認知機能の衰えを防ぐ 専門家が解説する10の会話メソッド「聞く6 話す4」「他人の意見を聞いてみる」ほか
「あれ」「それ」…。日常会話で語彙が少ない人は、認知機能が低い傾向にあるという。語彙を増やすには、「知っていることしか話さない」という会話スタイルから改める必要がありそうだ。認知症予防研究者の大武美保子さんが開発した認知予防のための「共想法」は、入力と出力スキルを磨くための手法だ。今回紹介する10のメソッドは、膨大な「共想法」のデータと脳科学の知見から導かれたもの。1つでもできそうなものから実践してみたい。
教えてくれた人
大武美保子さん/理化学研究所ロボット工学博士、認知症予防研究者。NPO法人「ほのぼの研究所」所長。認知症を予防する会話支援手法「共想法」を開発。約20年、のべ1万人が参加している。近著に『脳が長持ちする会話』(ウェッジ)がある。
会話力を磨くメソッド<会話編>
【1】話し好きは「聞く」、聞き役は「話す」
「聞くことには『新しいことを覚える』、話すことには『伝えるために言葉を探す』効果があります。どちらか得意な方に偏ることが多いため、『聞く6:話す4』の割合で会話をすることを目指しましょう」(大武さん・以下同)
【2】質問するつもりで相手の話を聞く
「認知機能が低下すると聞く力が弱くなります。そこで、『話題が広がりそうな質問を考えながら聞く』『話し手の立場になりきって聞く』『話の内容を批判・評価しないで聞く』という訓練をしましょう」
【3】鉄板ネタではなく「新しいネタ」を披露
「何十年も語り継いできた『すべらない話』や武勇伝は、淀みなく話せて心地よいものですが、脳は『サボれる』状態。脳を働かせるには、身の回りで面白いと感じた『新ネタ』を脳に上書きし、すべっても気にせず話すことです」
【4】二択の質問を用意した会話を心がける
「初対面の人との雑談こそ、脳を使うチャンス。いきなり『イタリアンは好きですか?』のようにストレートに聞くのではなく、『イタリアンと中華ならどちらが好き?』などと選択肢を示すと相手も気軽に答えやすくなります」
【5】ユーモアのある失敗談を持っておく
「勘違いや失敗を笑いに変えるとき、頭の働きは柔軟になります。私も、息子の保育園に持たせた着替えの下着が夫のものだったなど、失敗談には事欠きません(笑い)。失敗談を『こうするはずだったのに、こうなってしまった』というフォーマットにあてはめ、家族や身近な人に話してみましょう。ウケることではなく、その体験を『覚えて話す』ことが、脳にとって重要なのです」
会話力を磨くメソッド<行動編>
【6】1日1つ「新しいこと」をする
「『外食で食べたことのない料理に挑戦する』『聴いたことのない音楽を聴く』など身近なことでOK。3日に1つでも構いません。会話のネタも集まりますし、何より自分の立てた計画が達成されると過程や感情が記憶に刻まれるため、脳にとっていい刺激になります」
【7】いつもと違う道を歩く
「最寄りの駅から自宅に帰るとき、ほとんどの人は、無意識に同じルートをたどるはず。しかし、こればかりだと脳はサボり続けます。意識しないと家に着けないよう、たまに違う道を選んで歩いてみましょう」
【8】「他人のメガネ」を借りる
「私たちは、見えたものを全部見ているのではなく、見たいものだけを見ています。家族や友人と旅行をしたとき、『こんな人がいたよね』『いたっけ?』、『角に素敵な建物があったよね』『覚えてない』となるように、あなたと他人の見ている世界は違うのです。認知機能が下がると他人の見ている世界を想像しづらくなるので、旅行先で『今日何がいちばん印象に残った?』と、意識して他人の意見を聞いてみましょう」
【9】写真を撮り、日記をつける
「会話のネタがなくて困るという人は、きれいな花や風景などを見つけたら写真を撮ったり、面白いことや新しいと感じたことを日記に書き留めておくと、話題がどんどん増えるでしょう。特に、体験を『文章にする』という行為は言語能力も鍛えられるのでおすすめです」
【10】いつもとは違う料理レシピを考える
「得意料理があるかたは、手際がよくて素晴らしいのですが、脳は『自動運転モード』なのが少々心配。時々、『スーパーのお買い得品からレシピを考案する』『違う調理法に挑戦する』など変化をつけたいですね」
取材・文/佐藤有栄 イラスト/☆まかりな☆
※女性セブン2025年9月25日・10月2日号
https://josei7.com