肩こりや腰痛の対策、実は原因にアプローチできてないことも こりや痛みの原因「ファシア」とは?《理学療法士が解説》
肩こりや腰痛に悩み、マッサージを受けたり、解消法を試したりしたのによくならないと感じている場合、それは原因にアプローチできていないからかもしれない。こりや痛みを解消するにあたって、原因と症状は別で考えたほうがいいと話すのは、『筋肉のつながりを知れば「肩こり」と「腰痛」は自分で解消できる』(アスコム)を上梓した、理学療法士の沖倉国悦さん。どういうことか、詳しく教えてもらった。
教えてくれた人
沖倉国悦さん/理学療法士
おきくら・くによし。治療家育成講師、整体師、サンミュージック所属。理学療法士として16年間勤務するなか、リハビリスタッフ130名を超える病院で係長も務めた。原因不明の痛みやこりに向き合う中で、テコの原理を応用した独自の手技「六層連動操法」を開発。現在は表参道に整体院を構え、重症患者の施術を行うほか、整体技術「六層連動操法」を普及させるため、セミナー講師として東京・大阪で活躍中。著書に『筋肉のつながりを知れば「肩こり」と「腰痛」は自分で解消できる』(アスコム)など。
こりや痛みと原因は別の場所にある
こりや痛みといった症状は、長時間のデスクワークや立ち仕事などで筋肉を使い過ぎ、筋肉が疲れて固くなることで引き起こされる。しかし、固くなった筋肉をほぐしたり、筋肉を休めたりしても、こりや痛みは改善しない。それは、痛みが出ている箇所にはアプローチしているが、原因となっている箇所にはアプローチできていないためだ。
「原因が改善されないために、またすぐに筋肉は固くなり、こりや痛みという症状となって現れてしまう。こりや痛みがいつまでも続く(慢性化する)のは、そのためです」(沖倉さん・以下同)
原因は「ファシア」にある
筋肉を固くしてしまう根本の原因は、「『ファシア』の癒着です」と沖倉さん。ファシアというのは筋肉や骨、内臓、神経を包んでいる膜のことで、「筋膜リリース」などで話題になった、筋肉を包む膜である「筋膜」もファシアの一部だ。
「この筋膜が、筋肉の疲労やさまざまな原因で、骨やほかの筋肉、筋膜同士でくっついてしまう(癒着してしまう)ことが、こりや痛みの原因なのです」
根本改善が難しいのは癒着が体の深部で起こるから
ファシアの癒着には、症状のある部位の筋膜が癒着しているパターンと、症状がある部位とつながる、別の場所の筋膜が癒着しているパターンがある。症状のある部位の筋膜が癒着しているのであれば、こりや痛みがある箇所をマッサージすれば解消できるのではと思いきや、マッサージなどで外側からほぐすだけでは、ほとんど取り除けないという。
「なぜなら、癒着は体の外側ではなく、骨のファシアとの癒着など、体の深部で起こっていることが多いからです。外側から働きかけるマッサージだけでは、癒着によってできた、体の外側の筋肉のこり(筋肉が固くなっている状態)をほぐすことはできても、体の深部の癒着までは、効果が届かないのです」
症状とは別の場所が癒着しているとさらに解消が困難
症状がある部位とつながる、別の場所の筋膜が癒着している場合はさらに解消が難しい。一箇所の筋肉が癒着して動きが悪くなると、それをカバーしようとして別の筋肉に負担がかかり、過度な負荷によってこりや痛みが生まれる。しかし、筋肉の癒着自体は自分で実感することすら困難で、癒着している箇所が不明な場合、当然対処も難しくなる。
「さらにいえば、癒着は、レントゲンに写るものでもないですし、触ってすぐに気づけるものでもありません。そのため、どこに行っても何をしても、根本的に解決するのが難しく、『肩が痛いのは職業病だから仕方ない』『こりや痛みは、一生付き合うもの』と最終的にあきらめてしまっている人が多いのです」
癒着がこりにつながるメカニズム
肩から手までのライン上の筋肉と筋膜が柔らかくしなやかであれば、手や肩はスムーズに動く。しかし、筋肉と筋膜のラインが途中で引っかかっていると、動きはスムーズではなくなる。この「引っかかり」が癒着であり、癒着によって発生するこりだ。
「こりは、さらなる動きにくさを生み出し、ライン上にさらなる癒着やこりを生み出し、どんどんと動かしにくくなっていくのです」
滑走不全で痛みが生じるように
癒着やこりなどによって筋肉が動かしにくくなることを滑走不全という。滑走不全が進むと関節を動かせる範囲が小さくなるうえ、無理に動かそうとすると筋肉や関節が損傷し、痛みが生じるようになる。
「柔らかい生の食パンは弾力性があり、引っ張ってもなかなかちぎれませんが、焼いて固くなると、簡単にちぎれるようになりますよね」
筋肉も同様に、こりで固くなると傷つきやすくなるのだという。
「つまり、癒着が起きてしまうことで、滑走不全→こり→痛みの連鎖が起きやすくなってしまうのです」
どこかで癒着が起きると全体に影響する
筋肉が「駅」、筋膜が「線路」だとすると、線路である筋膜に癒着という不具合が発見されると、滑走不全という形で電車が円滑に運行しなくなり、駅が人で混雑したり、家に帰れない人が出てきたりと、こりや痛みのような具体的な問題が生じるようになる。さらに、どこかで線路に不具合が起きると、その路線すべてに遅延や運休などの影響が出るが、筋肉や筋膜も同様に他の箇所にも影響する。
「筋肉は筋膜でつながっているので、同じように、癒着という不具合が起きると、そのライン上にあるすべての筋肉・筋膜に影響が生じるということです」
癒着は主に「炎症」によって発生する
「自分を治そうとする体の反応」である「炎症」が癒着の原因となることが多い。体の深部で炎症が起きると、接着剤のような役割を果たす「フィブリン」という物質が分泌され、筋肉や筋膜などをくっつけてしまい、「癒着」という状態になる。
炎症は、筋肉の酷使や長時間の同じ姿勢などで特定の筋肉に負担が集中すると起こりやすい。また、風邪などの病気になったり、血糖値や血圧が高かったりする場合も要注意だ。さらに、ストレスによって炎症が発生することもある。
「ストレスが続くと、心と体の橋渡し役である自律神経が乱れ、体の奥で小さな炎症が静かに広がっていきます。『心の緊張が、体のこわばりをつくる』というのは、まさにこの現象なのです」
癒着を防ぐには、炎症を防止する必要がある。そのため、同じ姿勢を続けないよう定期的に体を動かしたり、健康に留意して風邪などを防いだり、ストレスを溜めないようにしたりすることを意識するのが大切だ。
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