2000人を看取った在宅緩和ケア医の萬田緑平さん「最期の瞬間に立ち会えなくても、本人も家族も後悔することは少ない」と考える理由
自宅で穏やかな最期を迎えるために必要なことは? 本人も家族も後悔しないために何が必要なのか――。2000人の患者を自宅で看取った在宅緩和ケア医の萬田緑平さんが、対談を含めて60ページに渡って在宅医療についての解説を手がけた倉田真由美さんの著書『夫が「家で死ぬ」と決めた日 すい臓がんで「余命6か月」の夫を自宅で看取るまで』から、エピソードの一部を紹介する。
本人も家族も「ありがとう」を伝え合おう
「あれもできなかった、これもできなかった」と後悔しながら亡くなる人を大勢見てきました。これまで2000人以上の患者さんの看取りにかかわってきて思うのが「いつその時が来てもいいように、今を生きる」ことの大切さです。
最期のお別れの時に「ありがとう」と涙を流すシーンがドラマや映画で描かれることがあります。また、病院で心電図を見ながら、家族でドキドキハラハラして、その瞬間に医師が「ご臨終です」というのも私としては違和感があります。
ぜひ元気なうちから感謝を伝え合ってほしいと思います。人はいつ病気になって、いつ死ぬかわかりません。いや、必ず別れは訪れるのです。亡くなってから「感謝を伝えられなかった」と後悔しないようにしたいものです。
最期の瞬間が大事なのではない
日頃から「ありがとう」を伝え合っていれば、最期の瞬間に立ち会えなかったとしても、本人も、見送る側のご家族も後悔することは少ないと思います。
患者さんのご家族によくお話ししているのが、最後の瞬間を看取るのは1ポイント。家に帰って好きなようにさせてあげるのが300ポイントで、「ありがとう」を言ったらプラス200ポイント。すでに500ポイント貯まっているんだから、最期に1ポイントを無理して重ねなくてもいいということ。その瞬間に立ち会うために、家族も無理して四六時中ベッドに付き添わなくても大丈夫なんです。患者さんのご家族には「仕事も休まず続けてくださいね」と伝えています。
生きているうちに、ありがとうを伝え合い「いい人生だった」と感じられていれば、穏やかな旅立ちの準備はできていると言えるのです。
プロフィール/萬田緑平
1964年生まれ。群馬大学医学部卒業。大学病院の外科医として多くののがん患者の手術や抗がん剤治療を行う中で医療や看取りについて疑問を感じ、2008年から緩和ケア診療所に勤務。2017年「緩和ケア萬田診療所」を設立し、患者と家族のケアを続ける。『家で死のう!』(フォレスト出版)など著書多数。出会った患者と家族の日常と看取りまでを追ったドキュメンタリー映画『ハッピー☆エンド』も話題に。
撮影/五十嵐美弥
