3才以上若返る食習慣「水分は1日にコップ5~7杯」「昼食と夕食は12~18時の間に食べる」ほか【専門家解説】
「えっ、あの人ってそんな年なの!?」ーーこの言葉には2つの意味があるだろう。年齢に比べて“若く見える”か、“老けて見える”か、だ。“見た目年齢の差”はなぜ生まれるのか。最新の抗老化研究によると、見た目の加齢スピードは食生活で異なることがわかってきた。その秘訣を専門家が指南する。
教えてくれた人
石原新菜さん/イシハラクリニック副院長。医師、ヒポクラティック・サナトリウム副施設長。主に漢方医学、自然療法、食事療法により種々の病気の治療にあたる。主な著書に『カラダを温めて冷えをとる! 温活365日』(内外出版社)など多数。
工藤あきさん/消化器内科医、美腸・美肌評論家。内科医として地域医療に貢献しながら、腸活・菌活を生かしたエイジングケア治療にも注力する。『若返りの栄養学ゆる図鑑』(宝島社)など著書多数。
関由佳さん/内科医、糖尿病内科、予防医学が専門。みそソムリエ、野菜ソムリエの資格を生かし、栄養療法をもとにしたメディカルフード研究家としても活動中。著書に『腸と胃を整える食べるくすり やさい麹』(アスコム)など。
三島雅辰さん/三島クリニック院長、外科医、産業医。幹細胞を用いた再生医療で、慢性疼痛や脳梗塞など1000人以上の治療実績を重ねる。著書に『すごい幹細胞「老けない人」の7つの習慣』(オレンジページ)など。
若々しさには食事が大きく影響
若く見える人と老けて見える人がいるのはなぜか。
「ニュージーランドのダニーデン市にある病院で、1972~1973年に生まれた子供1037人を対象に20年間、身体機能などを調査し、老化度を測定しました。これによると、1年で0.40才しか年をとらない人から2.44才年をとる人までいることが判明しました」(内科医の石原新菜さん)
老化速度は遺伝的要因もあるが、食事、生活習慣、運動といった環境的要因が大きいことがこの研究でわかった。これをさらに裏付ける研究もある。
「2021年にアメリカで行われた研究では、50~72才の男性を2つのグループに分け、1つのグループには食生活や日常生活を徹底的に管理する8週間のプログラムを実施。その結果、プログラムに参加したグループは、何もしていないグループに比べ、生物学的年齢が3才以上若返ったことがわかりました。この研究により、環境的要因が見た目年齢を左右することだけでなく、何才からでも老化の速度を遅らせられることがわかりました」(消化器内科医、美腸・美肌評論家の工藤あきさん)
いまからでも遅くない。名医が教える食事方法を始めて若々しい90代を目指そう。
毎日の食べ方で、“老けない体”はつくれる
【1】水を飲みすぎない
水はたくさん飲んだ方が健康にいいとよく聞くが、ミドル世代以降には逆効果だ。
「むくみ、冷え症、腎臓の負担に。水分は食事から摂れることも考慮し、1日にコップ5~7杯程度をこまめに摂取するのが◎」(石原さん)
【2】食事はお腹がすいてから
「近年は活動量が減っているのに、食べる量が増えている人が多い。1日3食というより、エネルギーを正しく使いきり、空腹を感じてから食べて」(内科医の関由佳さん)
【3】よくかんで食べる
「よくかんで食べると唾液や胃酸などの消化液がしっかり分泌され、消化力が高まります。1口20回かむことを目安にゆっくり食べましょう」(関さん)
【4】ビフィズス菌を摂る
「100才以上の長寿が多い鹿児島県奄美市で、95〜108才の高齢者44人の腸内フローラを調べたところ、ビフィズス菌が多いことが判明」(工藤さん)
ヨーグルトはビフィズス菌入りのタイプを選ぼう。
【5】乳製品を摂りすぎない
「乳製品はカルシウムが豊富ですが、摂りすぎると脂質や糖質が過剰となり、体内のミネラルバランスを崩す恐れがあります。1日にチーズ約20g、ヨーグルト100~200g、牛乳200ml程度にとどめて」(工藤さん)
【6】色の濃いみそを摂る
「みそには抗酸化成分・ポリフェノールやメラノイジンが含まれ、色が濃いほど含有量が多いとされています」(関さん)
西京みそのような白みそより、色の濃い赤みそや豆みそなどがおすすめ。
【7】肉より魚を摂る
「たんぱく質を摂取するなら、DHAやEPAなど良質な脂質が豊富で、中性脂肪やコレステロール値を下げてくれる魚がおすすめ」(石原さん)
納豆や豆腐などの大豆類から植物性たんぱく質も摂取を。
69~71才の双子10組の平均的な外見を表す合成写真。左は実年齢の割に若く見えた方で、右は実年齢より上に見えた方。
【8】抗酸化成分を摂る
