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《登録者60万人超の管理栄養士YouTuberが解説》年齢とともに食事が負担になってきたら…量より質を高める「少食さんのための7つの黄金法則」

 食が細くなった親の栄養状態が心配になることはないだろうか。胃腸が弱ってくるなど年齢を重ねるとともに食事量が減り、体づくりや活動に必要な栄養素が足りなくなっている人も少なくない。そこで、無理にたくさん食べるのではなく食事の質を高めることを提案するのが、料理研究家・管理栄養士でYouTuberとして活動する関口絢子さんだ。著書の『食が細くなってきたら! 少食でもちゃんと栄養がとれる食べ方』(アスコム)でも紹介している「少食さんのための7つの黄金法則」について、教えてもらった。

教えてくれた人

関口絢子さん/管理栄養士

川村学園短期大学食物学科卒業。「食とアンチエイジング」の関係が注目されていなかった20年以上前から、インナービューティースペシャリストとして情報を発信し続け、健康・美容・ダイエットに関するレシピや栄養情報を提供。2020年に開設したYouTubeチャンネル「管理栄養士:関口絢子のウェルネスキッチン」は登録者数60万人超え。米国栄養カウンセラー、ヘルスケアプランナー、日本抗加齢医学会認定抗加齢指導士の資格ももつ。

健康な体の基本となる食の大切さ

 関口さんが食を通して自分と向き合おう、と決意したのは30代半ばのころ。

「当時、料理家としての道を切り開くため邁進していた私は、仕事と家庭との間で心身のバランスを崩し、体調不良に陥りました」(関口さん・以下同)

 ストレスによる摂食障害で思うように食事が摂れなくなり、3か月待ちで病院にかかるも、睡眠導入剤と抗うつ剤を処方されたことに、関口さんは根本的な解決への希望が見いだせなかったという。

「出口の見えない医療に愕然とした私は、原点に戻って、『いまこそ食で自分と向き合おう』と決心しました。自分がこのような状況に陥ったことで、ひとつ気づいたことがあります。健康な体と心は、食によって育まれる」 

 ずっと動ける体でいるためには、健康な体の基本となる食へ愚直に向き合うことだと気づいた関口さんは、こう話す。

「体は正直で、自分を慈しむ食事によって心も体も元気になっていくのを実感しました。単に健康でいるための至極当たり前のことの大切さに気づく体験でした」

高齢者の低栄養リスクは大きな問題に

 食事をおざなりにしていると、健康な体と心でいるために必要な栄養が慢性的に不足している、低栄養状態におちいってしまう。

「実は、食に恵まれていると思われがちな日本でも、この低栄養は他人事ではありません。厚生労働省の調査によると、56歳以上の女性の約15%、男性の約12%が低栄養傾向にあります。さらに、高齢者施設ではおよそ3~4人に1人が低栄養のリスクを抱えているという報告もあります」

 また、関口さんは、高齢の単身世帯や少食傾向の人が増え、市販のお弁当などが少量になってきていることについて、たんぱく質やビタミン・ミネラルなど「必要な栄養まで不足しやすくなる」と警鐘を鳴らす。

「そんな食事を続けていると、筋肉は少しずつ減り、動くのが億劫になり、外出も減ってしまいます。 それは気づかぬうちに、暮らしの質そのものを下げてしまうことにもつながります」

「少食さんのための7つの黄金法則」

 少食化する時代における低栄養リスクを減らすために、関口さんは「少食さんのための7つの黄金法則」を提案する。食事や調理の工夫で栄養価を高め、食べ切れる量の食事で「不足しがちな栄養をきちんと満たす食事」に近づけるコツをまとめたものだ。

「動ける体でいる=たくさん食べられる、ではありません。体に必要な栄養をしっかりととる食事に変える。まさに、量より質の食事に変えていくためのお手伝いをさせていただきます」

《法則1》「食べられない」を責めない

 食欲が落ちたり、食が細くなったりする原因には、「加齢で消化機能が低下し、お腹が空きにくくなった」「内臓や口腔内の病気の影響で、ものを食べにくくなった」「家族やペットを亡くしたストレスで、食事が喉を通らなくなった」など、さまざまな背景がある。

「こうした心身の変化に目を向けず、『もっと食べないと』と無理をするのは逆効果です。それより、いま食べられる量のなかで『食べ物の質を見直す』ことを意識すれば、同じ食事量でもしっかりと栄養をとることはできます」

