要介護認定に影響大《主治医意見書》「納得できる要介護度の判定を得るために家族ができること」【社会福祉士解説】
介護保険サービスを使うにあたり、要介護認定に必要となる「主治医意見書」。家族はどんなことに気をつければいいのだろうか。準備しておくとよいものなどについて、社会福祉士の渋澤和世さんがご自身の介護経験をふまえ、アドバイスしてくれた。
この記事を執筆した専門家/渋澤和世さん
在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)、監修『親と私の老後とお金完全読本』(宝島社)などがある。
要介護認定を左右する「主治医意見書」
「主治医意見書」は、介護保険サービスを使うために必ず必要となります。要介護認定の鍵となるものであり、その内容次第で要介護度が変わることもあるほど重要な書類です。要介護認定の結果によって、介護保険サービスに利用できる上限金額*が変わるため、介護費用に大きくかかわってきます。
しかし、”医師に任せておけば大丈夫”と考えているご家族が意外に多く、その情報もあまり広く知られていないと思います。まずは、どんな内容で、どんな風に活用されるのか確認しておきましょう。
*要支援1~2、要介護1~4の段階が上がるほど介護サービス費用の上限額が高くなる。
主治医意見書はどのように活用されるのか?
介護が始まるときに備えて、要介護認定の流れを確認しながら、主治医意見書が必要となるシーンを確認しておきましょう。
要介護認定の申請をすると、まずは市区町村の調査員が自宅や施設を訪問し日常生活や心身の状態を確認し、「認定調査票」を作成します。
そして市区町村から主治医に「主治医意見書」の作成が依頼されます。主治医意見書は、市区町村に申請し、市区町村から病院や医師に依頼が届く流れが一般的です。
認定調査と主治医意見書、この両方の結果を参考にコンピュータによる一次判定が行われます。その後、介護認定審査会が最終的な要介護度を判定します。
主治医意見書に記載される内容
次に主治医意見書はどのような項目で構成されているのかを見ていきましょう。
【1】傷病に関する意見(病名、経過など)
【2】特別な医療(点滴や人工透析などの有無)
【3】心身の状態に関する意見(理解や記憶、身体の麻痺・拘縮など)
【4】生活機能とサービスに関する意見
【5】特記すべき事項(1~4以外に必要な情報)
【1】~【4】までは、事実が淡々と書かれるもので、コンピュータによる一次判定で参考とされます。しかし、コンピュータがどのような判断しているのかは明かされておらず、どうしてその要介護度になったのか説明されることはありません。本来の本人の状態と異なっている、家族が望む結果ではないケースもあるかもしれません。
ポイントになるのは「特記事項」
納得いく結果を得るために、筆者が最も重要と考えるのは【5】の特記事項です。
この欄には、配慮されるべき生活背景や状況を盛り込むかが非常に重要となります。有用な情報が記載されていれば、審査会のメンバーがそれを参考にコンピュータの出した要介護度に疑問を感じ、変更されるケースもあるからです。
納得いく要介護認定の結果を得るために家族ができること
定期的に診察を受けている主治医であったとしても、実際の生活の大変さまではわかりません。家では全くできないことでも医師の前では気丈に振る舞って本来の状態とは違ってしまうこともあるかもしれません。納得のいく認定結果を出してもらうためには、医師に自宅での姿を知ってもらう必要があります。
主治医意見書そのものは医師が作成しますが、その情報を提供するのは家族の役割でもあります。
筆者の母は認知症が進行して要介護認認定を受けることになり、主治医意見書が必要になったときのこと。市区町村から医師に依頼が届く前に、親を連れて主治医に相談に行きました。
診察時、A4に収まる範囲で次の内容を記載したメモを、主治医意見書を依頼したことを伝えたうえでメモをお渡しました。すると医師からは「大変助かります。こちらを加味して記載しておきますね」と言われました。
メモを作って主治医に渡しておくと安心
以下の内容を盛り込み、記載したメモを作っておくことをおすすめします。
・氏名・生年月日・年齢
・病歴
・介護に至った状況や現状
・本人の身体状況と介護状況
【1】本人の能力
【2】介助していること
【3】問題行動
主治医意見書は医師から直接自治体へ郵送されます。内容を確認したいのであれば、診察の際、受付や医師に「意見書の控え(コピー)をいただけませんか?」と丁寧にお願いしてみましょう。もしくは自治体の窓口で「保有個人情報開示請求」手続きを行うことで写しを入手できます。
筆者はこれらの手続きはしていないので、意見書の内容はわからないのですが、メモを渡したことが功を奏したのか、母は要介護5の判定となりました。
なお、この用紙は、同じものを認定調査員にも渡しました。異なった情報で認定が進まないことが本人、そして家族の今後のためにも外せない行動だと思っています。ぜひ今回の内容を要介護認定の際に参考にしてみてください。
