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暮らし

ANA初の「65歳定年まで飛び続けた客室乗務員」が“年の離れた友だち”と積極的にかかわる理由 国際便の到着地で初対面の若手CAとランチや美術館に行くことも

 年をとると新しい友だちを作るのが難しいと考える人はいるだろう。ANAで初めて65歳定年まで飛び続けた客室乗務員、大宅邦子さん。60歳を超えてから、20歳、30歳も年下の後輩たちと友だちになった。

 ロンドン便の滞在先で、ほぼ初対面の若いCAに声をかけ、一緒に美術館へ。そこには、大宅さんが自然と実践していた、ある姿勢があった。『選んだ道が一番いい道』(サンマーク出版)から一部抜粋、再構成してお届けする。

「年の離れた友だち」は知らないことを教えてくれる先生

 便や距離によって違いますが、一つの便に乗務するCAは13名ほどです。

 社員数が多いので全員が「初めまして」というケースも多いのですが、13名のほとんどが同じ班のCAで、数人だけ他の班のCAという「班フライト」もあります。

 ロンドン便の乗務の際、滞在先のホテルにチェックインしようというとき、たまたまロビーで顔を合わせた若いCAがいました。

「お疲れさまです、明日はどうするんですか?」

 声をかけると、少しバツの悪そうな表情で「私はお部屋で過ごします」との答え。

 仕事中は役割分担が決まっていますから、同じ班員だろうと初対面だろうと、やりにくいことはありません。しかし、長距離線の仕事を終えて一日休みというとき、ほとんどが同じ班のCAなら、一緒に食事や買い物に行くでしょう。そういうときに、他の班から合流しているCAはやりにくい。誘われなくても寂しいけれど、誘われても内輪の話についていけなかったりで、気を使うのもくたびれる……。

「私はおいしいランチを食べて、美術館に行くの。一緒にどうですか?」

 60歳を超えてから私は班に属していなかったので、誰とも同じ班ではありません。そこでしばしば、ほぼ初対面の若いCAに声をかけ、2人きりだったり、何人かだったりで食事や絵画を楽しみました。「初めまして」から、いつのまにか20歳、30歳も年の離れた彼女たちと、仲のいい友だちになっていました。

 入社したての若い人に大学について聞くと、面白いことをしっかり勉強していたりして、刺激を受けます。出身地の話でも知らないことがたくさんあるし、そもそも若い人は、自分が知らないことをいくらでも知っているから、聞いてみたいことばかりです。知らないことを教えてくれるだけでも、十分尊敬の念が湧きます。

「3歳以上は大人と同じく自分がどう扱われているかがわかる」と書きましたが、私はまた、「人は20歳までに、価値観やものの考え方が固まる」と思っていて、その後は何歳でもそんなに変わらないと感じています。その意味で、23歳のCAと私は、同じ人間同士で、上でも下でもありません。

 私の仲間でも、「今の若い人はどうのこうの」と言う人がいますが、私はまったくそう感じません。「若い人と若くない自分」という線引きをしていません。

 私の友だちには70代も20代もいますが、その人たちは自分と価値観が似ていて、同じような考えをもっているから仲よくなるのだと思います。

 先日も、いわゆるゆとり世代の友だちに赤ちゃんができてお祝いに行きましたが、「孫のよう」とは思いませんでした。「友だちの子ども」という感覚です。

「年をとって友だちが減っていって寂しい」という話も聞きますが、自分自身が知らずにまとっている「年齢のバリア」を外し、友だちの対象年齢を同世代以外にも広げれば、新しい出会いはたくさんある気がします。

 変化を起こすものは自分の内面にある場合もありますが、きっかけの多くは人から、外からの刺激であったりします。うれしいことも、ちょっと心にひっかかることも、みな変化を起こす「風」です。若い友だちもまた、さまざまな経験をさせてくれる新しい風です。

 この本では私の経験をお伝えしてはいますが、私自身は、過去にしがみつくつもりはありません。いつも「あの頃は」より「今は」と話す。これからも、そんな自分でありたいと願っています。

 まだ、「できあがり」ではない自分。まだ、「完成品」ではない自分。

 そんな自分が、出会いという風に吹かれて、もっともっと成長していく。ずっと、そんな旅を続けられたらいいと思います。

 自分はまだ「完成品」ではない。そう思えば素直になれます。わからないことも教われます。

 どちらが年上かなんて、些末なことではありませんか?

教えてくれた人

大宅邦子さん

1953年生まれ。ANA初の「65歳定年まで飛び続けた客室乗務員」。1974年に入社後、国際線立ち上げのプロジェクトチームに参加。ANAの成長とともに、おもに国際線ファーストクラスで空の上のおもてなしを提供。滞空時間は3万時間超。ていねいに、手を抜かず、「いつでも指差し確認」の初心を忘れない姿勢で45年間のCA生活を続けてきた。食事や体調管理などの身の回りの整え方、「ほしいものより必要なものを買う」というものとのつきあい方、幼児から年長者まで同じように接する人とのつきあい方など、仕事を超えた清潔な生き方そのものが、ANAの伝説として8000人の後輩CAに慕われている。趣味は美術館めぐり、ジムでのエクササイズ、スキューバダイビング、アイロンがけ。ドローンの国家資格も取り、今度は「操縦」側の空も楽しんでいる。

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