《法則2》栄養素密度を意識する

 カロリーが高い食べ物も、栄養素が十分とは限らない。ただ空腹を満たすのではなく、食品100kcalあたりに含まれる栄養素の量「栄養素密度」を意識した食事をしよう。

「菓子パンやスナック菓子で食事を済ませる代わりに、次のような栄養素密度の高い食品を選べば、少食さんも効率よく栄養をとれます」

・卵…ほぼ完全栄養食品。消化のよい半熟卵や茶碗蒸しにするのがおすすめ

・肉、魚…たんぱく源。消化しやすいひき肉、DHAやEPAを含む青魚が◎

・大豆製品…植物性のたんぱく源。消化しやすく胃腸にやさしい

・乳製品…カルシウムとたんぱく源。 水分の少ないギリシャヨーグルトが◎

・色の濃い野菜…ブロッコリー、ほうれん草、小松菜、パプリカ、トマトなど

 食材の選びかたに加えて、生野菜50gを食べるより、ゆでてかさを減らしたおひたし50gにするといった調理法の工夫も、1食の栄養素密度を高めることにつながる。

《法則3》吸収力を最大化する

 栄養を効率よく吸収させることができれば、食事量がこれまでと変わらなくても、摂取する栄養素は多くなる。

「『洗いすぎ・ゆですぎ・さらしすぎの“3つのしすぎ”を避けて、食材の栄養を守る』『よく噛む・細かく切る・加熱するなど、消化吸収しやすい状態で食べる』ということを、まず心がけてみましょう」

 さらに、食べ合わせになっても、吸収効率を上げることができる。例えば、以下のような組み合わせがおすすめだ。

【非ヘム鉄×ビタミンC】ほうれん草のおひたしにレモン汁をかける、切り干大根の煮物にトマトを添える

【カルシウム×ビタミン】しらすと干ししいたけの炊き込みご飯

【β-カロテン×油】かぼちゃのバター煮、にんじんラペ、ほうれん草炒め

【たんぱく質×ビタミンB】鶏むね肉のガーリックソテー

【イソフラボン×乳酸菌】納豆のキムチ和え

【ビタミンB群×アリシン】豚肉と玉ねぎのしょうが焼き、豚こまとにんにくの炒めもの

《法則4》品数や量を追わない

 心身に負担がかかってしまうのは、逆効果。無理に品数を増やそうとしたり、「昔と同じ量」「いつもと同じ量」にこだわる必要なないと関口さんはいう。

「『いま、本当に食べられる量』を受け入れ、そのなかで栄養素密度を高める工夫をしてみましょう。たとえば、味噌汁・スープ・丼物は、いろいろな具を入れやすいメニューです」

 食材の組み合わせの自由度が高い汁物や丼ものは、冷蔵庫の残りものを活用しやすい。そこで、豆腐、海藻、きのこ、根菜、卵やひき肉といった、それぞれたんぱく質、食物繊維、ビタミン、ミネラルが豊富な食材をまとめて調理すれば、必要な栄養素を一度に摂ることができる。

「また、次のような『栄養ちょい足し食材』をこまめに使うのもおすすめです」

・きな粉…たんぱく質やイソフラボンなど、大豆の栄養を丸ごと摂取できる

・すりごま…硬い殻がないので、抗酸化物質のセサミンなどを吸収しやすい

・かつおぶし…たんぱく質のほか、血液サラサラ成分のEPA・DHAも

・チーズ…不足しがちなカルシウムの宝庫。たんぱく質摂取にも役立つ

・のり…食物繊維やビタミン類が豊富。細かいふりかけタイプがおすすめ

・おきあみ…赤色のアスタキサンチンは抗酸化物質。カルシウム補給にも◎

《法則5》食べやすさ・飲み込みやすさを工夫する

「少食さんのなかには、加齢にともなって 「歯の健康状態」 「唾液の分泌量」 「熊下能力(飲み込む力)」が低下している方も少なくありません」と関口さん。

「じっくり煮込む」「とろみをつける」「細かくする(ミキサーにかける、おろす)」など、食が進みやすくなるように喉越しをなめらかにする調理法を試すのもよい。

「たとえば、おかゆ、あんかけ、ポタージュやスムージーなどは、少食さんにも食べやすく、おすすめです」

《法則6》調理法で栄養を守る

「『下ゆでする』『水にさらす』など野菜が水にふれる調理法は、水溶性の栄養が流出しやすく、少食さんにとって貴重な栄養を逃す原因になってしまいがちです」

 下ゆでが必要な野菜の加熱は、蒸すか電子レンジを使うことでお湯に栄養が流れ出すのを防ぐことができる。また、野菜は切る前に洗うのが鉄則。

「アク抜きが必要なほうれん草、辛みが強い玉ねぎなど、どうしても水にさらす必要がある場合は、長時間さらしすぎないように気をつけましょう」

《法則7》無理のない食習慣を確立する

 料理を作る手間がハードルとなって食事を抜いてしまう場合は、カット野菜、冷凍野菜、レトルト食品、缶詰、フリーズドライの味噌汁など、便利なもので手間を省いて、まずは「無理なく食事を続けていくこと」が大切だ。

 例えば、卵や納豆など、栄養価が高く、「のせるだけ」「かけるだけ」で一品になる食材や《法則4》で紹介した「栄養ちょい足し食材」を常備しておくのもよい。

「すぐお腹がいっぱいになってしまう方には、分食がおすすめです。朝昼晩の3食は軽めでよいことにして、その間に「補食」として小さなおにぎりやバナナ、ヨーグルトなどを食べるようにすれば、無理なく総摂取量を確保できます」

 最後に、関口さんは毎日の食事をノートやアプリで記録することをすすめている。

「自分の食事量や栄養バランスを客観的に見つめ、改善するのに役立ちます」

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