んでいる。
■ヤングケアラーの定義
『ヤングケアラープロジェクト』(日本ケアラー連盟)では、以下のような人をヤングケアラーとしている。
・障がいや病気のある家族に代わり、買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしている
・家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている
・障がいや病気のきょうだいの世話や見守りをしている
・目を離せない家族の見守りや声かけなどの気づかいをしている
・日本語が第一言語でない家族や障がいのある家族のために通訳をしている
・家計を支えるために労働をして、障がいや病気のある家族を助けている
・アルコール・薬物・ギャンブル問題を抱える家族に対応している
・がん・難病・精神疾患など慢性的な病気の家族の看病をしている
・障がいや病気のある家族の身の回りの世話をしている
・障がいや病気のある家族の入浴やトイレの介助をしている
■相談窓口
・こども家庭庁「ヤングケアラー相談窓口検索」
https://kodomoshien.cfa.go.jp/young-carer/consultation/
・児童相談所の無料電話:0120-189-783
https://www.mhlw.go.jp/young-carer/
・文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」:0120-0-78310
https://www.mext.go.jp/ijime/detail/dial.htm
・法務省「子供の人権110番」:0120-007-110
https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken112.html
・東京都ヤングアラー相談支援等補助事業 LINEで相談ができる「けあバナ」
運営:一般社団法人ケアラーワークス
https://lin.ee/C5zlydz
