セコムグループが手がける「安心」がテーマの介護付有料老人ホーム<後編>
オープン間近の話題の施設や評判の高いホームなど、カテゴリーを問わず高齢者向けの住宅全般を幅広くピックアップし、実際に訪問して詳細にレポートしている「注目施設ウォッチング」シリーズ。
今回紹介するのは、介護付有料老人ホーム「アライブ品川大井」だ。
アライブ品川大井
前回は「アライブ品川大井」のホーム長である里見総一郎さんに入居者やその家族に安心を提供するための理念や工夫を聞いた。今回の後編では安心をさらに進化させるための取り組みを紹介する。
介護付有料老人ホームは、入居者が毎日の生活を送る場である。それは決してただの建物ではない。ハード面ももちろん快適さに影響を与えるが、それ以上に重視したいのがソフト面、運営の部分である。施設を見学する際にぜひ見ておきたいのが、入居者向けの掲示板や制作物、体操や園芸などアクティビティの多さ、入居者に対する具体的な取り組みだ。
掲示板には施設内で行われているアクティビティやイベントなどの案内が貼られていることが多い。それを見ると、それぞれの施設が何に力を入れているのかが良く分かる。体を動かすこと、音楽、地域との交流などそれぞれのカラーが必ず出る。スタッフが手作りのお知らせを作って掲示していることも多いので、雰囲気がにじみ出るのだ。アライブ品川大井はアットホームな雰囲気のものが多く、入居者の日常に寄り添っている印象だ。
「園芸を通じて花や緑の成長に関わることは、お気持ちに良い影響を与えます。お友達と一緒にトマト、キュウリなどの収穫を楽しんでいます。メロンの収穫の時は盛り上がりました」(ホーム長の里見総一郎さん 以下「」内は同)
入居者の自分史を作り認知症ケアに活用
アライブ品川大井では認知症のケアにも力を入れている。会社全体でも自立支援ケアに力を入れて取り組んでおり、健康な状態を維持していくために必要な毎日の水分量や食事、排泄、運動などが日常のケアで把握され、継続的な改善がされている。生活の質を上げるための取り組みに力を入れているのだ。
「活き活きとした生活を送るためには、体の不調を減らす、なくしていく取り組みが必要です。毎日が不調であれば、気持ちが萎え、活力が湧きません。まずは日常生活の飲む、食べる、排泄、運動の基本ケアで体調を整えます。そして、体操に参加する、アクティビティに参加する、友人ができる…というように生活の行動範囲を広げ、社会性の維持、快復の機会とすることが日常生活の質の向上につながっていくと考えています」
認知症のケアに力を入れていくためには、入居者一人ひとりをよく知ることがベースになる。スタッフ都合のケアでは生活の質は上がらない。どのような人生を送ってきたのか、生活歴、家族構成の変化、好きな呼ばれ方、性格の変化などを本人、家族、友人から聞き取りをし、ケアのヒントを集めているという。
「全社的な取り組みとして、ご入居者の自分史を作ることに取り組んでいます。空の年表をご用意して、例えば東京オリンピックの時にどういった生活、仕事をされていたのか、どのような家族構成、人間関係があったのか、などをお聞きします。その方ご自身の人生回顧をし、ケアのヒントを探します。これをRDR(retrospective data research:レトロスペクティブデータリサーチ)と呼んでいます」
自分史を作る過程で分かることを日常の認知症ケアにも活かしているという。
「お名前の呼び方を変えるだけで安心されることがあります。好きな活動を知り、不安を和らげ熱中できる環境を提供することで、生活が良い方向に激変することもあります。そこに行きつくまでは試行錯誤・失敗もありますが、お一人おひとりに合わせたケアへの努力、工夫をすることが、この仕事のやりがいです。
認知症になるリスクは誰にでもあります。私達が聞き取った事柄が将来その方が認知症を患った時に回想するきっかけとなり、穏やかな生活を送るためのヒントになる可能性があります。全てのご入居者に担当を決め、取り組みを進めています」
スタッフが定期的に認知症の勉強会に参加
高齢者のケアを行う専門職は理論も学び、資格を取っている。しかし、現場で過ごす時間が長くなり、特定の状態の高齢者とだけ接する時間が長くなると、その経験を重視してしまう危険性がある。運営会社のセコムグループ「アライブメディケア」では、認知症の研究を行っている羽田野政治氏(認知症高齢者研究所所長)の下で定期的な勉強会に参加する機会をスタッフに与えている。
「個人の経験や勘だけに頼っていると、介護サービスの全体の水準を高めていくことが難しくなってしまいます。経験の少ないスタッフでも適切なケアができるようにするためには、理論も必要です。認知症の研究をしている羽田野先生の定期的な勉強会に参加させていただき、学んでいます。スタッフに1年間先生の講義を聞く機会を作って、修了証をもらう取り組みを実施しています」
理論を学ぶことで認知症がどう変化するのか、また進行予防に必要な生活習慣を組み立て、日々のケアに取り組めるという。スタッフ個人の経験や勘だけに依存せず、会社全体で水準を高めていく取り組みが行われているのだ。したがって、スタッフによってケアの水準が違うといったことに悩まされることはないだろう。
アライブ品川大井には、まさに安心感がある。それを作り出しているのは、ホーム長の里見さんとスタッフが理念に基づいて行っている誠実な取り組みである。さらにセキュリティといったハード面の備えがバランス良く整えてある。会社としての地道な努力の積み重ねが確かに活きている施設である。安心をキーワードにしている方にはぜひ見学をお勧めする。
* * *
【データ】
施設名:アライブ品川大井
公式WEBサイト:http://www.alive-carehome.co.jp/home/shinagawa_oi/index.shtml
所在地:東京都品川区大井5-21-18
最寄駅:JR京浜東北線「大森」駅 徒歩10分
類型:介護付有料老人ホーム(一般型)
運営主体:株式会社アライブメディケア(セコムグループ)
敷地面積:1,221.67平米
延床面積:2,306.75平米
居室数:58室
定員数:58人
入居要件:入居時、要支援・要介護の方
構造:鉄筋コンクリート造 地上5階建て(1~4階がサービスフロア)
開設年月日:2015年2月
料金:1か2を選択
1 一括払い方式/入居一時金1,364万円~
(一括払い方式とは、支払いが1回限りのプラン。入居後退去した場合は所定の計算式にて返還)
2 年払い方式/入居一時金170万円~
(年払い方式とは、1年ごとに契約を更新するプラン。入居後退去した場合、所定の計算式にて返還)
※月々かかる費用/24.5万~28.1万円~(管理費および食費)+介護保険利用料の自己負担額
※その他の別途費用
・入居一時金に加えて、上乗せ介護費用の一括払い(月払い)あり
→標準コース/210万円(一括払い)、90歳以上コース/150万円(一括払い)、年払いコース/2.5万円(毎月払い)
・介護用品、その他日用品、消耗品、理美容費、居室の電話代、医療費等の個人に関わる費用
・当ホーム基準を超えるサービスおよび介護保険適用外のサービスに係る費用
撮影/津野貴生
【この記事の前編】