自律神経を整えるカギは「腸」 研究の第一人者が教える腸内環境改善の秘訣は「朝のコップ1杯の水」
自律神経が乱れると心身にさまざまな不調が生じ、病気の原因となることもある。自律神経を整えるための効率的な方法が「腸を整えること」だと話すのは、『科学的に証明された自律神経を整える習慣』(アスコム)を上梓した順天堂大学医学部教授の小林弘幸さん。小林さんによると、腸が整えば自律神経も整うといってもいいほどであり、そこには「脳腸相関」が影響しているという。脳腸相関とは何か、なぜ腸を整えると自律神経が整うのかについて詳しく教えてもらった。
脳と腸はつながっている
「脳腸相関」とは、脳と腸が密接に関係していることを指す医学的な名称。例えば、重要な会議や大勢の前での発表など、緊張やプレッシャーの強い場面で急にお腹が痛くなるといったことも、脳腸相関によるものだ。
「これが、典型的な『脳腸相関』の悪い例です。脳の感じた強いストレスが副交感神経を弱めてしまい、腸の働きが急に悪くなるというわけです」(小林さん・以下同)
幸せホルモンの多くも腸でつくられる
一方、脳腸相関のいい例は感じ取りにくいが、実は「幸せ」「充実」といったプラスの気持ちがあるときは脳腸相関のいい例といえる。感情や気持ちとして認識している状態を決定づけるための神経伝達物質の多くが腸で生成されており、腸内環境が整っていると、プラスの感情が生まれやすくなるためだ。実際に、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの約95%は腸で作られていることもわかっている。
「セロトニンには、『交感神経』と『副交感神経』の2種類の神経を調節する働きを活性化させることにより、心のバランスを整える作用があります。つまりは、腸が健康でいるとお腹の調子がよくなるだけでなく、自律神経も整い、『幸せ』を感じることもできてしまうというわけです」
腸内環境は努力で改善可能
多くの人は、自分の腸の状況を把握していないが、腸内環境は努力で改善できるもの。腸には400~500種類以上、個数にすると約40兆個以上の腸内細菌がいるが、この菌のバランスを整えることが腸内環境を整えることだ。腸内細菌は大きく「善玉菌」と「悪玉菌」に分かれるが、これらは遺伝的な影響をあまり受けず、基本的には食生活の環境によって変わってくる。
「家族みんなが肥満気味、という状況は珍しくありませんし、腸内環境以外の遺伝的要素はありますが、むしろ食生活がほぼ同じであることによって腸内環境がよくない方向に似てしまっていると考えられます」
まずは朝の1杯の水を習慣に
腸内環境を整えるために、最初の一歩として小林さんがすすめているのが、「朝起きたら、食事の前にまずコップ1杯の水を飲む」ことだ。
朝の水は腸を刺激し、腸のぜん動運動が促されるため、便秘の解消に役立つ。便秘が解消されると腸の動きがさらに活発になるほか、頭痛や疲労の解消、体が冷えにくくなるといった自律神経が整ったことによる効果も現れやすい。
「冷水が苦手なら白湯や常温水でもOK。朝だけでなく、1日を通じて合計1.5リットル程度の水を毎日飲むように心がけるといいでしょう」
腸の健康を保つには発酵食品と食物繊維
腸内環境をよくしていくなら、発酵食品と食物繊維が重要だ。発酵食品は乳酸菌を多く含んでおり、腸内に入った乳酸菌は善玉菌のエサとなったり、悪玉菌の繁殖を抑えてくれたりする。食物繊維は腸の動きを助け、排便をスムーズにするといった、腸内環境を整えるための重要な役割を担っている。
食物繊維には、水に溶けやすい「水溶性食物繊維」と、水に溶けにくい「不溶性食物繊維」があるが、水溶性食物繊維は便の水分を増やして排出しやすくし、不溶性食物繊維は便のかさを増やして腸の動きを活発にするという働きがある。
「基本的には、両方をバランスよくとるのがいいでしょう。ただし、便秘がちの人が不溶性を食べすぎると、ガスが出すぎたり、お腹が張ったりする場合もあります。その場合は、まず水溶性からとるようにしてみてください」
おすすめは小林さん考案の「長生きみそ汁」
腸内環境を整えるための食事として、小林さんがすすめているのが「みそ汁」だ。なかでも、小林さんが考案した「長生きみそ汁」は、一般家庭のみそ汁とは違う材料を使っており、腸内環境を整える効果が高く、普段から取り入れる食べ物としておすすめだ。
《「長生きみそ玉」の材料/10個分》
赤みそ(抗酸化力を高めるメラノイジンが豊富)…80g
白みそ(ストレスを抑えるGABAが豊富)…80g
おろし玉ねぎ(解毒効果の高いアリシン、ケルセチンが豊富)…150g
りんご酢(塩分排出効果の高いカリウムを含む)…大さじ1
「これらをすべて混ぜ合わせてベースとなる『みそ玉』を作り、1日1杯、みそ汁をとります。なお、みそは冷凍して保存もできますし、だしなどで味の好みも調節できます」
野菜やたんぱく質でバランスもとれる
みそ汁の具を工夫するのもおすすめだ。例えば、オクラや里いも、なめこ、にんじん、ごぼう、さつまいもといった食材は腸活にいいため、腸内環境がさらに改善する。また、肉や魚などの動物性たんぱく質を加えれば、みそ汁1杯でバランス良く栄養をとることができる。
「自律神経と腸を整える『最強のみそ汁』を、ぜひ毎日の食生活に取り入れてみてください」
教えてくれた人
小林弘幸さん/順天堂大学医学部教授
こばやし・ひろゆき。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。順天堂大学医学部卒業、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属医学研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任する。自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手、アーティスト、文化人へのコンディショニング、パフォーマンス向上指導に関わる。著書に『医者が考案した「長生きみそ汁」』(アスコム)、『整える習慣』(日経ビジネス人文庫)など。
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