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暮らし

孫が見た《老々介護》急展開「入浴や通院を嫌がる祖父がたどりついた場所」

 国民生活調査(2022年)によると、介護する人・される人が共に75才以上の「超老々介護」は4割に近い状況となり、現在はもっと増えていることが予測される。ヤングケアラーの経験を発信している、たろべえこと高橋唯さんの祖父母も老々介護に直面し、困ったことが起きている。90代の祖父を80代の祖母が介護しているが、刻々と状況は変化し――。

執筆/たろべえ(高橋唯)さん

「たろべえ」の名で、ケアラーとしての体験をもとにブログやSNSなどで情報を発信。本名は高橋唯(高ははしごだか)。1997年、障害のある両親のもとに生まれ、家族3人暮らし。ヤングケアラーに関する講演や活動も積極的に行うほか、『ヤングケアラーってなんだろう』(ちくまプリマー新書)、『ヤングケアラー わたしの語り――子どもや若者が経験した家族のケア・介護』(生活書院)などで執筆。 https://ameblo.jp/tarobee1515/

祖父のデイサービス利用が決まったが…

 昨年の年の瀬、父方の祖父母の「老々介護」が本格的に始まった。90代・要介護2の祖父を80代の祖母がサポートしている。

 最近の祖父は家で風呂に入ることが難しくなってきた。そこで、デイサービスに通って入浴介助を受けられるように手はずを整えた。ケアマネジャーさんは、祖母から現状を聞いてすぐにデイサービスに通えるよう手配してくれたのだが、祖父はどうにも外出を嫌がっている。そこで数日間の説得する期間を設けることになり、ようやくデイサービスの初回利用の日になった。

 デイサービス初日、祖父はちゃんと出かけることができたのか? 祖母に電話で聞いてみた。

「お迎えの人が来てくれたんだけど、やっぱりとにかく嫌がって行かなかったの。でね、お迎えにはデイサービスの看護師さんも来てくれて、じいちゃんの身体を見てくれたんだけど、すぐ病院に行ったほうがいいって。お父さんから聞いてない?」

 という訳で、今度は父に話を聞いてみると、

「ケアマネジャーさんから電話が来て、看護師さんがじいちゃんの身体を確認したら床ずれができているから、病院で診てもらった方がいいって」

通院の調整はさながらリモートワーク?

 どう見ても早急に病院に連れて行くべきなのは明白なのだが、それでも本人は絶対に合点しないので、どうやって連れ出せばいいのかわからない。

 祖父が唯一行ける病院は、3か月に一度の定期検診に通っている泌尿器科だけだ。定期検診はまだ先だし、泌尿器科では適切ではないような気もしたが、ひとまずこの病院から行けるかどうかあたってみることにした。

 職場にいる父、離れて暮らす祖母、病院とそれぞれ連絡を取って調整していると、介護というよりは一種のリモートワークのような気がしてきた。

 病院に連絡するためには祖母ともやり取りが必要だが、電話で「じいちゃんの患者番号は?」と聞くと、「患者番号ってどれ?」と返ってきた。

「わからないなら診察券の写真を撮って送って」と返すと、診察券ではないなにか(診療明細書?ピンボケでよくわからない)の写真が送られてきた。仕事中の父にもすぐには連絡がつかず、なかなかもどかしい。我が家のリモート介護は、リモートワークほどスムーズにはいかないものなのかもしれない…。

祖父は病院に行けるのか?

 結局、次の日にいつもの泌尿器科を予約外受診できることになった。

 翌朝、父が祖父を病院に連れて行くということで家を出たが、もう病院に着いていてもいい頃なのに連絡がない。やはり手間取っているのだろうな…と思っていたところ、ようやく父から連絡が来た。

「車に乗せるのがすごく大変だった!」とのことで、後から話を聞いてみると、「連れて行こうとすると家中の柱にしがみついて嫌がるから、なかなか玄関までたどり着けなくて…。

 玄関から車までは抱きかかえて移動したんだけど、車にたどり着く頃にはじいちゃんがズルズルと落っこちてきて大変だった。なんとか車まで着いたけど、椅子の高さまでじいちゃんを持ち上げることができなくて、本人も座ろうとしてくれないから、仕方なく床に横に寝かせたんだよ」

 父の車はワゴンタイプなので、後席の足元が広くて助かったが、筆者の車は軽自動車なので、筆者が迎えに行っていたら乗せられなかったかもしれない。

「病院に着いたら、見かねた看護師さんが車まで来てくれたんだけど、まさか床に寝てるなんて思わないからさ、患者さんはどこですか?って言われちゃったよ」

 身内ということもあり、想像すると滑稽で笑ってしまうのだが、父と祖母はかなり大変な思いをしたことだろう(もちろん祖父も)。

祖父は救急外来へ、午後から筆者がバトンタッチ

 祖父は車の床から4人がかりでなんとかストレッチャーに移されたが、明らかに状態が悪いので、泌尿器科ではなく救急外来へ回してもらえることになった。

 その後CT検査や血液検査など様々な検査をすることになったが、午後から父は仕事に行かなくてはならないため、代わりに筆者が病院に向かってバトンタッチすることになった。

 筆者が病院に着くと、検査は終わっていて、診察室で父と祖母がスタッフさんから話を聞いているところだった。
家族が希望するなら入院できるとのことで、より自宅近くの病院で入院できるように調整が進められていた。もし入院できずにまた家に帰ることになったらどうしよう…と思っていたので、ひとまず安心した。

限界近くまで祖父のケアをした祖母

 入院調整を待っている間、看護師さんが祖母に「お母さん、すごく頑張ったんですね」と声をかけてくださった。祖母としてはなるべく在宅でケアをしたい気持ちがあったようだが、共倒れ寸前まで本当によく頑張ったと思う。

 祖父に対しても、無理矢理嫌な思いをさせて申し訳なかった。もっと早くかかわっていれば、なにが限界まで祖父を病院から遠ざけていたのか知ることができたのかもしれない。

 自力で歩けなくなってきた祖父の通院や入浴まで、祖母はひとりでサポートしてきた。

 介護保険サービスを利用できれば安心と考えていたが、実際にはそもそも利用するまでが大変で、利用してからも上手に使いこなすことができなかった。筆者は障害のある母をケアしてきた経験があるからと高をくくっていたが、高齢者の介護にはまた違った難しさがあると感じた。

 祖父が入院することで、祖母が少し休めるとよいのだが…。

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