「抗酸化成分の摂取で体の酸化(※1)を防いで。おすすめは強力な抗酸化物質・スルフォラファンを含むブロッコリースプラウト。また、赤ワインを飲む人は心血管系疾患のリスクが低く、ポリフェノールによる抗酸化作用によるものと考えられています」(工藤さん)
ただし飲酒は適量を。
(※1)呼吸で取り込んだ酸素の一部が「活性酸素」となり、それが細胞を傷つけて老化や病気を引き起こす現象。
【9】「AGEs」を抑えるための10か条を守る
「体内の余分な糖がたんぱく質や脂質と結びつくと、老化物質『AGEs』が生成されます。これを防ぐには食生活が重要です」(工藤さん)
<1>GI値の低い食品を摂る
食後の血糖値の上昇を抑えるため、パンや白米より、さつまいもやきのこ類を。
<2>食物繊維が豊富な食品から先に食べる
主食より野菜や果物を先に。特にかぼちゃ、しいたけ、バナナなどがおすすめ。
<3>酢やレモンで血糖値を抑える
血管拡張効果のある酢酸は、食後血糖値の急上昇を防ぐので酢やレモンの活用を。
<4>時間をかけてゆっくり食べる
早食いは食後の血糖値急上昇の原因に。一口20回かんでゆっくり食べる。
<5>「AGEs」を多く含む食品を控える
ポテトチップス、ベーコン・ハムなどの加工肉、パルメザンチーズは特に注意。
<6>ファストフードを控える
酸化した油が使われている食品はNG。フライドポテトなどの揚げ物は控えて。
<7>人工甘味料が入った清涼飲料を控える
人工甘味料はブドウ糖の約10倍の速さで「AGEs」を作るので控えて。
<8>蒸す・ゆでる・煮るなど水を使った調理をする
揚げもの、炒めものは「AGEs」を増やす。余分な脂を減らし焦がさない調理法を。
<9>体内で「AGEs」を作りにくい食品を摂る
抗酸化作用を持つαリポ酸を含むほうれん草、トマト、インゲンなどを摂る。
<10>電子レンジを使った長時間の調理は控える
電子レンジによる高温・長時間調理で食品中のコレステロールが酸化・劣化する。
【10】ホモシステインを下げる食べ物を摂る
「血液中に存在するアミノ酸『ホモシステイン』が蓄積すると、循環器疾患、認知症の原因になるので、ホモシステインの代謝を促進する葉酸、ビタミンB6、B12を含む食材を摂りましょう。特にたんぱく質も豊富なかつおや鶏ささ身、抗酸化作用のあるアリシンを含むにんにくなどが◎」(三島クリニック院長の三島雅辰さん)
【11】肌にいい栄養素を摂る
「老けた印象を与えるシミ、しわ、くすみを防ぐには、肌の生まれ変わりを助けるビタミンA、肌の再生や保護に必要なビタミンB群とビタミンE、コラーゲンの生成を促すビタミンCを摂りましょう」(工藤さん)
ビタミンAはにんじんや小松菜、レバー、ビタミンB群は納豆やまぐろ、ビタミンEはアーモンドやアボカド、ビタミンCはパプリカ、ブロッコリーなどに豊富。
【12】体にいい油を摂る
「サラダ油や市販の揚げ物の摂りすぎが老化や病気の原因となる一方で、えごま油、アマニ油、エクストラバージンオリーブオイルなどの良質な油は免疫力を上げ、生活習慣病の予防に働くので、油は選んで摂りましょう」(工藤さん)
【13】朝、にんじん&りんごジュースを飲む
「にんじんのβ-カロテン、りんごのポリフェノールには強力な抗酸化作用があります。皮ごとジューサーにかけてジュースにすると、朝の胃腸に負担をかけないのでおすすめです」(石原さん)
【14】血糖値を上げない食べ方をする
「血糖値の急な上昇は、老化物質『AGEs』の生成を招きます。それを防ぐには、野菜や海藻類→肉や魚などのたんぱく質→ご飯などの少量の糖質の順で食べるのがおすすめ。白米より分つき米(※2)の方がビタミン・ミネラルが豊富。血糖値の上昇もゆるやかになります」(関さん)
(※2)玄米からぬかや胚芽を一部だけ取り除いた、白米と玄米の中間の米。
【15】12~18時の間に食べる
「胃腸を動かす交感神経が活発に働く12~18時は、消化活動に最も適した時間帯。朝食は軽めにし、昼食と夕食はこの時間内にしっかりとるといいでしょう」(関さん)
18時までに夕食をとるのが難しいなら、昼食でバランスよく栄養やエネルギーを摂取し、夜は軽めにするのがおすすめ。
【16】髪にいい栄養素を摂る
髪がボサボサでツヤがないとそれだけで老けて見える。
「髪の成分の8割を占めるたんぱく質を中心に、亜鉛、鉄を摂りましょう」(工藤さん)
取材・文/植木淳子 イラスト/ふじいまさこ
※女性セブン2025年11月13日・20日号
https://josei7.com
●健康寿命を延ばす食生活ルール「ライ麦パン1日2枚」ほか<老化&フレイル予防が期待できる食材リスト10付き>
