「80代の母がお風呂で転倒!自宅の入浴に限界」介護保険サービス《入浴支援》の特長と活用のポイントを専門家が解説|頼れるサービス6選
「以前はひとりで入れていたのに、最近は浴槽をまたぐのが不安そう」「毎日の入浴介助で腰や肩が限界…」。そんな悩みを抱える家族は少なくない。高齢の親の入浴や介助が難しくなってきたと感じたら、どうすればいいのだろうか。介護職員・ケアマネジャーの経験をもつ中谷ミホさんに、入浴に関わる介護保険サービスの特徴や活用のポイントを教えてもらった。
この記事を執筆した専門家
中谷ミホさん
福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級。X(旧Twitter)https://twitter.com/web19606703
80代の母の入浴介助で感じた「自宅のお風呂、もう限界かも…」
80代の母親と同居する藤井あき子さん(仮名・58才)は、1年ほど前から母親の入浴を手伝うようになりました。きっかけは、母親が浴室で転倒したことでした。幸い大きなケガには至りませんでしたが、それ以来、ひとりでの入浴が不安になり、あき子さんが付き添うようになったのです。
最近は母親の足腰がさらに弱り、浴槽をまたぐのも一苦労です。身体を支えながらの介助は、あき子さん自身の腰にも負担がかかります。
「母の入浴介助で腰を痛めてしまって…。毎日付き添うことに限界を感じています」
あき子さんのように、親の入浴介助に負担を感じている家族は少なくありません。入浴は毎日のことだからこそ、無理を続けると介助する側が身体的にも精神的にも疲弊してしまいます。
高齢の親の入浴介助が難しくなるサインとは
入浴は、衣服の着脱、浴室への移動、洗身、浴槽への出入りなど、さまざまな動作が伴います。身体機能の低下により、以下のようなサインが見られたら、介護サービスの導入や浴室の環境整備を検討するタイミングです。
「つかまらないと動けない」は転倒リスクも
浴室は滑りやすく、寒暖差によるヒートショックなど、事故が起きやすい場所です。浴槽をまたぐ動作が不安定になった、立ち上がりに時間がかかるようになった、壁や手すりにつかまらないと動けないといった様子が見られたら、転倒リスクが高まっているサインです。
介助者の身体的負担が大きくなる
入浴介助は、中腰での作業や身体を支える動作が多く、介助する側の腰や肩への負担が大きいものです。無理を続けると、介助者自身が体を壊してしまい、介護を続けられなくなるリスクもあります。親御さんはもちろん、介助するご家族のためにも早めの対策が大切です。
入浴で介護保険サービスを利用するタイミングは?
入浴介助は、在宅介護の中でも特に身体的負担が大きく、事故のリスクも伴います。「親が一人で入浴するのが難しくなってきた」「介助が大変になってきた」と感じたら、介護保険サービスの利用を検討するタイミングです。
介護保険には、住宅改修や入浴補助用具への費用補助、訪問入浴、デイサービスでの入浴など、さまざまな入浴支援サービスが用意されています。これらを上手に活用すれば、介護する側・される側双方の負担を軽減できます。
入浴の負担を軽減する介護保険サービス6選
上記のようなサインが見られたら、介護保険サービスの活用を検討しましょう。要介護認定(または要支援認定)を受けると、自己負担1~3割で以下のサービスが利用できます。
入浴に関わる6つの介護保険サービスの特徴と状況に応じた選び方のポイントを解説します。
【1】住宅改修(手すり設置・段差解消など)
介護保険を利用すれば、浴室や脱衣所への手すり設置や段差解消などの改修費用が、1~3割の自己負担で済みます。支給の上限額は、要介護度に関係なく20万円です。
手すりを設置するだけでも、浴槽の出入りが格段に安定します。「まだ自分で入浴できるけれど、ふらつきが心配」という段階であれば、まず住宅改修で浴室の環境を整えることを検討してみてください。
なお、工事を行う前に、ケアマネジャーへの相談と自治体への申請が必要です。工事後の申請では支給対象外になるためご注意ください(※やむを得ない事情がある場合は、工事完成後の申請が認められることもあります)。
【2】入浴補助用具(福祉用具購入)
シャワーチェア(入浴用いす)、浴槽内いす、浴槽用手すり、入浴台(バスボード)など、入浴を補助する用具は、介護保険で購入費が支給されます。支給の上限額は要介護度にかかわらず年間10万円で、自己負担は1~3割です。
例えば、入浴台を使えば、浴槽のふちに腰かけてから足を入れられるので、浴槽をまたぐ動作が安定します。福祉用具を活用することで、入浴動作が楽になり、介助の負担軽減にもつながります。
【3】訪問介護(ホームヘルパーによる入浴介助)
ホームヘルパーが訪問し、自宅の浴室で入浴介助を行います。衣服の着脱、洗身、洗髪、浴槽への出入りなどをサポートしてもらえます。
「家のお風呂に入りたい」という親御さんの思いに応えながら、家族の身体的負担を軽減できるのがメリットです。
【4】訪問看護(看護師による入浴介助)
看護師が自宅を訪問し、健康状態をチェックしながら入浴介助を行います。医療的なケアが必要なかた(人工肛門、カテーテル、皮膚疾患など)や、入浴時の体調変化が心配なかたに適しています。
利用には主治医の指示書が必要ですが、持病のある人でも安心して入浴できるのが大きなメリットです。
【5】訪問入浴介護( 看護師と介護職による入浴介助)
専用の浴槽を積んだ入浴車が自宅を訪問し、看護師1名と介護職員2名のチームで入浴サービスを提供します。
居室に簡易浴槽を設置して入浴するため、介護されるかたが浴室まで移動する必要がありません。自宅での入浴が困難なかたや要介護度が高くデイサービスへの外出が難しいかたでも、安心してお湯に浸かることができます。
【6】デイサービス(通所介護)(施設での入浴)
デイサービスに通い、施設の浴室で入浴サービスを受けられます。手すりやリフトなどの設備が整った環境で、介護スタッフのサポートを受けながら安全に入浴できます。
入浴だけでなく、食事やレクリエーション、他の利用者との交流もあるため、親御さんの社会参加や気分転換にもつながるでしょう。デイサービスを利用している間、家族も介護から離れてリフレッシュできます。
どのサービスを選べばいい?状況別の活用ポイント
親御さんの身体状況やご家族の介護力、住環境に合わせてサービスを選びましょう。
「まだ自分で入れるが、ふらつきが心配」
まずは、住宅改修や入浴補助用具で環境を整えましょう。手すりの設置やシャワーチェア、入浴台などの導入で、自宅で安全に入浴できるようになります。
「家族が手伝えば入浴できるが、負担が大きい」
訪問介護やデイサービスでの入浴サービスを利用して、家族の負担を軽減しましょう。週に数回でもプロに任せることで、在宅介護を続けやすくなります。
「持病があり、入浴中の体調が心配」
訪問看護や訪問入浴介護など、医療職が関わるサービスを選ぶと安心です。看護師を配置しているデイサービスも選択肢の一つです。
「自宅の浴室では難しい/寝たきりに近い」
訪問入浴介護やデイサービスを検討しましょう。専用の設備や人員体制が整っており、安心して入浴できます。
利用する介護保険サービスは、どれかひと一つに絞る必要はありません。ご本人の身体状況や家族の介護負担に応じて、複数のサービスを組み合わせて利用することも可能です。どう組み合わせるかは、担当のケアマネジャーと一緒に考えましょう。
まとめ
冒頭のあき子さんのケースでは、その後、母親が要介護認定を受け、週3回デイサービスを利用するようになりました。デイサービスで入浴できるようになったことで、あき子さんの負担はずいぶん軽くなったといいます。
入浴介助の負担を家族だけで抱え込む必要はありません。介護保険サービスを上手に活用すれば、家族の負担を軽減しながら、ご本人も安心して入浴できます。
「家での入浴が難しくなってきた」と感じたら、まずは地域包括支援センターや担当のケアマネジャーに相談してみてください。
